廻間麗奈⑩
<通学路>
「おはようございまーす春日井先輩っ!」
登校中、後ろから元気な声が聞こえた。振り向くと声の主は乙輪さんだった。
「おはよう。今日も元気だね」
「元気は私の取り柄ですからね!」
そう言って乙輪さんは笑顔で体全体を大きく動かす。本当に元気だ。
「それよりも先輩聞いてくださいよー。最近、部活がきつくてヤバいんですよ」
出会ってすぐに愚痴を吐き始める乙輪さん。
「剣道部は毎日練習が厳しい印象があるけど?」
「もちろん毎日厳しいですけど、今の時期は特に厳しいんですよ!」
ぐいっと体を近づけてくる。刺激をしてはめんどくさくなりそうなので、ここは大人しく聞いておこう。
「もうすぐ3年生最後の大会があるので、もう練習の最初からピリッピリ、先輩たちも気合入りまくりですよ」
「そうなんだ」
もう3年生の最後の大会があるんだ。大学の受験もあるしこれくらいの季節なのかな。
「まあその中でも廻間先輩はヤバいですよ」
「や、ヤバい?」
「もう鬼気迫っているというか、練習量がみんなの倍以上ですよ」
「前に見学させてもらった練習の倍以上の練習をやってるの?」
「そうですよ。ヤバいですよね。見ているこっちが吐きそうです」
前に見学をさせてもらったときの練習もとても厳しいように感じた。あれを倍以上やるなんてちょっと考えられない。
「廻間先輩は学校初の3年連続の優勝がかかってますからね。先生たちや部員、学校のみんなが廻間先輩に期待してます」
「それはプレッシャーだね。……でもそんなに練習やって大丈夫かな廻間先輩。ケガとかしちゃわないかな」
以前、手首を痛めていたから悪化しないといいけど……。
「普通の人なら無理でしょうね。でも廻間先輩なら大丈夫ですよ。だって完璧ですもん」
自信満々に答える乙輪さん。完璧……か。
「廻間先輩の最後の大会でもあるんですけど、私にとっては初めての大会なので緊張してますよ」
「そうなんだ。乙輪さんも緊張するんだね」
「しますよっ! ひどい春日井先輩、私を何だと思っているんですか!?」
乙輪さんが頬を膨らませながらジーッと僕を睨み付けている。どうやら怒らせてしまったようだ。
「ごめんね。でも、大会まで無理せずに頑張ってね」
「スッとフォローができるなんてできる男ですね、春日井先輩!」
「……からかわないでよ」
「へへへっすいません。でもありがとうございます! 大会頑張りますね!」
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