桜佐咲⑬
別クラスとの試合も無事に終わった。僕は何もすることができなかったけど、不二くんたちの活躍で僕たちのクラスが勝つことができた。
「はあ……はあ…………っ」
……みんなすごいな。どうしてあんなに早く動けて、あんなに早いパスを取れるんだろう。
今日の試合で何回かパスをもらったものの全部ミスをしてしまった……。
球技大会までには迷惑にならない程度には上手になりたいな。
「……あっ」
汗を拭こうとするがタオルを持ってくるの忘れたことに気づく。持ってこようと思っていたけどカバンの中に入れたままだ。
まあなくても問題はないしこのまま戻──
「お疲れ様、千尋」
桜佐さんに声をかけられる。
「試合見てたよ! すっごく頑張ってたね!」
「う、ううん。僕なんて全然駄目だったよ」
「そんなことかないよ。一生懸命やっててカッコ良かったよ」
「あ、ありがとう……」
運動の後でよかった。また顔が赤くなってるから、桜佐さんに気づかれないで済む。今日はよく褒められる日だ。
「ん? 千尋、もしかしてタオル忘れたの?」
「えっ……うん。教室から持ってくるの忘れちゃった」
「私、2枚持ってるから1つ使っていいよ」
そう言って持っていた青色のタオルを僕に渡してくる桜佐さん。
「い、いいよ。悪いし」
「遠慮せずに使っていいって、ほら!」
断るが桜佐さんにタオルを無理やり押し渡される。返そうとするが受け取ってもらえない。
「あ、ありがとう」
「どーいたしまして」
借りたタオルで汗を拭く。……柔軟剤の匂いがする。
「タオル、洗って返すね」
「そんなことしなくていいよ別に。私と千尋の仲じゃん」
「え、でも汗拭いたから汚いし……」
「汚くないよ、大丈夫だって。ほらほら」
「あっ」
手に持っていたタオルを半ば強引に回収していく桜佐さん。なんか申し訳ないな……。
「今度からは忘れたら駄目だよ」
「う、うん」
タオルを持って桜佐さんは足取り軽く去って行った。
「恵介、あれ見ろよ。桜佐さんと春日井くん、めちゃくちゃ仲良さそうだぜ」
「あーそうだな」
「ライバル登場で桜佐さんが取られないか心配だな?」
「うるせえよ」
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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短編も書いてます。一番新しく投稿した『憧れの先輩を一生懸命支える話』もお時間あればぜひ。
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他にも短編書いているのでお時間がある時に読んでいただけたら嬉しいです。




