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8/23

リーレイの町


 翌朝

 正確には、翌々朝


 検証とかやってると、いつの間にか日付変わるよね。って感じだった。


 バンテージ!

 朝起きて(ひらめ)いた。

 ……使える布がない。


 という事で、『認証の指輪』を隠す方法は、また保留。次の町に行ってから考える。武器や防具も見てみたいし。あまり気にしすぎると、余計に仕草で目立っちゃうから、そのまま堂々とすることにした。


  *


 ボス狼の遺体を『始まりの町』近くの森に置いてきた。大木の下に、さりげなく。えっ、不法投棄(とうき)? いいんです、これは。おそらく直ぐに見つかるから。疑問に感じながらも、喜んでくれるでしょう。現在進行形で悩まされてる問題が無くなったのだから。文字通り亡くなったからね。


 町にも行かない。誰にも伝えない。

 面倒事に巻き込まれたくないから。


 その後の処理は任せればいい。

 遺体は、討伐完了の証拠となる。火葬するよりは町のためになると、勝手に判断した。

 これも自己満足。約束は果たした。

「自信が持てるようになったら、また討伐に参加する」

 自分ではそう思える。倒しちゃったけどね。



 で、『導きの祠』経由で、次の町に向かって歩き中。

 モンスターとかにも遭遇していない。順調すぎて、怖いくらい。あれだけいたゴブリンさん達は? 祠に近づくと出てくるとか言ってたと思うんだけどさ。一度行っちゃえばスルーですか? ま、出ない方がありがたいんだけどね。



 特に急いでいるわけでもないので、のんびりと。

 歩け歩け運動、みたいな?

 まだ見ぬモンスターとか出てくるかもしれないから、最低限の警戒はしているのだが、……平和だ。


 こんなに歩くのは何年振りだろう? 何十年?

文明のおかげか? 車に電車、飛行機まであったんだから、そうそう長距離を歩かない生活をしていた。そういう恩恵は受けてきた。

 せいぜい買い物で歩き回るくらいかな。

 新鮮だ。なんとなく懐かしさもこみ上げてくる。

 何が何でも便利になればいいってもんでもないからな。当たり前が当たり前じゃなくなるって、感情が揺さぶられる。


 歩くスピードは速い方だけど、長距離はしんどいね。寄り道もしたから、もう日も傾いてきている。ぼちぼち野営準備かな。


 迷うのは、小屋を出すか、シェルターで済ますか。テントを張るなんて論外。もっと簡単に安全確保できるのだから。テントはない。売っちゃうか? いや。それもないな。使う時はきっとある。あるはずだ。


 で、突然道の近くに小屋が現れるのも怪しまれそうなので、シェルターにした。隠しようがないし。道っぽい進路から少し離れ、目立たない所に用地を確保。

《シェルター設置》ん、埋設(まいせつ)か? まあどっちでもいいや。イメージが下に向いてるから結果は変わらんし。登録名は《シェルター》だけだしな、その時の気分ってことで。


 あとはお決まりの住環境を整えていく。もう、プロだね。ちゃっちゃっちゃっで完了。流石に一瞬では無理だけど、5分もかかってない。

 この周辺に畑でも作れば、念願のスローライフ? いや無理だ。肉食べたいし。獲物の解体とかできないし、できればしたくない。デリケートなんだよね。こう見えて。


 そろそろテンプレイベント起きないのかな?


 あ、シェルターにこもってたら出会いはないか。モグラじゃないし。まあいいや。風呂のが大事。



 ***



『ようこそ、リーレイの町へ』


 何やかんやあることもなく、翌日、町に辿(たど)り着いた。

 時短だね。


 門の上の看板に書いてあった。門番さんが言うセリフじゃないの? 期待してドキドキしてたのに。


『始まりの町より大きい』

 第一印象がこれ。門番みたいな兵士はいるものの、出入り自由で、特に待たされることもなかった。


 警戒していた万引きゲートのようなものはなく、すんなり中に入れた。中継地点と言うには立派で、行き交う人も多く、商売の盛んな町のようだ。少し落ち着いて、情報収集することにした。

いずれ行くことになる王都だ、急いでも仕方ない。独りでいることに慣れすぎると、引きこもりたくなるからな。それも問題だ。



 まずは、宿を確保しますかね。

 門の近くをうろつけば、だいたい何とかなるもんだ。


「あった」

 食事なし宿泊5000~10000、5時間休憩3000

 朝夕食あり6000~12000エーン

 なんで値段まで分かるかって? 宿屋の前のに置かれた看板に書いてあるから。なんて親切設計。明朗会計でわざわざ聞きにいかなくてもいいからね。お互いウィンウィンだ。

 適当に選んで、とりあえず2泊押さえた。基本トイレは共同。風呂はなし。


 受付で、武器、防具、服屋の場所を聞き、早速出かける。


 それにしても、やっぱり外国に来たなー。他世界? 皆さん顔のホリが深い。男性はゴツくて顔が濃い。女性はモデルっぽく整っているが、体型はマチマチだ。深くは掘り下げない。食生活が悪くないって事だ。

