桜佐咲⑭
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<桜佐の家>
「咲ー。洗濯物、出しといてねー」
「はーい」
今映画がいいところなんだけど、洗濯物を出さないとお母さん怒るからな……。
仕方なく切り上げて、洗面所に洗濯物を持っていく。
「…………あっ」
洗濯物の中に今日の体育で千尋に貸したタオルを発見する。
タオルを手に取って、今日の体育の時間を思い出す。千尋の汗を拭いたタオル………。
『春日井くんの汗をかいてる姿って興奮するよね』
鷹来さんの言葉が頭に浮かぶ。
「…………」
い、いや……何考えてるんだ私は。タオルの匂いを嗅ごうとするとか。変態じゃん。あり得ないあり得ない。
そう思いながらもタオルを手放せずにいた。
「………………」
……ううん。そう、これは確認だから。千尋が臭いってことは絶対にないけど、念のために確認。
もし臭かったら他の子から変な噂が立って、いじめられちゃうかもしれないし。それは幼馴染みとして嫌だ。これは仕方ないこと。
「よしっ……」
タオルを鼻全体に引っ付けて、深呼吸をする。
「すー……はぁ………すぅ……はぁ」
…………うん。全然臭くない。むしろ……いい匂い。
よかったよかった。はい確認終了。早くタオルを洗濯物入れに出して、映画の続きを見よう。
「………………っ」
…………………………………………………………………………………………………もうちょっとだけ。
「………………ぅん……ん」
な、なにこれ。匂いを嗅ぐのが止められない。どうしてだろう。私、変態なのかな……。
「ぁ…………ん」
早く止めたいのに嗅げば嗅ぐほどお腹の下あたりが熱くなって…………気持ち良くなって。
「……………ち……ひろ」
恵介とかクラスの男子たちは汗臭いなとか制汗剤がキツイなって思うだけなのに……。
なんで千尋の匂いはこんな……いい匂いなんだろう。柔軟剤の香りじゃない。心とか体が包まれるような……。
ああ……なんかすごく興奮する。
「咲ー! 洗濯物出してくれたー!」
「っ!? は、はーい! 今出してるから!!」
あ、危ない危ない……。お母さんの声で頭が一気に冷静になる。
もしかして私、千尋のこと大好きなのかもしれない。
大好きだから今日鷹来さんと話してたとさ時に嫉妬したし、大好きだから千尋の匂いで興奮してるんだ。
「…………千尋」
結局この後、映画に集中できず千尋のことばかりを考えてしまった。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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