第7話 ユウト対ゲオルギィ ⑦
この戦いはユウトにとっては命がけだったが、ゲオルギィにとってはまだまだ本気になりきれていない、本当に余興、遊びのようなもの。
だから。だからこそ思い出してしまう。
息子が生きていた時、自分は息子にどう接していただろうか?
生活を良くするために魔法の修行と研究にあけくれて、息子と遊んだりすることができなかった。いや、できたはずだったのに、遊んでやろうとしなかった。
自分の仕事、やるべきと思った事だけにうちこんでいるほうが楽だったからだ。たとえ妻を病気で失い、息子と二人だけになってしまったときもそれを変えなかった。変えられなかったのだ。
そして息子はさびしいのを忘れようと遊び相手をもとめて山深くに入っていき、そこであやまって命を落とす事になってしまったのだ。
(そう、息子を死なせるきっかけを作ったのはこの私なのだ!)
ゲオルギィが行なおうとしていたのはその罪ほろぼしだった。息子を再びめざめさせ、今度はさびしい想いをさせない。そんな親心だった。
「さらばだ、ユウトよ」
息子を抱え上げて、楽しませてあげるべきだったその両腕は、今まさに息子と年近い少年の命をうばおうとしていた。
夜空に向って放り投げられたユウト。その体にはわずかな力も残されておらず、だらりと力なく宙を舞う。それに向ってゲオルギィは、まっ赤に燃え上がった、しゃく熱の大きな岩石を発射した。
「ユウト、よけろぉ!」
だが、クーラリオのさけびもむなしく岩石はユウトを直撃。ユウトの体は、はげしい炎につつまれた。
「う、うわぁぁ……。ユ、ユウトぉ……」
ぼろぞうきんのようになったユウトの体は、祭壇の前にゴムボールのように叩きつけられた。体がはね上がった時、ユウトの体からキラキラ光る破片が飛び散る。
それは、精霊たちが契約の印としてユウトに与えたアクセサリーの破片。精霊たちは最後の力をふりしぼってユウトを守り、力つきてくだけてしまったのだ。
「最後の最後まで私に抵抗するとは。まったく見上げた精霊たちだ」
とびちった破片が、精霊たちの姿に戻る。フーガも、ミズチも、エンジュも、アダマントも、みんなみんなキズつきボロボロになり、身動き一つ取れなくなっていた。
「どれ、身動きも取れなくなったのであれば、儀式の役に立ってもらおう」
ユウトはうっすらと目をあけた。体中がバラバラになったような痛みが走り、首を動かして息をするのがやっとというありさま。そのかすんだ視界の向こうで、精霊たちが次々と儀式の塔に投げ込まれていく光景が目に飛び込んできた。
「や、やめろぉ……」
だが、ようやく声を出した時には、すべての精霊たちが、悲鳴とともにが塔に取り込まれてしまった後だった。ユウトの目から、くやし涙がこぼれおちる。
「ボクが迷っちゃったばっかりに、精霊さんたちが、精霊さんたちが……」
「後悔先立たずということだ。勉強になったな、ユウト」
ユウトの髪の毛をてっぺんからわしづかみにして持ち上げるゲオルギィ。
「君が敵である私の言葉に心を乱してしまったからこうなったのだ。敵の言う事に、いちいち耳を貸すのも考えものだぞ」
「……っ。やめろ、やめろ、やめろぉ!」
もうユウトは自由に指を動かす事もできない。ただ、何もできずにされるがまま。
「君もこれで終わりだ。君が分けてもらったマーダルの命の光をいただこう」
ユウトのほほから、きらりと光った涙がこぼれおちた瞬間、ゲオルギィの右うでがユウトの胸をつらぬいた。体にキズはなかったが、その手には他のものより何十倍も光り輝く光の玉がにぎられていた。
「これで準備は整った。ユウト、君はのこり少ない最後の命で、私の儀式が成功する様子を見届けるがいい」
手を離されたユウトの体は、糸の切れたあやつり人形のように、その場にばたりと倒れこんでしまった。




