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偏差値1 あ、一応東大です


「どこだここ?」


部屋の中にいたはずが、気がついたら中世風の町の中にいた。

自粛のせいで久々の雑踏に、軽い眩暈を覚える。

行きかう人々の話し声がうるさくて、イヤホンでもつけたくなるこの感じ、懐かしいなあ。


「うーん、まあドッキリでもないだろうし、これは夢かな」


適当に頬を抓ってみる。普通に痛い。目が覚めてあの孤独な部屋に戻ったりはしないようだ。

窓付きならこれで起きるんだけどなあ。


まあ、夢の中で頬を抓ったら痛くない、というのが本当かどうかも知らないし、何の参考にもならない実験だ。


とりあえずは散策してみるか。


ふと自分の服装を確認してみると、なんだか上等な服を着ていた。

貴族・王族の雰囲気がある。


そういえばさっきから通り過ぎる人たちがやたらチラチラ見てくるなとは思っていたんだが、

たぶんこの服装のせいなんだろうな。見たところ他の人たちは庶民っぽい服だし。


「あのー」


「ん?」


背後から声をかけられた。若い女性のようだ。


「もしかして、あなた様はこちらに転移されたばかりの方でしょうか?」


振り返ると、いかにもな金髪のシスターがいた。お祈りしたらセーブしてくれそうである。


そして、転移というワード。

普段からネット小説を読み漁っている俺はすぐにピンときた。


「っ、あ、あっ、そ、そうだと思いましゅ」


いかん、久々の女子との会話だからか緊張して噛んでしまった。


「やっぱり!では簡単にこの世界についてご説明しますね」


シスターはそんな俺を嘲笑することもなく、明るい笑顔で説明役を買って出てくれた。

やたら都合が良くて胡散臭いが、俺にとっては嬉しい話なので、特に断る理由もない。


俺が軽く頷くと、シスターは説明を始めた。


「まず簡潔に言いますと、この世界は、学歴至上主義の世界です」


「学歴至上主義?」


「はい。どういうことかと言いますと、学歴がそのままご自身の強さに変換されるのです」


「なんと」


学歴至上主義の世界。字面がすでに嫌な感じだ。


「この世界にも独自の学校がありますが、転移者様の場合はご自身の世界での学歴が反映されます」


シスターは続ける。


「この場合の学歴というのは、在学中と既卒の扱いが変わりません。ただし、中退はマイナス査定となります」


かわいい顔して大学受験のサロン的な板にいる学歴厨みたいなことをつらつらと述べていくシスターに軽く引きながらも、もらった情報を咀嚼する。


俺は今、日本で一番の大学であるところの東王大学理科1類に在籍している。これはどの程度の扱いになるのだろうか。


昨今は世界大学ランキングとかいう政治色もあり得点の基準も外国人講師数だとか留学生数だとかを考慮するせいで日本の大学が低めに評価されがちな外国産ランキングをなぜかありがたがって日本disに使う低学歴も多いからな。そんなんでも数は多いし声もでかいから、異世界にも影響が出ているかもしれない。早口。


「えー、学歴の強さというか順位付けはどのように?」


「具体的な数値はわかりません。学部などにもよりますので、ほぼほぼ神様の主観だと考えられています」


「なるほど。目安として、どの大学ならどの程度強いのか、など教えていただけますか?」


「はい。えーっとですね…」


要約するとこうである。


まず、この世界でトップの大学がエノ大学。

ここよりも強いとなると、異世界、つまり俺のいた世界の大学しかないらしい。


とはいえ、それも限られており、私立だといわゆる草Kの2トップ、国立だと旧帝王大学である7つの大学と、東京にあるごく一部の大学だけがエノ大学を超えるらしい。


学歴の差は絶対で、草田大学の法学部と政治経済学部程度の差であれば勝負になるが、これがスポ科と法だった場合は勝負にならないらしい。


そして、理系は単純に文系よりも上の評価になっているそうだ。

医学部は理系より高い評価になる。


ここが重要なのだが、現在までこの世界に東大生が現れたことはないらしい。


そのため、東大というのは神話の領域であり、もし現れたら文理医の壁など破壊するほどの強さになるはずだという。わくわくが止まらんね。


「すみません、お伝えすることが多くて…」


「いえいえ、ご丁寧にありがとうございました」


「それで、なのですが」


シスターはやや緊張した面持ちで、ごくりと唾をのんで続けた。


「その上等なお洋服から察するに、もしかして、京王大学の方なのでしょうか…?」


キタキタ。これだけ時間が経てば、状況にも適応して余裕ができる。

ここはどや顔でお決まりの返しを披露してやろう。


脳内でそう素早く考えた俺は、いつもの台詞を、自慢げとも申し訳なさそうともとれるぜr津妙な表情で繰り出した。





「あ、一応東大です」





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