第7話 ユウト対ゲオルギィ ④
はげしい戦いは何十分も続く。
押しているのはゲオルギィのほうで、ユウトはとにかくよけるか、バリアをはって防いでいるばかり。
ゲオルギィも時間を気にしているようだったが、もっと気にしていたのはユウトの方。なにせ日が昇ってしまえば、みんなの命の光が消えてしまうのだから、あせってしまうのも無理はない。
「もうやめてください!」
ユウトはたくさんの水を頭上にあつめておしかためる。それをするどくとがったヤリの形にすると、音よりも速い速度で投げつける。
「何をやめろというのだ!」
ゲオルギィは山肌をこぶしで殴りつけた。すると殴りつけた場所が噴火するようにもり上がり、その姿を恐ろしい竜のように作り変えた。
土の竜はユウトの投げた水のヤリを口で受け止めてそのまま飲み込んでしまう。それどころか、今度はユウトめがけて大きな口を開いておそいかかってきた。
「みんなから取り上げた命の光を使って、あなたがやろうとしていることです!」
ユウトはタクトを持った手に、思い切り力をこめる。火のブレスレットがまっ赤に光り輝き、タクトから巨大な火柱をふきださせた。
「それ!」
ふきだした火柱を、扇子のように広げたユウトは、その炎の扇子で土の竜の頭を叩く。
巨大な炎に焼かれた土の竜は、バラバラにくずれおちて元の土くれにもどってしまった。
「まだまだ!」
返す刀でユウトはその勢いのままゲオルギィに殴りかかる。
「私が行なおうとしている崇高な儀式が何なのか、それを知っていて止めようとしているのかね?」
ゲオルギィは振り下ろされた火柱を、両手を広げてしっかりと受け止めている。その手のひらには水の魔法がかかっているらしく、受け止めた手からじゅうじゅうと湯気がふきだしていた。
「あなたが何をしようとしているのか、ボクは知りません。でも、どんなに立派な事でも、たくさんの人の命を使ってやるようなことは間違っています。絶対に!」
「それはきれいごとだな!」
さらに力強く押さえつけたユウトの火柱を、ゲオルギィは乱暴に投げ返した。
「命の価値がどれも同じというのが間違いなのだ。まして使うのは下等な地上の人間のものだぞ?価値ある使い方をしてもらうことに感謝すべきぐらいなのだ」
「こ、この人、一体何を言っているの?」
信じられないようなゲオルギィの答えに、おどろきとまどってしまうユウト。
確かにTVや映画やマンガで、同じことを言うような悪人は大勢いたけれど、それは全てお話の中だけのこと。でも目の前のおじさんはそんな恐ろしい事を、しっかりとはっきり口にしていたのだ。そしてその事を何一つ間違っていないと信じて。
「考え事ができるとは。余裕があってよろしい!」
一瞬のスキをゲオルギィは見逃さなかった。目にも止まらぬスピードで飛び上がると、ユウトの真正面で姿を現す。
そしてユウトと目と目を合わせた直後に、あらん限りの力で、ユウトの胸を殴り飛ばした。
「!」
声も出せずにユウトはまっ逆さまに山のふもとに叩きつけられてしまった。とっさにガクをクッションにしないように体をひねったが、体は地面に激突。まるでバスケットボールのように二回、三回と地面をバウンドして斜面を転がる。
「けほっ!けほっ!」
胸の痛さにむせてしまうユウト。それでも、水のマフラーが守ってくれたからそれくらいのダメージですんだのだ。もし守ってくれなければ、ユウトのろっ骨はバラバラにくだけて、肺にささっていたかもしれないし、もっとひどければ、肺や心臓まではれつしていたかもしれない。そのくらい強烈な一撃だった。
けれどもユウトはふらふらとしながらも立ち上がった。うっすらと涙ぐんでしまっていたが、痛さで泣きくずれたりはしない。
「ま、負けるもんか」
ゆっくりと目を開いたユウト。だがその目に飛び込んできたのは、弓なりにしなったゲオルギィの丸太のような足。
とっさに両腕が反応して体をガードするが、よけることはできなかった。腕の骨がこなごなになってしまったような、はげしい痛みと同時に、ユウトの体はサッカーボールのようにはね上げられた。
「……っ!」
声も出ないほどの痛みが体をつきぬけた。するとその衝撃で背中に背負っていたはずのクーラリオが、体からはなれて宙に。ユウトの意識は今にも消えてしまいそうになっていたが、それでも夢中でクーラリオを両手で抱きとめた。
「背中が今度はおるすだぞ」
はね上げられた上空、ゲオルギィはそこに先回りしてユウトを待っていた。そして今度は両手を組んで、上から下にさかさまにユウトの背中めがけて乱暴にトス。
ユウトの体はバレーボールのように山頂にたたきつけられてしまう。体中で岩肌をガリガリと削りとり、まるで畑のようにたがやされながらユウトは転がると、祭壇の前でようやくその勢いが止まった。
「ふむ、私としたことが、自分の手で祭壇をこわすところであった。これはいかんな」
ゆっくりと着陸したゲオルギィは、余裕の様子でガラクタのように転がっているユウトに近づく。だが、ユウトはそれでも立ち上がった。




