衝動買い大作戦とギルド
服屋ではデザインや色違いの服を上下3着。《洗浄》があるからそんなに増やしてもしょうがないけど、気分転換と変装用?
同じ格好し続けるのもどうかと思うし、覚えられやすくなるのは間違いない。マントも全部で3枚になった。着回せば、雰囲気も変わるから、そうそう目立たないはず。現地の物だから間違いないでしょ。
ま、服見ると欲しくなるよね。しょうがないよ。ファッションという感じではなく、裁断された場所が違うだけだよって感じのデザインの差。
それと布を多めに買っておく。何かと使えるからね。
ついでに近くにあった雑貨屋に入り、アイテムボックスを満たしていく。どこかで役に立つ時がきっとくるさ。自分に言い訳して買いあさる。もちろん、しっかりオマケしてもらったよ。ロープやヒモは多めに、裁縫道具もあったし、ついでに食器類も……
大袋2つ、パンパンです。
『アイテムボックス』はそこまで珍しい物ではないらしく、普及しているが、それなりの値段はする。
1×1×1m収納できる背負い袋で、100万エーン。拡張のみで、時間遅延や時間停止の機能は付いていない。
まだ討伐の参加料しか稼いだことがないからな。どうなんだろう。ちょっと頑張れば買えそうだよな。甘いかな。
ま、見せびらかすつもりもないので、隠れて収納。
あとは、酒を買いたいが、稼いぐ方法を見つけるまでは我慢だな。でも飲むくらいはいいよなぁ。
宿には手ぶらで戻る。装備が新しくなり、テンションも高い。
有意義な1日だった。文化的な行動をしたよ。
アイテムボックスも喜んでるね、きっと。一部衝動買いという名前のつく物もあったけど。
これは自分へのご褒美じゃない。強化されたアイテムボックスへのお礼だ。出会いの神様には後ろ髪はないって言われてなかったっけ? 一期一会、感謝して購入しましょうって。あれ? チャンスだったか? まあいいや。満足できたから。
明日は稼ぐ方法を探しましょう。
おう。
***
やはり風呂は入りたいな。《洗浄》連射では気持ちが落ち着かん。厳密にいえば、洗浄の方がキレイになるんだろうけどさ。知ってる。残り湯汚くなるし、人体は思ってる以上に汚れてるんたよね。
それはそれ、風呂は風呂。
町を出て、適当な場所で風呂作って入ろうかと思ったけど、まだ堪えられる。大人になったんだ。少しずつ階段登ってるし。
ということで、商業ギルドへGO!
商売関連は全て商業ギルドが窓口となっている。
立派なレンガ造りの3階建て。金が集まる所って感じがプンプンする。内装もそれなりに高いのだろう。よく分からんが。
*
結論。
態度がでかかった。
なめられたくないのかねぇ、新顔に。
素材の買い取りは可能で、その都度交渉。まあ、そうだよね。量、質、時期によっても変動するもんだし。
*
商業ギルドへの登録は、できなかった。
まあ、するつもりもなかったけどね、こんなんじゃあね。
店を見て回って、コンサルティングでも。とか軽く考えてたけど、一蹴された。まだ受け入れられるような環境にないのだろうね、そういう発想は。突出した杭は打ち砕かれる。みんな仲良くの精神だ。そういう経済状況下にあるのなら、それもいいのだろうね。自分達を護るのも大事なことだ。
この国では自由競争はない
ギルド加盟者を保護するための組織が商業ギルド
製品の品質維持のため、規格、価格はギルドで厳しく統制
販売、営業、雇用、教育に関してもギルドが独占
一見さんは加盟できない
厳格な身分制度である徒弟制度がある
親方が職人、徒弟を指導して労働に従事させる
ギルドに加盟できるのは親方のみ
つらーい下働きから始めて忍耐力を養い、何年もかけて職人へ。腕を磨き才能があれば、さらに年数をかけ親方に認められる。
そこで進路の分かれ道。待遇を少し改善されてこのままやっていくか、紹介状を書いてもらい、新たに自分の店を持つか。何十年かかるんやって話。
無理無理無理。無駄無駄無駄無駄無駄ぁ。
ラッシュしちゃうよ。浮いちゃうよ。
ふぅ~。
やってやった。やれやれだぜ。ま、どんな組織であれ、謙虚さや感謝の気持ちの見えないようなものは、遅かれ早かれ淘汰されるんだろうけどね。驕り、歪み、腐敗、崩壊……
将来に不安が見て取れるような組織に、頭を下げてまで入りたくはないよね。
*
で、お次は定番の冒険者ギルド。
やはり、テンプレを味わうことになるのか。はぁ。ゆううつだ。巻き込まれるの分かってて、自ら行くってさ。あほだよね。
でも手っ取り早くお金を稼ぐなら、ここだって。
