桜佐咲⑥
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お粥を食べてか10分くらい経ってから、千尋がまた眠り始めた。
「……………………」
「…………………………寝たかな」
可愛い寝顔、小さい時から何も変わらない。ずっと見ていても飽きないが、体を拭く準備をしないといけないので一度部屋を出る。
準備を終えて部屋に戻ると、千尋は寝息を立てていた。
「……すぅ……すぅ」
「よしっ……じゃあ体、拭こうね。熱出て、汗かいてるし」
起きている時に提案しても拒否られると思うので、眠っている内にやってしまおうと思う。
「まずは服を脱いで……」
手際よくボタンを取り、肌着をめくると千尋の肌が見えた。
「……肌綺麗だね、白いし。腕、細い……ちゃんと食べてるの?」
体を拭きながら心配になる。昔から千尋はご飯もあまり食べる方ではなかったので、細いままだ。か細くて……たぶん同じ学校の女子にも力で負けてしまうと思う。
「よしっ前は拭けた。はい、次は後ろ向いてっと」
背中も綺麗……。モデルとして嫉妬しちゃうくらいどこの肌も綺麗だ。
拭いたついでに上の肌着と服も取り替える。下は…………まだ止めようかな。
「氷枕、替えよっか。ちょっと待ってて」
ぬるくなっていた氷枕を交換する。
「ついでに冷えピタも替えようね。……よしっ」
「んっ……」
「あっ冷たかったかな? ふふっ可愛い」
冷えピタを貼る時に冷たくて一瞬顔をしかめたのがとても可愛かった。
「寝顔、子どもみたい…………ふふっ。髪の毛もサラサラだ。ほっぺもぷにぷに。本当に高校生?」
同じクラスの男子とは雲泥の差だ。千尋にはあんな人たちみたいにはなってほしくない。
千尋のほっぺたはどれだけ触っても飽きないなぁ。ずっと触っていたい。
「はぁ…………もっと甘えてほしいなぁ」
「桜佐さん……」
千尋が寝言で私の名前を呼んでいる。どんな夢を見ているんだろう。
「ありがとう」
ああ……。胸を満たすこの幸せをどんな風に表現すればいいのだろう。千尋が夢の中でも私を頼ってお礼を言っている。こんな幸せの事はあっていいのか。
「可愛いよ千尋。……ずっと私に甘えていいからね」
◼️
「もう大丈夫? まだ熱ない? 痛いとかない?」
「だ、大丈夫だよ」
発熱してから二日後。無事熱も下がって、学校に行けることになった。朝から結衣姉さんがとても心配してくれているがもう大丈夫だ。気だるさとか節々の痛みとかもなくなった。
「なにかあったらいつでも私に電話してね。すぐに行くから」
「ありがとう。じゃあいってきます」
「絶対呼ぶんだよー!」
結衣姉さん、僕の看病ができなかったことをすごく後悔しているらしいってお義母さんが電話で教えてくれた。大切なテストがあるならそっちを優先するのは当然なんだから気にしなくてもいいのに。
「おはよう千尋!」
桜佐さんの元気な挨拶が聞こえた。桜佐さんは僕が眠ってしまった後もずっと側にいて、結衣姉さんが帰ってくるまで看病をしてくれたとのことだ。本当にありがたいし、迷惑をかけてしまった。
「もう体は大丈夫?」
「うん。桜佐さんのおかげで元気になったよ」
「よかった」
「この前は本当にごめんね。迷惑かけちゃって」
「全然迷惑じゃないよ。むしろ久しぶりに千尋のお世話ができてものすごく満足だったから」
満面の笑みの桜佐さん。迷惑になっていないのならよかった。
「そうだ。学校着いたら休んでた間の授業のノート見せてあげるね」
「いいの?」
「もちろん」
「ありがとう。すごく助かるよ」
「千尋はもっともっと私を頼っていいんだからね」
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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短編も書いてます。一番新しく投稿した『信じてくれなかった彼女とはもう関わりたくない』もお時間あればぜひ。
https://ncode.syosetu.com/n4897hu/
他にも短編書いているのでお時間がある時に読んでいただけたら嬉しいです。




