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どうしたもんかね


 今日は、朝から狩りに出ようかと、昨日とは逆の門に向かっている。狩り場の変更ね。

 すると、子供達がワラワラと現れ、町の掃除をしだした。


「ここが教会か。結構大きいんだな」

 三階建ての立派な造りの建物が(いく)つも並んでいた。

 関わるつもりもないので、外観を眺めながら、さっさと通り過ぎる。


「あっ、ヤバいやつだー」「ほんとだー、ヤバいやつだー」

 おっと、俺か? マントの色違いくらいじゃ変装にはならんか。しまったな。うるさいぞ。人数がいるぶんタチが悪いな。どうしたもんかな。


「おはよう。みんな朝から元気だな。いい事だぞ!」

 親指を立ててグッジョブだ。

「なんだあれー」「何やってんだ、こいつ」

 理解できないのか、仕方ないな。

「これはな、いい仕事してますねって伝える合図だ。声をかけられない時でも、仕草で分かるだろ?」

「そうなのかー」「いい仕事なのかー」

「いい事なのかー、やったな」「えーなにそれー」

 これくらいでいいだろう。


「じゃあな、お兄さんは山に狩りにいくんだ。お姉さんは川に行ってもないぞ、お姉さんなんていないからな」

「何言ってんだ、こいつ。」「やっぱりヤバいやつだー」

「ヤバいよー、こいつ」「逃げようぜ、ヤバいよ」

 ははは。うぜー。


 うん? やっぱりいた。隅っこでおとなしく掃き掃除中。

「おはよう。元気そうだな」

「…………」ふん。

「そうか、よかったよ。じゃあな」

 ふんふん。


 いい笑顔だ。首輪の魔石は『無色』。でも教会に奴隷? 他の子供には『隷属の首輪』はない。ということは、この子だけが特別なのか? 聞いても分からんだろうし、まあいいか。


「その子に何かありましたか?」

 突然話しかけられた。シスター?

「……いや、声を出せないみたいだし、首の物も少し気になりましてね」

「そうですか、知り合い、という事でもなさそうですね」

「はい。昨日、町で見かけましてね。その……、他の子供たちといろいろ大変そうなのをね。で、声をかけたんです。余計なお世話だったかもしれませんが」


「そうだったんですね、ありがとうございました。我々もずっと一緒にいられる訳ではないので、どうしても……。残念なことなのですが、数日前にふらっと教会にやってきまして。どこから来たのか、なぜあんな物を付けて独りでいるのか分からないのです。それで、顔見知りの方ならと……」


 おう。重たいな。なんかなー。

「いえ、私も昨日初めて会っただけなので、お役に立てずにすみませんね」

「いえいえいえ、こちらこそ突然声をかけまして……もしかしてと思ったらつい……」

「大丈夫ですよ。ステキな方から声を掛けられるなんて、それだけでご褒美です。ははは」


「……」

「では、狩りに出ますので」

 足早に去ろうとするも、引き止められる。


「あっ、あのぉ。」

「……」振り返って無言で返す。

「も、もしかしたら、王都へ行く予定とかありますか? その、この辺りでは見かけない方ですし、またどこかへ行かれるのかと思いまして。それで、もしかしたら王都もあるかと……」


 おう。アタマの回る人だなぁ。そこまでの考察をこの短期間でね。やりますな。

「そうですね。その予定もなくはないですよ」

「まあっ! ほんとうですかっ!」

 例えでもなく、ホントに飛び上がってます。この人。

「教会からの依頼という形で、この子を王都まで連れて行っていただけませんか? もちろん、報酬も、その間の費用もこちらで負担します。」


 おう。太っ腹ぁ。スレンダーだけど。この人にそんな権限があるのか?

「……えーっと、急な話で理解が追いついていません。なぜそのような話を私に? そんな流れになる見当もつかないのてすが……」

「は、はいぃっ、そ、そうですよね。突然すぎますよね。私ったら、いつも、つい……はぁぁ。またやっちゃったぁ……。


 やさしそうだし、この子もなついてるようだし、独りで狩りに行くなんてそれなりに強いのだろうし、受け答えからも信頼できそうだし、それにそれに、ステキな方だなんて、まあっ……ぽっ」


