導きの祠
「もういっちょイっとけや! 《石弾》(大)!」
ドシュッ!!
ドンガラガッシャーン
「ふぅーっ。数が多いな。甘い!」
《土壁》 ドン
からのぉ~
「《石弾》(大)!」
チュドーーン!
なんだよ、こいつら。出過ぎ。ちっとは自重しろっつーの。
もしかしてあれか、数押しの『俺達つえ~~~!』ってやつなのか? かなりの数はヤラレちゃうから『俺達強かっただろぉ~~~!』なのか? いいのかそれで?
まあ、戦いに数は重要な要素であることは間違いないけど、最後まで立ってたヤツが勝者だしな。なんだろね。誰かが指示してるってわけでもなさそうだしな。
そういうのが流行ってろのかもな。数押し選手権……
いかん。また悪いクセが……
突然ですが、『始まりの町』から『導きの祠』へ向かっている途中。もうしばらくかかりそうだ。
西ルートに決めたのは、命大事に!派だから。
東ルートの『試練の塔』からは、ガンガンいこうぜ! 感がプンプンしたし、北ルートの『町を2つ経由』じゃあ、何となく面白くなさそうだったから。というだけの話。
あくまでも、名前からの印象なんだけどね。
『試練』なんて、できるだけ受けたくないし。いっぱい戦わされそうな? 『導いて』もらえるなら、よろしくお願いしたいし。なんか楽そうだし。ぱぁ~って光って終わりそうな?
『町2つ』は、どっちのルートでも『町』は1つは経由するし、なんなら後で寄ればいいし?
『試練の塔』と『導きの祠』でしか手に入らない『力』があって、どちらかひとつしか受け取れない。と言われれば、どちらかを選ぶよね?
早く自信をつけて、少しでも役に立てるようになろうって決めたから。危険にあふれた世界だから、選択も慎重になった。
これは後で分かったのだが、
『導きの祠』では『能力の強化』、
『試練の塔』では『新たな能力』を授かる。
『町を2つ経由』は移動距離が一番短く、早く『王都』に辿り着ける。
という違いだったらしい。
結果的にみたら正解だった。どんな新しい能力かは分からないが、闘うための力よりは、いかに生活を豊かに楽しくするか。の方が自分には合ってると思うからね。『生活魔法』の強化ができるなら、そちらの方がありがたい。
やっぱインスピレーションって信じてみるものだね。
ハズレたとしても、言い訳やこじつけは自分で考えられる。それはプロだから! 経験を積んだ大人には、そういうスキルが生えている。自分を護るためにね……。いろいろあったんだよ、そう、いろいろと……
あれ、おかしいな、目から水が出てきたよ……
聞いてはいたんだよ。祠に近づこうとする者に向かってくるモンスターが多いと。確かに聞いた。町長さんに。
「いい加減、ウザイわぁ!!」
保存食を買い、足りないものを買い足して準備を整えた。もちろん、『一式くくり』にして『簡易アイテムボックス』にいれてある。
ついさっきまでは、町を出てのんびり進んでいたのだが、突然赤目のモンスターが襲ってくるようになった。
町長さんとの話が盛り上がったから、とっくに昼は過ぎてる。
祠に近づいているという証拠なのだろうと諦めているが、マジ多過ぎ。こっちのが『試練』じゃあねぇかよ!
「『我が身を守り賜え』《石弾》(大)」
ドシュッ!!
「え~い、落ちろぉ《石弾》《石弾》《石弾》(すべて大)」
ガンッ! グシャ! ドッパァーッ!
