廻間麗奈⑥
「ところで、春日井先輩って彼女さんとかはいらっしゃるんですか?」
「…………練習、しなくていいの?」
「今は大事な話をしてるんで大丈夫です。で、どうなんですか?」
座っている位置からちょこっと僕の方に近づいてくる乙輪さん。目をキラキラさせて僕の返答を待っている。
「………いないけど」
「そうなんですね! でも春日井先輩ならすぐにできますよ。彼女の一人や二人!」
「あ、ありがとう」
彼女か……。
質問を終えたはずなのに、乙輪さんはまだ練習に参加せず再び僕をじろじろと観察をしてくる。
「…………」
「えっとまだ何かあるの?」
「………いや、やっぱり先輩ってめちゃくちゃ可愛いですよね。ちょっと積極的になればそこら辺の女子なんてコロッと落ちちゃいますよ」
「は、はあ。そんなことないと思うけど」
可愛いなんて言われたことな……結依姉さんにはおちょくられて何度も言われたことはあるけど、身内以外には言われたことない。
でも僕みたいな人間が積極的になったところで女子には相手にされないと思うけど……。
「いいえ、そんなことありますよ! 春日井先輩はめちゃくちゃ可愛いです! ……一回積極的になる練習をやってみません? これから厳しい練習を頑張る私に応援くださいよ」
「応援?」
なんか…………嫌な予感がする。
「千尋先輩、私より背が小さいのでそれを存分に利用した上目遣いで『頑張って』とか言ってみてください」
「い、嫌だよ。恥ずかしい」
「一回だけ! 最初で最後なんで! みんな練習に夢中で私だけしか見ないんで! ほらほら!」
乙輪さんがもし犬だったら尻尾をブンブン振っているくらい興奮している。あ、圧に負けてしまいそうだ。断ってもオッケーっていうまで押してきそうだ。
「…………やったら、練習頑張れるの?」
「はいっ! めちゃくちゃ頑張れます!」
…………仕方ない。羞恥心を捨ててささっとやってしまって、乙輪さんには早く練習に参加してもらおう。
「姫乃っ! いつまで準備しているんだ、早く練習するぞ!」
「は、はーい。ちぇー。お預けだ」
決意を固めた時、練習をしていた先輩に怒られる乙輪さん。頬を膨らませ、防具をいそいそと装着すると練習に向かっていった。 …………よかった。やらないで済ん
だ。
「じゃあ先輩、私の頑張りしっかり見ててくださいね!」
「う、うん。頑張ってね」
「…………」
「麗奈、どうしたの?」
「……いや何でもない。練習再開しよう」
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