 ゲテモノとかまだ見てないし、食材も見たことあるような物ばっかだ。助かる。いちいち確認する手間も省ける。


 まずは防具屋か。盾の看板。分かりやすい。ユニバーサルデザインってやつだな。だいたいの人が理解できる。



~~ユニバーサル・デザイン~~


 文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計。

「できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインにすること」が基本コンセプト。


■一般的な例

絵文字ピクトグラム

 非常口、お手洗い、駐車場、温泉、禁煙、等々


○シャンプーボトルの側面にギザギザの「きざみ」をいれて、触っただけでリンスやコンディショナーと識別ができる。

 さらに、ポンプタイプで使用時に手が触れるポンプ頭部にも同様の「きざみ」がついている。


○牛乳パックの「切欠き」

 目の不自由な方が、牛乳と他の飲料を区別でき、また切欠きの付いている反対側が空け口とわかるもの。

 種類別で『牛乳』と単独でいっていいのはこれだけ。

 牛乳と言っても種類があるので、パッと見ただけで、牛乳とそれ以外に判別できる。こだわりがある方、健康を気にする方にも便利なデザイン。


~~牛乳類の種類~~

『牛乳』

 (しぼ)ったままの牛の乳(生乳)を加熱殺菌したもの。

 成分()調整。水などを加えることは法律で一切禁じられている。

「成分調整牛乳」

 生乳から水分、脂肪分、ミネラルなどの一部を除去し、成分を調整したもの。

「低脂肪牛乳」

 生乳から脂肪分を除去し、低脂肪(0.5%以上1.5%以下)にしたもの。

「無脂肪牛乳」

 生乳から脂肪分を除去し、無脂肪(0.5%未満)にしたもの。

「加工牛乳」

 生乳に脱脂粉乳、クリーム、バターなどの乳製品を加えたもの。

「乳飲料」

 生乳や乳製品を主原料にビタミン、ミネラルなどの栄養分や、コーヒーや、果汁を加えたもの。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 うんうん。こういう発想ができる人、有用性を理解し、実際に使ったり広めている人達こそが素晴らしい。ブラボー。俺も助かるし。


  *


「いらっしゃい。気軽に見ていっておくれよ」

 あごヒゲの長い、白髪のおじいちゃん。

 とんがり帽子かぶれば、魔法使いだよね。店間違えたか? あのデザインの意味が違うとか?

 店内を見渡すと、盾や鎧といった「防具」だらけ。

 良かった。間違ってなかったらしい。


 防具は、旅人の小楯と厚手の旅人の服だけだから、もうちょっと防御力をあげたい。ぶっちゃけ素人だから、違いがよく分からん。

「軽くて動きやすい防具と、腕にはめられる物があれば見せて欲しいです。予算は、いろいろまとめて買うと安くなりますか?」


 命を預ける防具をケチるつもりはないが、値引き交渉とか大好物だから、ついつい聞いてしまう。クセだね。


「ほうほう、そうかねそうかね。ちょっと待ってなさい」

 今の装備(旅人の短剣、ナイフ、小楯、革靴、マント)と全身をチェックし、ゴソゴソ店内を漁りだした。


「こんなのはどうじゃ?」

 持ってきたのは、茶色い剣道の防具? 面はない。胴、小手、垂に、肩当て。何かの皮製で、そんなに重くない。でもデザインが……


「重さは問題なさそうですが、もうちょっとシンプルに。戦いに行く装備というより、必要最低限で、長い旅用の丈夫な装備が希望なんです。言葉が足らずにすみません。あとこの小手のような装備は他にも種類はありますか?」


「ほうほう、そうかねそうかね。ちょっと待ってなさい」

 持ってきた装備を戻し、希望に沿うような物を持ってきた。


 おっ、結構いいかも。

 体には、さっきよりも丈夫そうな左の肩当てと、胸当てのみ。内側に衝撃用の厚手の布を貼ってある。

 少し重くなったが、トータルではさほど苦にならない。動きやすく、ショルダータックルとかできそうだな。

 深緑に塗るか。薄黒いからダメだな。

 キラーアントの外皮で、ナイフくらいの斬撃なら弾いてしまうらしい。そのぶんお高いんでしょう?


 小手は、オープンフィンガータイプで、甲と腕の所に金属の縦長の棒が幾つか埋め込まれた物。

 守備力で言うと甲冑(かっちゅう)のガントレット、動き易さで言うと忍者が着けてそうな厚手の小手って感じかな。実際に盾代わりにもなるし、小楯の装着にも支障のない薄手の物だった。金属は鋼。

 色も、薄い黒をベースに鋼の銀色が渋みを出していてgood。普段使いできそうなデザインとスッキリしたシルエット。

 指輪も隠せるし、申し分なし。そのぶんお高いんでしょう?


 もうビンゴ! 即買いした。


 魔法使いっぽいおじいちゃんは、ニコニコしながら、端数(はすう)だけオマケしてくれた。フード付きのマントを色違いで2枚、長旅用のブーツも買ったからね。


 ありがとう。


 張り切って装備し直し、軽い足取りで武器屋はやめて、服屋へ向かった。




 読んでいただきまして、ありがとうございます。


『読む』楽しさを感じられる皆様。

 評価していただけると、更に楽しくなるかもしれませんよ。この夏に一度試してみては?

 よろしくお願いします。

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