プロローグ
―――例え、地獄の業火に焼かれようとも、我が苦しみ、憎しみ・・・永劫、消えやせぬ。
思い知るがいい。末代まで、呪い尽くしてくれる。
忘れぬ・・・忘れぬぞ! この身に受けた苦痛・・・屈辱を!
「観念せい! 往生際の悪い!」
岩のような巨漢の男。六角堂王将が、腕組みをする。
「そうですよ。それをさせぬのが、私達の使命であり、世の理」
白髪を頭頂部で団子状にしている老女。神槍命が、携える杖で地面を鳴らした。
「んーまあ、そう言う事で。諦めてくれませんかねえ? 面倒ごとは、ご免なんで」
顎髭を掻く、優男。歪屋響介が、無遠慮にあくびをする。
―――許せぬ。許さぬ。特に解せぬのが、貴様だ! 歪屋ぁぁ!!
「だって、しょうがないじゃないですか? 禁忌を犯せば、裁かれる。僕だってね。好きでこんな所まで、出張ってきている訳じゃないんですよ? ね? お二方? だからね、さっさと諦めて、消滅してくれませんかね? ああ、ちなみに、お分かりだと思いますが、貴方には、極楽浄土行きの切符は、発行されませんので、あしからず」
歪屋響介が眉を上げると、六角堂、神槍の両名が、顎を引いた。
「と、言う訳で、『コレ』は、僕が預かっておきますね?」
親指と人差し指で掴んでいる『コレ』を歪屋響介は、懐へ入れた。
―――こんな所で、朽ちる長縄ではないぞ。我が野望は潰えぬ。何も見えておらぬぼんくらどもが。我は死なぬ。努々、忘れるでないぞ。いつか・・・いつの日か、貴様らの寝首を狩りに行く。貴様らに安息の地はない。
長縄の名の下に、主らの命、貰い受ける。




