表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/23

登録しちゃう?



 翌日、もやもやしながら冒険者ギルドへ向かう。

 昨日の子供の達のイヤな感情が残ってるみたいな感じ。


 忘れずに、宿を追加で2泊押さえた。食事も寝床も合格ライン。今回は食事なしにして、外食を楽しむ事にした。ほぼ外食みたいなもんだけどね……



 冒険者ギルド。長いからボケルド、ボウギル、ボルドー、ワインかっ! 意味は違うけど、略してボードへ。

 普通にギルド。


 (から)んでくる()()()も当然のごとくいない。

 何の役にも立たんし、邪魔だし、時間の無駄だし、ギルド側からキツイお(しか)りいくよねフツー。大事な大事な労働力ですから。そんな(ひま)があったら働けと。


 信頼関係を築きこそすれ、ヘタに構うヒマもないよね。敵対するメリットが三者にはない。ギルド、俺、他のギルド登録者。組合員? ギルド員? 聞いとこ。ギルド員だって。

 ここで登録した人は『リーレイの町のギルド員』と言うらしい。略して……リギ、ごめんなさい。


 組織対組織なら、いざこざはあるかもしれないけどさ。俺、独りだし。こちらから行動を起こさない限り、相手にされないよね~。




 突然ですが、なんと、所持金が70万エーンを切っていた!

 そう。装備と衝動買い。追加の衝動買い。2日で100万以上使うって、俺すげーー。

 なかなかだよね。中古車とか買ってないよ。いのちを護るための出費です。仕方がないのです。その分稼げばいいんです!

 王都までは問題ないと思うけど、社会人? 大人としては早く収入のメドを立てたい。減ってく一方だと、俺のデリケートなガラスのメンタルに()()


 □財布を確認すると、残金610,500エーンでした。



「魔石の買い取りをお願いしたいのてすが」

 昨日とは違う受け付けの人が2人。笑顔で応対してくれた。

「ありがとうございます。それでしたら、あちらの奥にあるカウンターまでお願いします」


 柱で見えなかったが、少し行くと案内板がちゃんとあった。

「ありがとう」軽くお礼を述べ奥に向かう。


 フロアに人がちらほらいる。冒険者だとしか思えない。装備をつけて、狩る気満々の力強さが漂っている。人種が違うのでは? と自分を疑いたくなるくらいの差がある。


 人それぞれ。ナンバーワンは目指してない。

 オンリーワンだよね。

 自分を(なぐさ)め、買い取りカウンターへ。


「魔石の買い取りをお願いしたいのてすが」

「ありがとうございます。では、ギルド証と買い取り希望の魔石をこちらにお願いします」

 笑顔でトレーを差し出してくる。

 ちなみに、『ギルド証』は国や町で『身分証』の代わりにはならず、あくまでも、『冒険者ギルド』内での(あかし)


「登録はしていません。これが魔石です」

 小分けにした袋を3つ、カウンターに置く。


 赤い魔石。ゴブリンさん×57、スライム×4、狼×43。


 ゴブリンさんは、『導きの祠』に行く途中と、祠内の計57、スライムが4、砦で討伐した狼が43、全部で104個。ちなみに、ボス狼のはない。そのまま手をつけずに置いてきたから。


「よろしいのですか? ギルド員でないと、買い取り金額が引かれてしまうのですが」

「はい。どれくらいの差があるか分からないので、正直その金額を確かめようかとも思ってます。」

「そういう事でしたら、査定しますので、しぱらくお待ちいただけますか?」


 番号の書いた木札を受け取り、待ち合いのベンチへ腰かける。

 周りを見ていると、みな3~5人のパーティーを組んでいる。依頼を受けて次々と出て行った。日の高いうちに片付けたいのは当然だしね。打ち合わせして、準備が完了すれば、ここに用はないわな。

 やはり、テンプレはやってこなかった。みんなオトナだね。いや、これが普通か。どこかテンプレを期待してる自分がいるのも不思議だ。


 アホなこと考えてたら、番号を呼ばれた。


「こちらが買い取り金額の明細になります。お確かめください」


 おう。なんて礼儀正しいんだ。どこぞの飲食店や夜のコンビニなんかより、よっぽど心がこもってるぞ。


 経営者でもなければ、客のありがたみは理解できないのかね。責任の意識もないのが当たり前で、自分の応対がその店の顔になっている感覚すらない。教育の質の問題、圧倒的な人材不足。怒られるとすぐ辞めちゃうからな。まあ、俺も人のことは言えなかったけどさ。


 それに引き替え、ここの接客は素晴らしいね。自分だけでなく、相手の立場も考慮できている。(ほこ)りを持っているんだろうね。仕事にも、自分にも。少しの笑顔でも気分は変わる。どうせ働くなら何かを見つけて楽しまなくちゃね。


 うん。俺も頑張ろう。


 さてさて、いくらになったかなぁ?


