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廻間麗奈⑤

<挌技場>


 今僕は廻間先輩たちが練習をしている様子を挌技場の隅っこで見学している。

 声や足の音だったり、竹刀がぶつかり合う音が挌技場全体に響いている。す、すごい迫力だ。


「あれ。見学?」


 見学中、道着姿の女子生徒に声を掛けられる。ここに今来たようでまだ防具を付けていない。

 僕と同じくらいの身長だが体の凹凸はしっかりとしている。


「は、はい」

「私、1年の乙輪姫乃。よろしくね」

「2年の春日井千尋です」

「ええっ!? せ、先輩……なんですね。ひ、ひえー」


 僕が先輩であることにとても驚いている乙輪さん。


「……いやー先輩に見えないなー。同級生って言われても怪しいもん。見た目小学生にしか見えないよ」

「しょ、小学生……」


 それははさすがに言いすぎだと思う。小学生からちゃんと成長している。乙輪さんは指を顎に当てて座っている僕をじろじろと観察をしてくる。


「あの……そんなに見られると、恥ずかしいんだけど」

「あっすいません。ついつい…………。でも見れば見るほど先輩に見えないや。肌も私より綺麗だし」


 ボソボソと何かを呟くと乙輪さんはぺこりと頭を下げて、1,2歩僕から離れたところに座る。


「春日井先輩って剣道に興味があるんですか? なんかそんな風には見えませんけど。弱そうだし」

「えーと興味はあまりないかも」

「ですよねー。じゃあどうですか。一回入部してみて、剣道の良さを知ってみるっていうのは?」

「う、うーん。ちょっと入部は考えてないかな。見学だけしようかなって」

「そうなんですね。ざーんねん」


 わかりやすく肩を落とす乙輪さん。リアクションも大きいし、表情がコロコロと変わるので見ていて面白い人だな。


「あっ! ………もしかして春日井先輩、見学は見学でも麗奈先輩を見に来た人ですね?」

「う、うん」

「やっぱり。麗奈先輩、美人だしカッコいいですもんね。どの学年にもモテモテで、それこそ麗奈先輩目当てで剣道部に入った人もいるくらいですからね」


 廻間先輩は有名人で学校中の生徒から尊敬されている。剣道部のエースでもあり、多くの大会で優勝をしている。

 そんな廻間先輩目当てに剣道部に入部するのは分かる気がする。僕も先輩目当てで見学をしに来ているわけだし。


「あっでも駄目ですよ。麗奈先輩には宮町先輩っていうすーごっくカッコいい彼氏候補さんがいるんですから」

「し、知ってるよ。二人とも有名だもんね」


 廻間先輩と宮町先輩は仲が良く一緒にいることが多い。その様子を知っている全生徒の間でお似合いのカップルと噂されている。

 宮町先輩以外にも廻間先輩を狙っている生徒は多いが、宮町先輩が一番の候補だろう。



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