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ヤバい病院 (2)

 父が、

初めて、

デイサービスに行った時だった。


 父は、

そこで体調を崩し、

私は、

実家に呼ばれた。


 医者に連れて行こうと思ったが、

何科の医者へ行って良いのかも、

わからず、

病院に着いたら、

最低でも、

二時間は、

待たされるのか、

と思うと、

日和ってしまった。


 救急車を呼べば、

済む話なんだけど。


 もう、

何度か、

救急車騒ぎを起こしているので。


 父も、

私と同じ考えだったようで、

医者には、

行かなかった。


 これが、

私の最大ミスである。


 この文章を読んで下さる方に、

私が最も言いたい事は、

『救急車を、

必ず、

利用しろ!』

他人の目や、

世間の迷惑は、

一切、

無視しろ!


 これだけは、

絶対に、

覚えておいてほしい。


 その夜、

私は、

妻のマンションで、

眠っていた。


 夜中の二時頃、

携帯が鳴った。

母は、

ボケているので、

真夜中に電話して来る事が、

何度か、

有ったのだけれども。


 留守録を聴くと。


「救急車を呼んだので、

青年の家へ行く」


 この『青年の家』というのは、

K病院の事である。

母は、

ボケているので、

『K病院』という単語が、

『青年の家』という単語に、

置き換わっていた。


 妻のマンションから、

K病院まで、

車で、

一時間かかる。


 真夜中なのに、

妻が、

送ってくれた。


 K病院の夜間受付へ行ってみると、

救急車は、

来ていないと言われた。


 119番で確認すると、

N病院だった。


 たぶん、

救急隊員が、

なんらかの事情で、

N病院にしたのだろう。


 父は、

あれだけ恐れていた

N病院へ、

連れて行かれてしまった。


 結局、

父は、

N病院のICUに入った。


 その集中治療室から、

一般病棟への移動が決まった頃、

医者に、

聞かれた。


 父は、

おかしな言動をする事が有るか?

と。


 つまり、

ボケた面が有るか?

と。


 ここで、

私は、

痛恨の一撃をしてしまった。

正直に、

「はい」

と。


 これも、

絶対に、

こう答えねば、

ならない。


 「父は、

歳はとっていますが、

完璧超人で、

全く、

そのような事は、

有りません」


 私は、

自分の父親を、

地獄へ、

突き落としてしまった。


 次に、

医者は、

同意書を書いてくれ

と、

言い出した。


 正確に書くと、

脅された。


 「同意書を書かないのなら、

ご家族が、

24時間付きっ切りで、

看護して下さい」


 それは、

父の身体を拘束する

同意書だった。


 この身体の拘束とは。


 文字通り、

父を、

ベッドに縛り付ける事で有り、

父の手は、

熱い鍋とか持つ時の

指を使えなくするデカい手袋に、

覆われ、

手首は、

ベッドに縛り付けられ、

腰も、

起き上がれないように、

固定されていた。


 誰が見ても、

拷問にしか、

見えない。


 ちなみに、

その後、

その病院では、

『北朝鮮事件』が、

起きた。


 私が、

母のお見舞いに行った時に、

廊下で待機していたら。


 「ここは、

北朝鮮か!」

という、

オッサンの大声が、

聞こえて来た。


 見てみると。


 若い女の看護師が、

オッサンに、

食ってかかっていた。


 オッサンは、

病院から、

逃げ出そうとするのだけれども、

その女の看護師が、

体当たりを食らわす勢いで、

それを、

阻止している。


 そのオッサンと看護師の会話が、

流れて来たので、

全容が、

掴めた。


 そのオッサンは、

前の晩に、

酔っ払って、

救急車で運ばれ、

抵抗したので、

拘束されてしまったようだ。


 そのオッサンは、

朝、

目が覚めると、

体が動かなかった。

縛り付けられている事に、

気付いた。


 北朝鮮に拉致された!


 と、

覚悟したオッサンは、

恐る恐る、

「ここは、

何処ですか?」

と、

尋ねてみると、

「N病院です」

という返事が、

返って来たのだそうだ。


 そのオッサンは、

帰ろうとするのだけれども、

女の看護師は、

「先生の許可が無いと、

帰れません!」


 看護師には、

人権は、

通用しない。


 そのオッサンは、

「ここは、

北朝鮮か!」

と、

喚くしか、

なくて。


 私は、

北朝鮮でも、

こんな事は、

しねぇよ

と、

思いながら、

見ていた。


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