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魔導少年ユウト  作者: むげんゆう
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第10話 朝の光 ④

 マーダルが大きく杖をふりかざすと、一瞬にして全員が山頂からキャンプ場にまいもどっていた。


山頂にはすでに朝日が差していたが、山かげのこの場所にはまだ日は差さず暗いまま。


「ふむ、これなら大丈夫じゃろう」


 マーダルがガラスのうつわのフタを開けてかかげると、中からたっぷりと霧があふれ出す。


「霧は太陽の光をやわらげる水の幕じゃ。そして空気よりもゆるやかに命を運ぶ事もできる」


 ポタージュスープのように白くて重たい霧が、キャンプ場をゆったりとつつみこんだ。それを見計らって少しずつ命の光を解き放つマーダル。命の光たちはうつわから飛び出すと、まようことなく自分たちの元の体の中にとびこんでいく。


 テントをのぞきこんでみると、カチコチに凍っていたみんなの体は、光が飛び込んだその瞬間に元のあたたかみを取りもどして元に戻っていく。そして、そのまま気持ちよさそうに、すやすやと寝息を立てて眠りについたのだった。


「よかった……。みんな元に戻った!」


「まだ一時間くらいは眠ったままじゃよ。凍りついてしまった体には、すぐに目を覚ませるほどの元気はないはずじゃからのう」


 ほっと胸をなでおろすユウトだったが、ふとあることに気がついてあわてはじめる。


「あれ?あれれ?!」


「ユウトくん、どうしたの?」


 あわててだれかを探しはじめるユウトにおどろいてたずねるサナに、ユウトは涙目になりながらこたえた。


「あと三人、あと三人いないんです!」


「ええ!?本当なの?」


 二人はマーダルにたずねたが、うつわには命の光はもう残っていなかった。


「変じゃのう。命の光は全て元の体に戻ったし、ここから他の場所にとんでいった光もなかったはずじゃが?」


 首をかしげるマーダル。サナも思い当たりがないわとお手上げだった。


「も、もしかして、肝だめしをしたお堂の方にいるのかも!」


 ユウトに案内され、全員でその肝だめしをしたお堂の方に向う。


「いるとしたら、ボクが一人で行く事になって別れたこの辺りだと思うんだけど……」


 一人で行って来いと突き放された、立て札のあたりからユウトは探しはじめたが、なかなか三人組は見つからない。


「おいユウト、お前が探していたのはコイツらか?」


 手分けして探していると、空を飛んでいたクーラリオが三人組を見つけてくれた。


「よかった!三人とも巻きこまれなかったんだ!」


 でも飛び上がって三人の無事をよろこんでいるのはユウトだけ。


「あっちゃあ……」


 サナは道ばたに転がっていた三人の様子を見て、カリカリとほほを軽くかく。マーダルもどんな顔をしていいのか困った様子で、クーラリオはあきれかえって、さげずむ目で見ていた。


 無理もない。道ばたに転がっていた三人組は仲良くならんで、おもらししたまま気絶していたからだ。


「ふむぅ。ここは確か、ワシが地上界に最初に出てきた場所だったのう」


 マーダルは腕を組んで小首をかしげながら、その時のことを思い出していた。


「あの時、ワシはゲオルギィのくりだしたヘビの罠にまんまと引っかかってしもうて、手痛いダメージを受けてしもうた。何とか地上界に出る事はできたのじゃが、出てきた時にヘビどもを、誰もおらんと思ってここにうち捨てたからのう。大方その時にでくわしたんじゃろうて。いくら事故じゃったとはいえ、あんな夜中の山道に子供たちがこんなところにいるとは思わなんだ」


 ばつが悪そうしほほを軽くかくマーダル。このしぐさはどうやらマーダルの一族のくせらしい。


「マーダル様、そんなことはありませんよ。ユウトの話ですと、コイツらは日頃から悪さばかりしていたようですから。日頃の行いが悪かったから、バチが当たったんですよ、バチが」


 この三人組がユウトをいじきたない罠にハメて、その様子をながめて楽しんでいた事をしっていたクーラリオは怒り心頭。そんな機能もないはずなのに、顔からお湯がふっとうしたヤカンのように、プンスカと蒸気を出していた。


「バチが当たったってばかりとは言えないわよ、クーラリオ」


「お嬢様、と、言いますと?」


 サナはとても冷静にこの様子を分析しているようだった。


「こんなところでずっと気絶していたんだから、この子たちは命の光を取られずにすんだのよ。ちょうどクラヤミがあふれ出して流れ落ちようとした方角の正反対でもあったんだし、一番助かった可能性が高かったのはこの子たちだったんだから、運は強いとも言えるわ」


「なるほど」


 クーラリオは、ズボンをぐっしょりとぬらしたまま、みっともなく大の字になって寝ころがっている三人の頭の上を三周ほど飛んで見てみた。格好もなさけなければ、顔までなさけない。


「なあユウト、それにしてもこんなになさけないヤツらが、お前の事を弱虫あつかいしていたのか?」


「う、うん」


 ユウトの肩にとまったクーラリオは、はふぅと大きくため息をついて、心底あきれていた。


「こんなヤツら、このままここに放っておけよ。このまんま見つかって大勢の人たちに笑いものにされたほうが、必ずこいつらのためになるぞ」


 冷たく言い捨てるクーラリオに、ユウトはそれはいけないよと力強く首をふる。


「それはあんまりだよ。ちゃんとテントにかえしてあげなきゃいけないよ」


「なんでだ?」


「だって三人ともこのままにしてたら、絶対にカゼを引いちゃうし、それにみんなが目をさましたときに三人がいなくなっていたのがわかったら大さわぎになっちゃうよ」


 やれやれと、両翼をあげてみせるクーラリオ。


「まったくなぁ。いい加減身にしみたけどなぁ、お前ってやつは、本当にお人よしだよなぁ」

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