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廻間麗奈⑦


「「ありがとうございました」」


 日が沈みかけた頃に部活も終わり、部員たちがぞろぞろと挌技場を後にする。

 みんな厳しい練習にヘトヘトになっていた。見学しているだけの僕も疲れてしまった。


「お疲れ様」


 廻間先輩がタオルで汗を拭きながら話しかけてきた。他の人と違ってまだ余裕があるように見える。


「お疲れ様です。今日は見学させてもらってありがとうございました」

「こちらこそありがとう。どうだったかな、見学してみて?」

「あの、すごかったです。みなさん迫力もあって、廻間先輩の迫力もすごかったです。竹刀の振り方とかもすごく綺麗だなって思いました」


 素人目だが廻間先輩だけレベルが違ったように見えた。


「そうか。千尋くんが見ていると思ったらついいつもより力が入ってしまったよ」


 照れくさそうにしている廻間先輩。


「本当にかっこよかったです……」


 今日の練習で見た廻間先輩は僕が憧れている廻間先輩だった。かっこ良くて、凛としていて……。


「……ふふっありがとう。その言葉が聞けてとても嬉しいよ」


 そこから沈黙の時間が何秒か流れる。廻間先輩ももじもじしていてことばを発さないままだ。

 沈黙が気まずいので僕から話しかける。


「えっと、今日は本当にありがとうございました。……じゃあ僕、帰りますね」

「待ってくれ。その……もし千尋くんがよかったらなんだが、今からすぐに着替えてくるから、そしたら途中まで一緒に帰ら――」

「千尋先輩! 一緒に帰りましょう!」


 廻間先輩が話している途中で、すでに制服に着替え終わっているツインテール姿の乙輪さんが元気よく入ってきた。


「麗奈先輩、お疲れ様です! 今日も美しかったです!」

「……お疲れ様、姫乃。ありがとう」

「あっそういえば麗奈先輩、挌技場の外に宮町先輩が待ってましたよ。もしかしてー今からデートですか! ひゅー熱いなー」


 テンションが高い乙輪さん。さっきまで厳しい練習をしていたとは思えないくらい元気だ。

 チラッと入り口を覗くと乙輪さんの言う通り宮町先輩が立っていた。


「そうか……」

「いいなーあんなイケメンの男子とデートとか。青春だなー。…………春日井先輩、私たちもデートしません?」


 そう言って乙輪さんが僕の腕をぎゅっと掴んでくる。


「し、しないよ。おちょくらないで。あとち、近い」

「マジだったらしてくれるんですか?」

「……姫乃。千尋君も困ってるからやめてあげてくれ」

「す、すいません!」


 廻間先輩の注意に乙輪さんがビシッと背筋を伸ばす。


「あと千尋くんの腕を離すんだ。……困ってるから」

「は、はいっ!?」


 慌てて僕の腕から離れる乙輪さん。


「ごめんなさい春日井先輩」

「ぜ、全然大丈夫だよ」

「よかった。それじゃあ宮町先輩をお待たせさせるのも悪いですし、私たちも帰りましょう。お先に失礼します! ほら春日井先輩も!」

「う、うん。お先に失礼します」

「ああ。二人とも気を付けて」



「………………………………っ」


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