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ヤバい病院 (3)

 父の拷問は、

そんなに長くは、

続かなかった。


 父が救急車で運ばれ、

三週間が経つと、

私は、

N病院のソーシャルワーカーに呼ばれた。


 「退院です」

と、

言われた。


 その時、

父は。


 喉の筋肉が衰え、

食べ物を飲み込めなくなっていたので、

喉に穴を開け、

管を通し、

栄養を送り込んでいた。


 もう、

これだけで、

一般家庭では、

生活不能。


 それどころか、

有料老人ホームでも、

受け入れ可能な施設は、

ほとんど無い。


 その説明を、

ソーシャルワーカーから受けた後、

転院を薦められた。


 何故?

N病院に残れないのか?

というと。


 診療報酬の関係。


 今は、

医療の共産主義的側面が、

どんどん削られていて、

入院日数が、

あるラインを越えると、

単価が下がる仕組みになっている。


 このシステムは、

ベッド数や職員の数などの

病院の規模や性質によって、

いろいろなパターンが、

有るようだ。


 病院も、

効率良く稼ぐためには、

頭を使わないと。


 そのため、

現実には、

患者転がしが行われている。


 その頂点に立っているのが、

N病院なのだ。


 N病院は、

城下町を形成している。


 N病院の近くだった場所に。


 かつては田園地帯だった所に、

『ヤブ医者通り』と呼ばれる道路が有って、

そこに、

病院と薬局が、

今でも、ひしめいている。


 実は、

私も、

透析患者として、

『ヤブ医者通り』に、

通っている。


 祭日や土曜日には、

N病院から、

パートの医者が、

派遣されて来る。


 話を戻すと。


 転院先は、

二択だった。


 共産党系とJ病院の。


 このJ病院が、

『オムツ代だけで、月七万円』

という、

国民年金では、

無理な病院だ。


 こんな極悪な病院でも、

生き残れるシステムが、

出来上がっていたのだ。


 それは。


 J病院が、

N病院の職員を、

接待していた。

それに使われていたのが、

料亭A。


 料亭Aは、

N病院の近くに有ったのだが、

N病院が移転したため、

今は、もう、無い。

 

 共産党系か?

J病院か?

と聞かれて、

共産党を嫌うと、

オムツ月七万円が、

待っている。


 私は、

J病院の事を、

知っていたので、

迷わず共産党系を選んだ。



 そして、

そのまま、

父の病室へ行き、

「来週には、

退院になるよ」

と、

伝えた。


 すると、

父は。


 「医者に、

騙されているんだよ」


 と、

言った。


 「『医者に騙されてる』って、

どういう事?

本当は、

退院出来るような状態じゃない

って事?」


 と、

私が聞くと、

父は、

黙ってしまった。


 そして、

この『医者に騙されている』が、

父の遺言となった。

 


 

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