情報収集も兼ねて、気合い入れて扉をくぐる。
あれ。おかしいぞ。声が……、遅れて……、やってくるぞ。
なんてこともなく、受付カウンターへ。
「ようやくしゃべれたよ」
「………はぁ、で、どういったご用意で?」
さすが百戦錬磨の冒険者ギルドの受付嬢。切り返しも速い。
テンプレ展開が起こらず微妙な空気が流れた。
いや、俺のせいか。
「初めて来ました。登録や制度について教えて欲しいです」
「登録はどなたでもできます。…………」
*
想像通りの組織らしい。
依頼の受注、斡旋、管理、報酬の支払いを行う組織。素材や魔石の買い取りも業務のひとつで、解体も有料で行っている。主要な町には拠点を構え、本部は王都。国や町などの政治、商業ギルドとは一線引き、独立した組織として確立。
強さを判断するようなランクは存在しない。公には貢献度とかもない。依頼内容、報酬などから判断し、単独で受けるか、パーティーを組むかを自分で決める。
大きい町には、それなりの人数が集まった集団、クランがあり、そこに席を置くのが手っ取り早いとのこと。
ギルドとしては、情報の提供はするが、基本的に自己責任。自分の力量を判断し、自己責任で依頼を受けるということだ。分かりやすい。
ぶっちゃけ、登録は誰でもできるが、しなくても素材の買い取りは可能。さすがに依頼は受けられないが、達成が証明できれば報酬も支払ってくれる。もちろん手数料という名で、それなりに減額はされる。素材の買い取りも1~2割は差が出るので、面倒でなければ商業ギルドで売却した方がお得かも?
顔つなぎが目的なら、長期的に滞在して商業ギルド。旅の途中での短期滞在なら冒険者ギルドだな。でもこの町のような商業ギルドなら、なしだ。利用はするが、仲良くなれそうもない。
それにしても合理的で分かりやすい。対応も好感が持てる。
責任を持って依頼を受け付け、それに対応していく。手数料こそ発生するが、それは当然。運営費もあるし、保証やら保障やら補償やらもね。だから依頼を処理してくれる人材は、未登録でも人財というわけだろうね。いい話だ。
~~ちょっと小話~~
「保証」確かだと約束する。責任を持つ。保証人。
「保障」権利、自由、安全、生活などを守る。保護。
「補償」損害や出費を金銭などで埋め合わせる。償い。
◇◇◇
「人材」実績はまだないが、今後の成長が期待できる。
→これからどの方向へもいける可能性がある人。
「人財」実績もあり、今後の成長にも期待できる。
→財をもたらす、宝物のように大切な人。
「人在」実績はあるが、今後の成長が見込めない。
→いるだけ。益にも害にもなっていない人。
「人罪」実績もなく、今後の成長も期待できない。
→周りに悪影響を及ぼし、損害を与える人。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いかに効率よく依頼をこなしていくか。それが冒険者ギルドのチカラになる。だから登録やら、ランクやらに厳密にこだわる必要はないと。ランク付けは、冒険者のモチベーションを上げるにはいいかもしれないけどね。
でも信頼関係を築くには、登録は必須。新鮮で確かな情報は、やはり信頼できる人財に優先的に流すと思うから。公には貢献度はないと言っているが、やはり組織である以上、なにかしら評価の指標はあるはず。表立ってしないだけで、誰だって顔見知りで依頼をたくさんこなしてくれる人をひいきしたくなるものだ。
ちなみに、国や町で発行されるような『身分証』など存在していなかった。まだその段階にはないようだ。気軽に旅に出て楽しめるような環境ではないと。多くの人が、生まれた場所で一生を過ごすのだろう。一般人には不要と。
冒険者や旅人の方が少数派なのだから、わざわざ国や町が身分証など作ったりはしないのだろう。管理もできないし。だから、問題さえ起こさなければ行き来自由と。その代わり、何か悪い事をしでかすと罰は重い。人権なんて……どうなんだろうね。
調べるのも怖い気がする。
そんなこんなで情報収集して終了。結局、冒険者ギルドへの登録はせず、依頼にある仕事や、モンスターを討伐してお金を稼ぐ事にした。
結局こうなるのね……
だが、諦めないで!
『目指せ! 夢の不労所得計画』は、着々と進行中なのだよ。
頭の中でね。
読んでいただきまして、ありがとうございます。
『生み出す』『書き続ける』楽しさ、苦しみをご存知の皆様。
評価してもらえると、嬉しくなりませんか?
ありがとうございます。
先にお礼を言っておきたいと思います。
よろしくお願いします。