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何故、いつも悪がやられるのだろう?
「さすがだな。御剣。席に戻って良い」
席に戻る。悪が好きだ。といっても人殺しとかそんなことするような倫理観は持っていない。
ある方向では破綻してるのかもしれないけど。
「と言うわけで、合成関数には」
もやもやとそんな事を考えていても授業は進む。時間は経過する。普通の事。
「よし、今日はここまで」
教壇に立っている人がそう言ったと同時にチャイムが鳴った。
帰る。なんとなく通う学校。なんとなく受ける授業。なんとなく醒めている自分。
友達はいない。いるのかもしれないけどよく分からない。
学校を出て、スーパーに向かう。食材を購入せねばならないのだ。
毎日寄るのは面倒くさい。だから纏めて買うのだ。
……買いすぎたかもしれない。
重い。
もう秋もいいところ。まだそんな遅くない時間であるはずなのに日は随分と沈んでしまった。
視界の端に何かを捉えた。
なんだ?
そう思って注視する。
「――ッ!?」
屋根から屋根へと飛び移る露出は激しいが可憐な衣装を纏った女の子。
これは……戦闘ヒロイン!
つまり、これは……!!
向かう先には悪がいるはず!!
かくして、この物語の主人公、御剣 皇は興奮のあまりレジ袋に入った食材その他の重さも忘れて駆け出すのであった。