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魔導少年ユウト  作者: むげんゆう
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第8話 命の光 ①

「あれ、ここはどこだろう?」


 気が付くとユウトは、フワフワとどこかよくわからない場所をただよっていた。まだハッキリ眼が覚めていないせいか、目にうつるものも、耳に聞こえてくる音もぼんやりとしている。


「赤、青、黄色に緑、ほかにもたくさんいろんな光の玉がうかんでるけど」


 ここがどこなのかユウトにはよくわからなかった。けれども光の玉の一つ一つ、そのどれもが、どこかで見たことがある気がするものばかりだった。


「これがマーダルおじいさんの言っていた、命の光なんだ」


 ユウトはその時気がついた。自分もまた光の玉になっていたことに。


「そっか。ボクはゲオルギィさんに負けて、命の光を抜かれちゃったんだ」


 負けてくやしいと思う気もわいてこない。ユウトはぼんやりとまわりの光の球といっしょにフワフワとただよっていた。このまま海で見たクラゲさんみたいに泳いでいるのもいいかもしれないなどと思いながら。




「ちくしょう、ちくしょう!」


「やれやれだなガラクタ人形。だまっておとなしく、この歴史的な儀式をながめていればよいものを」


「うわぁぁ……!」


 けとばされて山の斜面をごろごろと転がり落ちていくクーラリオ。そのまままっ黒な影の中に飲みこまれて見えなくなってしまった。


 ゲオルギィは祭壇の前に立つと、その前に置かれていた黒くて大きな棺おけのフタを開けた。冷たくまっ白い煙がゆっくりと流れ出す。


「息子よ、ようやくお前を目覚めさせる時が来たのだ」


 中から出てきたのは、ちょうどユウトと同じくらいの年頃の男の子。けれども顔はおしろいをぬったようにまっ白で、身動き一つしない。眠ったまま時間を止められているようだった。


「まずは体に、力強く暖かい温もりを」


 ユウトから抜き取ったマーダルの命の光が、祭壇のかがり火の中に祈りをこめて投げ入れた。祭壇の火が黄緑色に明るくかがやき、あたりを明るくつつむ。


「さあ、わが子の体に今、再びの温もりを」


 右手の指先で宙を切ると、祭壇の火から光がふわふわと飛び出して、その子の体に飛び込んだ。凍りついてカチカチの体がやわらかくなり、心臓の音がどくどくと力強く脈打ちはじめる。


 祭壇の火の色は普通のオレンジ色にもどっていた。どうやらユウトから抜き取られたマーダルの力は全て使われてしまったようだ。


「さすが我が師匠の命の光。年老いていようと、まだこれだけの力を持っているのはさすがた」


 やすらかな寝息をたてて眠っているゲオルギィの息子。けれども、いまだおき上がる様子はない。


「まだこの鼓動と呼吸は自分の意志によるものではない。一時的なものにすぎぬ」


 マーダルの命の光をさずかっていたユウトが、いつも以上に体を動かせたり、魔法の力を使うことができても、その力をずっと持ち続けることができないと言われたように、この力で蘇生したのも一時的なものなのだ。


「さて、これからが本番だ。狩り集めたこの命の光を……」


 水晶玉の中に閉じ込められていたのは、色とりどりのたくさんの小さな光の玉。これがこのキャンプ場にやってきたばかりに、ゲオルギィに抜き取られてしまった大勢の人たちの命の光なのだ。


「星々と月の光に、白んだ夜空のかすかな明かり。星と月と太陽の光がまぜあわされる時に儀式を行なえば、命の光は一つにとけあう」


 ゲオルギィはそのふところから、金属製のおもちゃのカギを取り出した。それは彼の息子が死んでしまったその最後の時まで大事に持っていた、その子の宝箱のカギだった。


「この箱の中の中身と、このカギには息子の想いが、命の色がしみついている。あとはこの色と同じ色に、これらの命の光をそめあげるのだ!」



 その時、地平線のはるか向こうからわき上がってきている朝日の力で、やんわりと夜空が白みはじめた。


 祭壇の火は赤く、星の光は黄色く、月の光は白く、空の光は青い。祭壇の火が、ゲオルギィの念にこたえて燃え立つ火の柱に変わる。


 その火が四本の石の柱より大きくなったところで、ゲオルギィは宝箱の中身を一つ一つ、祈りを込めて火の中に投げ入れた。


「息子の宝物の飛竜のウロコに、水晶貝のかいがら。どれもこれも、思いがこもった品ばかりだ」


 やがて火の柱がゆっくりとおちついて、もとの勢いに戻る。しかしその色はオレンジから青白いものに変わっていた。


「お、おおお……」


 ぼろぼろと大つぶの涙を流して顔をほころばせるゲオルギィ。


「これこそ、これこそ間違いなく我が息子の命の光!」


 それは今にも消えてしまいそうな、ほんのわずかな光。だがその色をゲオルギィは頭にきざみつけた。


「さあ、今こそ私の研究の成果を見せるときだ!」


 四本の柱のてっぺんに色分けされてふうじこめられていた命の光が、火の柱に飲み込まれていく。


「命の光よ、その色に分かれよ!」

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