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魔導少年ユウト  作者: むげんゆう
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第10話 朝の光 ⑦

「うふふふ……」


「ふははは……」


 マーダルもサナもほほえましく笑っていた。


「ちっ。そりゃあそうか。たった一晩活躍しただけでこっちには来ねぇよな、やっぱり」


 その答えを二人と一羽ともわかっていたようだったが、クーラリオは本当にさびしそうだった。


「どうしたクーラリオ。さびしいのか?」


「マーダル様、残るわけにはいかないことくらいわかってますよ!」


「そっか……。クーラリオもさびしいって思ってくれていたんだ……」


「ば、ばっきゃろ!そんなわけねぇだろ!でもなぁ、お前をそのまんまにしておくのも不安なんだよ。どうせオレさまが見てないと、すぐにグシグシ泣き出しちまうだろ」


 翼をばたつかせてけんめいに否定してみるクーラリオだった。けれど飛びまわりながら少し考えたらしく、勇斗の頭にちょこんと着地してからつげた。


「よっし、お前の帽子につけたおいたマジカルレリーフ、そのまんま持っとけ!」


「い、いいの?!」


「心配すんな!どうせなおったって言っても魔力と気合がなきゃ地上界じゃつかえないんだ。ユウトががんばったのが、夢なんかじゃないって証拠に持っとけ!」


「ありがとうクーラリオ!」


 頭の上のクーラリオをつかまえると、うれしさとさびしさで思いきりぎゅっと抱きしめてしまう勇斗。


「勇斗、約束しろ」


「うん!」


「いいな、これからは簡単に泣き出すんじゃないぞ。男の涙は簡単に流すもんじゃない。大事に、本当に大事な時に流すために取っておくんだ。いいな!」


「う、うん。わかったよ……。簡単に、簡単に泣いたりしないから……」


 思わずクーラリオの羽毛を涙でぬらしてしまう勇斗。


「言ってるそばからグシグシしやがって……。こいつめ、いきなり約束やぶってるんじゃねぇよ!」


「だって、本当に泣かなきゃいけないのって、こんな時だよ……」


「ばっきゃろ……。言ってくれるじゃねぇか」


 すると今度は精霊たち、フーガが、ミズチが、エンジュが、そしてアダマントが姿を現した。それぞれ口に小さなガラス玉のような物をくわえて。


「え?これをボクにくれるの?」


 その声にこたえるようにガラス玉はゆっくりと宙を舞い、クーラリオからもらったレリーフに飛び込む。するとレリーフには、白、青、赤、黄の四色のガラスの装飾が加えられたのだった。


「おいユウト、これがオレ様たちの気持ちだ。お前がへこたれそうになっても、必ず力になってやるってな」


「ありがとう……。みんな本当にありがとう!」


 そんな勇斗とクーラリオと精霊たちの姿を、目を細めていとしげに見ていたマーダルとサナだったが、だんだんと強くなる朝日の光を見て、ゆっくりと口を開いた。


「なごり惜しいようじゃが、もうそろそろ時間じゃ」


「わかりました」


 勇斗がクーラリオを抱いていた手を離すと、クーラリオはゆっくりとマーダルの肩に。すると星空のような空間の扉が開かれ、青白い光があふれてきた。とうとう魔導界への道が開いたのだ。


「本当にありがとう、ユウトくん!あなたは本当に立派な事をしたのよ。地上の人たちは誰も知らない事だけど、私たちはしっかり覚えているわ」


「はい!ありがとうございます!」


 勇斗はもう一度ほめてくれたサナに元気いっぱいに手を振って返事する。


「いいかな、ユウトくん。涙というのはのう、自分自身の心をきれいにみがきあげたからこそながれてくるものなのじゃよ。もちろん泣いてばかりで何もできなくなってしまうのはいけないことじゃが、何かに心を動かされて涙をながす、そのせん細さと優しさをなくさないでおくれ」


「はい!わかりました!」


 泣虫はいけないと怒られてばかりだった勇斗は、はじめて正面からほめてくれたマーダルにしっかりと答えた。


「じゃあなユウト!お前は自分をもっともっと信じろ!お前がその気になったらできないことなんてなんにもねえんだからな!」


「うん!」


「今度会うことがあったら、その時はビシッとシャキッとした男になってろよ!いいな、約束だぞ!」


「クーラリオ、約束するよ!」


 力強くうなづきあう勇斗とクーラリオ。


「じゃあな、ユウト!」


「じゃあね、マーダルおじいさん!サナエお姉さん!フーガ!ミズチ!エンジュ!アダマント!そしてクーラリオ!ボク、しっかりがんばるよ!」


 扉の奥からあふれてきた光はトンネルのようになって、みんなは吸い込まれるように消えていった。勇斗は本当にみんなが見えなくなってしまうまで、力いっぱい手を振り続けた。




「本当に消えちゃった……」


 光のトンネルは扉といっしょに霧の中にとけこむように消えた。勇斗はあたりを調べてみたが何も残っていない。やはり魔導師と精霊たちは影も形も残さず消えてしまっていた。


「でも、夢なんかじゃないんだね。本当に……」


 勇斗が手にしていた帽子には、にぶい銀色に光っているマジカルレリーフが納まっていた。それを何度もさすりながら確かめる。


「ふわぁぁ……。何だか眠たくなってきちゃった。ボクもちゃんと寝よう……」


 眠たげな目をこすりこすり、キャンプ場にもどる。そういえば結構距離があったんだよなぁと思い出したが、頭の半分は先に眠ってしまっていて、あまり時間を感じなくなっていた。


 キャンプ場にたどりついた勇斗は、いそいそと自分のテントに戻って、タオルケットにくるまってコロンと転がった。


「おやすみなさ……」


 おやすみなさいも言い終わらないうちに、勇斗は底なしの眠りの沼に、どっぷりとしずみこんでしまった。

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