No.4 巡回経路の指導
"竜迎館"は立ち入りを許可された人間しか入ることが出来ない特別な場所だ。今の私はドラゴン専門の飼育係のため、出入りすることが許されている。受付をして中へ入場していく。
私が保安維持課で仕事をしていた時、巡回経路というものがあった。日によってどこの道を通るかが変わるのだ。今回は出口までもっとも最短経路となる順に巡っていく。
この建物内ではスクーターの使用許可申請を提出した。
スクーターは室内用に設計されているため、出してもよいスピードは20kmまで。もちろん歩行者が優先。その他にも色々と守らなければならぬルールがある。
見上げるほど大きな強化ガラスの中にドラゴンたちが一匹ずつ収容されている。
「しかしまー、こんな所によくこんなデケー生き物集めたっすね」
「長い歴史を持つ飼育施設ですから」
経路を巡りながら、要所要所でスクーターを止めて説明をする。時折必要な質問をしてきたりと真面目に案内を受けるところを見る限り、言動の割に頭の悪いタイプではないようだ。
「ねーセンパイ。ここの強化ガラスってさ。開閉ってできるんすか?」
退屈そうに地面に寝そべるドラゴンを眺めながら、ガラスをコンと小突く。
「ここを開ける機会というのがまず無いですが、開けることはできますよ。権限のある者であれば。……なぜそんなことを?」
「この強化ガラス。見たとこ、中に入る出入り口みたいなのってねーじゃん? どうやってドラゴンにエサやってんだろと思って」
「基本的に人間はドラゴンには近づけませんから。エサは上から"落として"いるんですよ」
「上から落としてる?」
強化ガラスの中を見ていると、タイミングよくエサやりの時間になったらしいことに気づく。天井を指さしてロベルの目線を誘導する。
「丁度、あのように」
天井の一部が、四角くスライドしてポッカリと口を開けていく。その大きさは2m×2mといったところだ。
穴からアームが出てきて、まるで人間のように辺りの様子を窺う。熱源センサー付きのカメラがエサを落とす場所にドラゴンがいないかを探っているのだ。確認したかと思うとすぐに首を引っ込めた。
「うお。なんだあれ?」
アームが次に顔を出す時、丸々と太った魚の入ったステンレス製のカゴを掴んでいた。中身がビチビチと暴れるのをものともせずガッチリと掴んで離さない。ある程度まで降下するとカゴをひっくり返した。
バタッ……ボタボタボタッ
次のカゴには生きた豚が数匹入れられていた。
何度か同じように"カゴを持ってきては下ろす"動作を繰り返す。防音のため音は聞こえないはずだが、それが機械的に落とされる度に甲高い"エサ"の悲鳴が脳に響いてくるようだった。
ドタッ……ドタタッバタタタッ
「ウワア……」
エサやり係の仕事が終わるとそこには"生肉"の小山が出来ていた。仕事を終えて帰還をするアームを見送ると、ケースの中のドラゴンは気だるげにのそりとそこへ近づく。
「まるで家畜っスね……」
そして食事の時間が始まる。