くっそー余裕がない。こんなはずではない。
もっとスマートに処理せねば。
「ちょっと休憩しよ」
その前に、弾の補充をして、《石弾作成》…………
必殺《櫓作成》
人型だから、登られるかもしれないので、ハシゴはアイテムボックスに回収。
「ふぅ。やっと座れる」
おっ、あれが『祠』だな。もう少しだったんだね。案外近かったみたいだ。こんもりとした岩山が見える。いかにも何かあるって雰囲気がここからでも伝わってくる。どんだけだよ。
にしても、ここのレベルとかおかしくないか?推奨人数3人以上とかかな?処理しきれんぞ。
戦士じゃ体力切れ
魔法使いじゃ魔力切れ
相当バランスよく計算していかないと、辿り着けないよなぁ。
そんなにチート能力授かってんのかなぁ、他の指輪持ち。
今のところ、魔力が切れそうな感覚はない。そもそも魔力がどれくらいあるのかすら分かってないし。『生活魔法』だからか?有用性ハンパないな。ありがとう。
さっきから、湧いてくるのは、コブリンさん。
緑色の臭い個体。血走った目から、モンスター認定。
木の枝とか、棍棒っぽいのを振りかぶりながら向かってくる。
言葉も通じない。体が臭い。風向きによっては臭うくらいに。
《エアーカーテン》で遮断てきるけど、索敵代わりになるかと使ってない。
討伐部位なんかは、回収が大変だからムシ。流石に放置はマズいので、《火葬》処理。臭いし。時間がかかってしょうがない。
小腹と水分補給して、早めにいっときますかね。
「『我が身を守り賜え』《石弾》(中)」
シュッ! ガンッ
お、当たりさえすれば、中でも十分そうだな。
連射ができて捗るぞ。
「ひとつ!次」
振り向いて「《石弾》《石弾》(中)」
「ふたつ!みっつ!」
右に左に撃ち分ける。
「見える、見えるぞ!俺にも敵が見える!櫓の上だから丸見えだ!」
「《石弾》《石弾》」
「よっつ!いつつ!」
「《石弾》《石弾》《石弾》《石弾》《石弾》《石弾》《石弾》《石弾》(すべて中)」
「むっつ、…………ええぃ、面倒だ……」
13か、1つ多かったな。
3分も経ってません。
「ば、化け物か」
自分で言っといた。
「ふ~」
やっぱ心にゆとりを持つって大事。
さっきみたいにドッと疲れがこない。
ハシゴを出して櫓を降り、《解放》で櫓を土に還す。
《火葬》処理も忘れずに。
「よし、急ぐか」《身体強化》からの、ダッシュ!
「邪魔を……、するな~~!《突風》」
と、テンション高く走り抜ける。
ほどなくして、岩山にポッカリと穴の空いた祠っぽいものが現れた。
間違いない『導きの祠』だ。穴の上に看板? 大きめの表札プレート? に書いてある。
親切設計だ。ありがとう。
これで騙されたら、自分が愚かだったと反省しよう。他にそれらしいものもなさそうだし。
信じて中を覗いてみる。
「えっ、結構深い?」
祠というより、洞窟なのか? イメージと違った。暗くて奥まで目通せない。
探検するの? 地下深く?
え~~。想定外だ。
ちょっと入ってみて、深そうなら日を改めるかな。
よし。《ランタン設置》
なんかなー。暗いとこに入ってくってサスペンスだわぁ。
できればとっとと終わらせたいんだけどな。
ゆっくり歩きながらランタンを設置し、明かりを確保していく。静かだ。足音が余計に耳に残る。
体育館くらいの広さはあるのかな。モンスターはいないようだ。
壁際に下へ続く階段を発見。
「マジか。甘くなかったな」
今日はここまでにしよう。疲れたわ。
ということで、簡易砦作っちゃいますかね。
外でまたゴブリンさん達に襲われるのも嫌だし、ここのが安全そうだしな。暗いけど。
おらぁ、両手を地面に付いて
《落とし穴》……
《土壁》……
《土柱》……
ふぅ。慣れたもんだ。
両手を地面に付けた方が〈土〉の形成が速い。2倍とまではいかないが、違いは分かる。違いの分かる男だからな。グッジョブ!
『旅人の小屋』『旅人の生活小屋』を出してと、
《階段作成》
完成でーす。
水のないお堀と外壁に護られたちょっとした高台に建つ平屋。階段を回収しちゃえば簡単には出入りできない安心設計。
いい仕事してますな。
「風呂だな」
………
ちゃぽ~~~ん
「ふぃ~~。いい湯だ」
明日も頑張るぞ!
読んでいただきまして、ありがとうございます。
この作品は、
『どこだか世界で、無理せずいこう』シリーズ
の2部に当たります。
1部の
『どこだかよく分からない世界で、無理せず生きていこうと思う今日この頃てす。』もよろしくお願いします。
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