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始まりの冒険者  作者: くろすけ
魔王軍編 〜マイの変化〜
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第五十三話.恐怖の能力

後書きにて説明させて頂きます。長期間放置していてすみませんでした。

「──さっさと話を戻せ。アイツの正体を話さない事には話が進まん」


 苛つき、と言うよりかは呆れた口調で催促する店長は、未だにはしゃぐティファの頭にチョップを入れて席に座らせた。


「別に叩かなくても……」


 そんな店長の行いにグチグチと呟くティファであったが、店長はそんな事は知らんと言わんばかりに無視して自分も席へと座った。

 ナズナはその様子を気味の悪いニタニタとした笑みで眺めていたが、店長に睨まれている事を横目で知ったナズナはさり気なく目を逸らし、気持ちを切り替えてから話を戻す。


「とまあここまで説明したわけだケド……分からないと思うから何となくでいいよ。魔物は感情から生まれたこと。最初に生まれた魔物達──私達という存在が居ること。そして、私達にはそれぞれ特殊な力がある事。そのくらいを分かってたら大丈夫」


 ナズナは話しながらシズクへと目を向ける。


「えっとー……確かシズクちゃん……だよね?」


「は……はぃ……!」


「さっきタロー君が何者かについて聞いてくれたから答えないとね。私達は感情から生まれる……それはタロー君も例外じゃない。なら一体タロー君はどの感情から生まれたのか気にならない?」


 ナズナはシズクだけでなく他の者達にも問い掛ける。それに対しての反応は様々で、シズクは控えめに頷き、エミルは何とも言えない表情で俯き、ティファは頭にはてなマークを浮かべながら首を傾げていた。


「お前は分からなくてもいいから下がってろ……!」


「むー! なんですかその言い方!」


 これじゃ一向に話が進まないと悟った店長の一言がティファの反感を買ったのか、ティファは片頬を膨らませながら店長の肩を何度も叩いて抗議する。だが華奢な身体をしたティファの攻撃など通じる筈もなく、店長はティファの後ろ襟を掴んで引きずりながら厨房の中へと消えていった。


「……話を続けようか」


 その様子を最後まで見届けたナズナは苦笑しながらも話を再開させた。


「もう答えを言っちゃうけど、タロー君は『恐怖』という感情から生まれた化物だね」


「恐怖……ですの……? あのブタローが?」


 エミルは意外と言わんばかりの表情で呟く。


 それもそうだ。

 タローといえばほんわかとした空気で、恐れなんて感じさせない──それこそ人畜無害なただの村人の様な存在だ。それなのに『恐怖』から生まれてきたと言うのだから、驚いてしまうのも無理はないだろう。


「意外でしょ?」


 ナズナはそんなエミルの思考を見透かしてか、いたずらっぽく笑ってみせた。それに対し言葉を返しはしなかったものの、エミルは静かに頷いて反応する。


「今のタロー君を見たら確かにそんな影は一ミリも見当たらない。行く宛のない孤児を助ける心優しい少年または青年……そんな印象が強いと思う」


「今は……って……事は……?」


「そのままの意味だよ。昔のタロー君は誰よりも臆病で、そして残酷だった」



「……」


 シズクは首を傾げて反応をしてみせるが、エミルは違う。

 イメージができてしまうのだ。残酷という言葉でタローを思い浮かべる事が出来てしまうのだ。

 いつの日かあったタローとアーケインと名乗る男の衝突の記憶を呼び起こしてしまう。あの時のタローとは思えない圧力、言動を知っているエミルだからこそ、ナズナの言葉に説得力を感じてしまう。


「……最弱なんて言われてたっけ。恐怖という性質から人間に恐れられ、彼自身も恐怖に縛られ逃げてばかりいた」


 懐かしむ様に話すナズナは、だからこそと少しだけ強い口調で続ける。


「人間は逃げてばかりの彼を見て対抗手段が無いと踏んだのか、『最弱』の烙印を押し、大規模な討伐隊を組んで彼を殺そうとした事があった。でも国も馬鹿じゃない。最弱と言っても油断せず、規模は国の戦力をほぼ全て投資して討伐に向かてた」


 サラっと吐かれたその言葉を聞いたエミルは驚愕から間抜けな声を出してしまう。


 国の戦力をほぼ全て投資するとなると、それこそ国と国との戦争並、もしかしたらそれ以上の規模だ。それは同時に、それ程『化物』達が恐れられていたという事にもなるだろう。


 だが、何よりも恐ろしいのはその結果である。タローは生きている。それはつまり──


「──大規模な討伐隊は、一夜にして消え去った。誰でもない、タロー君の力によってね」


 ──予想はしていた。

 そんな事だろうと思っていた。

 だがいざその言葉を聞くと、エミルは心臓が飛び跳ね、全身の汗腺が開くのが分かった。


 『善良な市民ではない』


 アーケインと名乗る男が放った言葉。それがエミルの脳内で繰り返し再生され、その度にタローの殺気立った表情が過る。


 あのタローが大量の人間を殺すとは思えない。だが同時にタローならやってしまいそうだという醜い考えも存在し、そんな自分にエミルは自己嫌悪に陥ってしまった。


「とてもシンプル。誰よりも単純で、誰よりも強い能力────」





 ──世界に溢れる『恐怖』という感情を魔力に変える。それがタロー君の本当の能力だよ。


 何時にもなく真剣な眼差しで、力強く、何処か悲哀を感じさせる声でナズナは告げたのであった。

二ヶ月感も放置してしまい申し訳ありません。私としても二ヶ月も放置していたのかという感じで驚いてます。仕事が忙しく、帰ったら疲れ果てて書く気力が削がれている、という感じになってしまっていて、「もう書くのやめようかな……」という葛藤に苦しめられていました。

でもこうしていま投稿する事が出来たので、やはり私は書かないと落ち着かないといいますか、仕事の疲れがスランプを上回ったといいますか、私の生き甲斐なんだなと改めて痛感させられています。

 話の流れが駆け足になるかとは思いますが最終話まで必ず更新を続けますので、それまでよろしくお願い致します。

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