□買取明細書□


  種類     数  単価  持込  小計 

スライム魔石    4   150  100  400

ゴブリン魔石   57 3000  2500 142,500

ブラウウルフ魔石 43 4000  3500 150,500

―――――――――――――――――――――

 合計     104         293,400


 計算は持ち込み単価で、

 通常だと合計343,600、差額は50,200エーン。


 今回は数が多いからあれだけど、許容範囲な気がする。これからのモンスター遭遇率にもよるけど、素材の買い取りも出していければ、生活はしていけそうだ。


 5万は大きいけど、登録のデメリットもある。今のところ何かに縛られたくない。王都に行って何が起こるか、何も起こらないのか。状況を確かめてからでも遅くはないし、急ぐ必要もない。慌ててる時ほど判断を誤りやすい。


 ま、登録はまたの機会で。


「はい。ありがとうございます。これなら、今回は登録はなしで。またゆっくり検討します」

「そうですか。これくらいの討伐ができる方には、登録して依頼を受けていただきたいのてすが、残念です。

 ですが、今後、素材も出せるのであれば、やはり登録しないのはもったいないです。前向きに考えてみてくださいね」

「そうですよね、ゆくゆくはそうなるかもしれませんが、今すぐにはちょっと決められないです。ご忠告どうも」

「はい。またのご利用お待ちしております」



 取り引きが無事完了し、受付嬢が緊張を解いた去り際、(きびす)を返し、人差し指を立て質問の了承を(うなが)す。

「あ、ひとつよろしいですか?」



「……はい。なんでしょう」

「少し気になった事がありまして……」


 **



「どうもありがとう」


 ひとつと言いながらも、ガッツりお話を(うかが)った。



 残金903,900エーン




――――――――――



「おいっ、そっちはどうだったよ」

「ふんっ、何を偉そうに。何様よ!」

「まあまあまあ、私達が敵対したらここにいる意味がないでしょう? 話を戻しましょ。それで、どうだったのかしら?」


「けっ! ……こっちにはいなかった。『始まりの町』まで行ったってのによぉ。クソッ」

「ふんっ、ちゃんと『祠』にも行ったんでしょうね? 手抜きして中に入らなかったとかじゃないの?」

 ガタッ

「あぁっ! んだテメーは、ケンカ売ってんのか? 表出ろや!」

「もうっ! すぐそうやってケンカ腰になる! 2人ともやめなさい! 話が終われば、しばらくは会わないで済むのだから、少しは我慢しなさいな!」


「そっちのヒステリーに言ってやんな。俺は見てきた事を話してるだけだ」

「ふんっ、誰がヒステリーよ。このイカレ野郎が!」


「はぁ……、あなたがそれだけイライラしてるって事は、そちらにもいなかったという事ね? 違うかしら?」

「ふんっ、そうよ。こっちには形跡も見られなかったわ。行ったのは『導きの祠』で間違いないわ。そいつがいなかったって言うのなら、どこかですれ違ってたか、もう死んでんじゃないの」


「けっ! こっちは『祠』に向かう途中に戦闘の跡はあったが、それらしい奴は見かけてねぇ。生きてりゃ分かる。てこたぁ死んだのかもな。クソッ」

「あなたが見かけてないと言うのなら、もういなかったという事でしょ? 死んでるかどうかは別の話よ」

「ふんっ、当てになるのかしら、そいつの鼻は」

「ああん!」


 パンっ

「もういいわ。やめにしましょう。死んでしまった可能性もあるけど、引き続き『独り』でいる人物で、『変わったウワサ』があれば注意しておきましょう。いいわね」

「おう。()()()んじゃ意味ねぇからな。俺は戻るぜ」

「ふんっ、これだけ経っても現れないって事は、もう死んでるわよ。せっかくこんな所まで来たっていうのに、空振りとか笑えないわ」


「はいはいはい。じゃあ些細(ささい)な事でも情報を(つか)んだら、ちゃんと報告するようにしてくださいね」


 ガタッ、ガタッ


 コツコツコツコツ…………




『読む』楽しさを感じられる皆様。楽しんでますか?

 評価してますか?

 この手強さは、伊達じゃない!

 楽しくなったそのパワー、見せて下さい。

 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