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魔導少年ユウト  作者: むげんゆう
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第10話 朝の光 ⑤

 ユウトはとりあえず、口をだらしなくぽかんと開けて、大の字になってねころがっていた鉄也を背中におぶる。


 ユウトより頭半分ほど背が高く、がっしりした体つきの鉄也だったが、あれだけのきびしくてつらい試練を乗り越えてきた今のユウトには、鉄也の少しだけ大きいだけの体なんて、ちっとも重たく感じられなかった。


「ねえ、ユウトくん。あなたは今夜ものすごくがんばったのよ。だから体は必ず疲れ切っているはずよ。私たちが手伝わなくて大丈夫なの?」


「大丈夫です。ちゃんとボクが連れて帰ります」


 ユウトはサナに笑顔を見せて体をしゃんとはって見せると、テントの場所まで鉄也をおぶったまま駆け足で運んだ。まるで吹き抜ける風のように。


 マーダルからもらった魔法の力はとっくになくなっているし、風の精霊フーガの力も今はかりていない。でもユウトの体は風のように軽く速く、あっという間にキャンプ場にたどりついてテントに降ろしてくると、これまたすぐに舞い戻ってきた。


「おじいちゃん、あれって……」


「うむうむ。あれは風足の魔法じゃな。どうやらユウトくんは自分でも気がつかないうちに、本物の魔法の力に目覚めたようじゃ」


 ほかの二人を運びつづけるユウトだったが、自分が魔法の力を使っている自覚なんてこれっぽっちもなかった。


 めまぐるしく景色は変わっているのだが、ついさっきまで空をびゅんびゅん飛びまわっていた事に体が慣れてしまっていたのだろう。何も不思議な事だと感じられなくなっていた。


 そう、とにかくみんなが起きてしまう前に、このかわいそうな三人組が朝、目を覚ましたとき恥をかかなくてすむように、テントに運んでおかなければいけないという気持ちだけで体が動いていたのだ。


 やがて朝の日差しがキャンプ場をやんわりと、だかジリジリと力強く照らし出そうとする頃に、ユウトは三人を運び終えたのだ。そう、これで全部が元通りになったのだ。


 あとはみんなが起きるのを待つこと、そして、今夜出会ったみんなとのお別れが待っていた。




「お別れの前に、ちゃんとユウトくんの服を元通りにしておかねばならんな」


「だったら大丈夫です!服を元に戻す魔法は……」


 自信満々に呪文を唱えようとしたユウトだったが、そんなユウトの頭の上にクーラリオがやれやれと着地した。


「おい、帽子をよく見ろ。帽子についているマジカルレリーフが動かなきゃ着替えはできねぇぞ」


 その時、はじめてユウトは帽子につけていたレリーフが壊れていた事に気がついた。


「あ!わわっ!レ、レリーフが!」


 顔をまっさおにして今にも泣き出しそうになってしまうユウト。ゲオルギィとの激しい戦いと、クラヤミの中で攻撃にさらされつづけていたレリーフは大きなダメージを受けていて、とうとう大きなヒビが入って壊れてしまっていたのだ。


「せっかくクーラリオからもらった物だったのに……」


 がっくりと肩を落としてしまうユウトを、ふわりとやわらかい光が包みこむ。するとボロボロのマジカルスーツは元の勇斗の服に戻り、ボロボロになっていた帽子も、そしてレリーフも元通りに。


「はい、これでいいでしょ?服装がボロボロのまんまだと、気分までめいっちゃうからね」


 ユウトの服装はサナの魔法であっという間に元通りに。


 服はクリーニング屋さんに出した後みたいにパリっとしていたし、帽子もお父さんからもらった時と同じくらいにきれいにピカピカに。ついでにマジカルレリーフももらった時のようにみがかれた後のようにピカピカに光っていた。


「ありがとうございます、サナお姉さん」


「いいのよ。これくらいはお安い御用よ」


 こうして準備が整うと魔導界への扉をサナが呼び出す。その扉は見えないくらいに透明な空間の壁。その奥に広がっていたのは夜空の星のように小さな光がたくさん流れている空間だった。


 この空間の先は、違う世界へ本当につながっている通路だということが、見ただけで理解できてしまう。


「それでは、わしらはこれでお別れじゃ……」


 勇斗は、ぐしぐしと目を腕でこすりこすりしてしまう。


「マーダルおじいさん、サナさん、フーガ、ミズチ、エンジュ、アダマント、そしてクーラリオ……。本当に、本当にありがとうございました!」


 声を少し上ずらせながら、勇斗は深々と頭を下げてお礼を言った。


「これこれ、礼を言うのはこちらの方じゃよ。君がいなければ、もっともっと大変な事になっておったのじゃからのう」


「そうよ、心からお礼を言わせてもらうわ」


 やさしい言葉をかけてくれる二人。精霊たちは、くるくると勇斗のまわりを回って感謝の気持ちを伝えてくれた。そしてクーラリオはといえば、目をうるませているユウトに、またお説教をしはじめる。

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