 途中からは全然聞こえないような早口の独り言で、その後のやり取りも長くなった。


  *


 まとめるとこうだ、

 奴隷商預かりのはずの『色無し』が独りでいるのは普通ではないらしい。奴隷商は、立場を理解させたり、行動の(しつけ)をしたり、最低限の教育を行う義務がある。

 奴隷商不在のまま、条件契約前のこの状態が続くのはよくないらしい。場合によっては、「死」もありえる。

 いつから奴隷商と離れ、独りでいるかも分からないので、早く奴隷商の所へ行く必要がある。


 この町には奴隷商館はないし、捜したが奴隷商人もいない。

 この町から一番近い奴隷商館は王都。

 早く行ってあげたいが、教会の予定では、早くても二週間後の出発になる。冒険者ギルドか商業ギルドに依頼を出すかで検討しているところだが、問題も多そうで悩んでいた。


 この子は人見知りが物凄く激しいらしく、王都までの道中も不安がある。そもそも、教会としては奴隷制度自体に反対しており、あまり大事にはしたくない。かといって見捨てることなどもってのほか。


 そこに現れたのが、この子がなついているように見えた俺。しかも王都に行くかもしれないと。ならばと、いろいろすっ飛ばして依頼してしまった。という感じ。

 このシスターは、この子の担当で、それなりになつかれている。


 依頼は、

 できるだけ早く、この子を連れて王都の奴隷商館に行く事。その際に、教会からの書状を奴隷商人に渡す事。

 その後、完了の報告を王都の教会で行う事。その際に、別に用意した書状を教会関係者に渡す事。

 ちなみに、書状は魔法で封印されているため、指定された関係者以外は開封できないらしい。

 報酬は、諸経費込みで20万エーン。前金で10万、残りは完了報告の際に支払われる。


  *


 護衛とお使いの依頼? どうなんだろう。相場が分からんわ。


 乗り合い馬車を使うと、町を1つ経由して向かうことになり、町で1泊しての、2日間の行程が一般的。

 安全性を考えればこっちだよね。護衛付きで楽できるし。ただ、高いと。馬車代金が1人5万。宿代と2日間の食事で1人1万。それぞれ2人分で最低12万は飛んでいくと。報酬が2日で8万になると。


 うーん、いいのかな。独りで受けるにはいい感じ? でも前金は馬車代で飛んじゃうから、経費は持ち出しなんだよね。どうなのこれ? 悩ましい。逃げられないための報酬設定か?


 歩けば、距離の短い直線コースで、山越え野宿の1泊2日。冒険者なんかは、だいたいこっちと。ただ、子連れだから、倍の2泊3日はかかるかな。

 無しだな。護衛も兼ねるとなると、普通独りじゃ受けんわな。夜寝れないし、モンスターも出るって言ってたしな。2人で受ければ、3人分の食費の3万×2日の6万だけ。なかなかいい依頼だよね。仲間(つの)っちゃうか? 今日の明日じゃ難しいか。いきなり野宿ありの依頼なんて、さすがにこっちも信用できんか。


 そもそも、身元不明の『隷属の首輪』所有者に、よく20万も出せるよな。そっちのが驚きだわ。ふー。まあ、いろいろあるんだろう。詮索(せんさく)はやめておこう。ロクな事にならん。



 即答は避け、明日の朝に返事をする事にした。

 出発は、なんなら今からでもウェルカムらしく、明日の返事次第では、そのまま出発できるように準備をしておくとの事だった。


 そう言えば、お互い名乗ってなかったな。まあいいや。明日で。



 んで、がっつり時間を取られたけど、気分を改めて狩りへGO!


 またしても、

《身体強化》《ステルス》《フラッシュ》《スラッシュ》の有用性がいかんなく発揮されましたとさ。


 □買取明細書□


  種類      数 単価  持込  小計 

ホワイラビット魔石  1 1000  800   800

  肉一式  1kg  1 2000  1800  1,800

ホワイダック 魔石  1 1000  800   800

  肉一式  1kg  1 2000  1800  1,800

ブラウディア 魔石  1 3500  3000  3,000

  肉一式 20kg  1 40000 36000 36,000

  解体代      3    ▲6000 ▲6,000

――――――――――――――――――――――

 合計        6        38,600


 ホワイラビット、ウサギ肉

 ホワイダック、カモ肉

 プラウディア、シカ肉


 連日の実績と換金から、ギルドへの登録を勧められるという、嬉しい? イベントがありましたが、もう旅立つのでと丁重にお断りした。


 ハンターでもやっていけそうです。はい。





 読んでいただきまして、ありがとうございます。


 評価していただけるというのは、凄い事なんですね。まだまだチカラ不足のようです。

 ならば、癒やしのひと時を。

 ぎゅうっと力を入れて両目をつむり、5秒間キープ。

 はい。ちょっとだけ目がラクになりませんか?血行促進で、プチ回復。

 今です。評価しちゃいましょう。

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