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魔導少年ユウト  作者: むげんゆう
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第6話 土の精霊アダマント ④

「おい、バカ!バカやろう!」


 急降下してかけおりるクーラリオ。まわりの空気は焼けこげたように熱く、羽毛をジリジリと痛めつける。なんとかこらえながら焼けこげた石のまわりを飛びまわっていると、ゆっくりと力なく横たわっている影を見つけた。


「おい!ユウト?ユウトなのか!?」


「ク、クーラリオ……?やったよ。なんとかやったよ……」


 ボロボロになっていたユウトの両手には、グッタリとしている買い物カゴくらいの亀が。これが土の精霊アダマントの本当の姿だった。


「時間がかかったら、みんなも、このカメさんもあぶなくなってたから……、こんな方法しか思いつかなかったんだ……」


 けんめいに笑顔をつくって見せるユウトだったが、その笑顔もぎこちない。だらだらとあぶら汗が流れ落ち、顔はまっ青。なにより手も足もピクリとも動かせないようだった。


 爆発のいきおいではげしく地面に叩きつけられてしまったせいで、体や骨がめちゃくちゃになってしまったのだ。


「まったくお前ってやつはなぁ!こわがりで泣虫のくせに、いきなり人の言う事も聞かずにむちゃくちゃなことしやがって!」


 クーラリオはユウトのそばにおり立つと、体を光らせて治療の魔法を使う。ユウトの体から温かみが戻り、手足のふるえがゆっくりおさまっていく。


「クーラリオ……。そんなことしちゃ君が……」


「大ばかやろう!お前がくたばっちまったら、どうやって使命を果たすんだ?ほかのだれがみんなを助けるってんだ?」


 光に包まれたユウトの体はしっかりと元の元気な体にもどった。そして、クーラリオはその場に力なく置物のようにごろりと転がった。


「クーラリオ!クーラリオ!しっかり、しっかりして!」


「悪いな……ユウト、省エネモードも限界みたいだ」


 クーラリオの首から下がっていたネジまわしを背中につきさして、いっしょうけんめい必死にゼンマイをまきなおすユウト。だが、どれだけしっかりと巻きなおしてもガクの反応は弱くなっていくばかり。


「ユウト、もう胸を張っていいんだぞ……。普通の魔導士だって一晩じゃどうにもならないような四つの結界を一人で破ってみせたんだ。力を十分使いこなしているお前はもう、お子様でも即席でも初心者でもねぇ。正真正銘の立派な魔導師だぜ……」


「でも、でも……。それはクーラリオがいっぱいアドバイスして、しかってはげましてくれたから、無茶してケガまで助けてくれたからだよ!」


 ぼろぼろと涙をこぼしながらからくりじかけの体をゆするユウト。そんなユウトに、クーラリオはぎこちなくクチバシを動かしながら消えそうになりそうな声を出して続ける。


「でも、しっかり結果を出して見せたのはお前だろうが。だから、もうお前は一人で大丈夫だ……」


「いやだよ!だめだよ!」


「なーに、気にすんな……。オレは死ぬんじゃない。電池切れってやつだ。魔力をマーダル様に入れなおしてもらえるまで、おねんねしてしまうだけだ」


「だめだよ!一番大変なあのこわいおじさんが残っているんだよ。ボク一人じゃ何にもできないよぉ!」


「一人だって?何を言っているんだユウト。お前、本当にそう思っているのか?」


「ふ、ふぇ?」


 するとユウトが身に着けていた、精霊たちから受け取った羽飾りが、マフラーが、ブレスレットが、次々と力強く光りはじめた。


「そ、そうか!フーガにミズチにエンジュ。君たちがいたんだった」


「それだけじゃないみたいだぜ、ユウト」


 すると今度はそばにいたアダマントが光のつぶに変わってユウトの両足に。ユウトの左右の足に素焼きの土器のような輪っかが。


「あ、アダマントも力をかしてくれるんだ」


 ユウトの足に土のアミュレットが装着されていた。これでユウトはこの山のすべての精霊と契約を結んだ事になったのだ。


「ほれ見ろ。マーダル様の無敵の魔力を授かっている上に、四つの精霊まで味方につけたんだぞ。負けるわけがねえじゃないか」


「う、うん!大丈夫だよ。ボクは一人じゃないから、絶対に負けないよ!」


 ぼろぼろと泣きながら約束するユウトに、クーラリオはどうやら苦笑いしているらしかった。


「泣虫はついに治らなかったか……。まあいい。弱虫は卒業できたみてぇだから、今はそれでよしとするか……」


「ご、ごめんね。泣虫もがんばって卒業するから」


 しかしそんなユウトに、クーラリオはゆっくりぎこちなく首を振ってこたえた。


「無理しなくていいんだぞ。泣虫ってやつは人間、大人になったら卒業できるけどな、弱虫は大人になったってそう簡単に卒業できねぇもんだ。それより、誰かのために泣いてやれるその心を忘れるんじゃねえぞ」


「う、うん」


 ユウトがうなずくのを見届けたクーラリオは、ゆっくりとまぶたを閉じた。


「じゃあオレはここでおねんねさせてもらうぞ。オレが起きたときには、ユウトがゲオルギィのやつをコテンパンにやっつけて、みんなを元に戻してから笑顔でひろいに来てくれ」


 けれどもユウトはやさしく首を振る。


「クーラリオをここに置いて行くわけにはいかないよ。だってクーラリオはあの赤い服のおじさんを捕まえるためにここに来たんでしょ?だったら、最後までついて来なきゃだめだよ」


「バカ……。今のオレなんてジャマになるだけだろうが……」


「そんなことないよ。君がそばにいてくれるだけで、ボクはがんばれるんだから」


 ユウトは指先をくるくるとさせて、たすきのような長い布を作り出した。そしてそのままグッタリとしているクーラリオを背中に背負ってしっかりと結びつける。


「だからクーラリオはボクの背中で寝ていて。目を覚ましたときには、きっとハッピーエンドが待っているよ」


「ああ、そいつは期待……、させて……、もらう……ぜ」


 そのままクーラリオはユウトの背中で動かなくなってしまった。死んでしまったわけではないが、ふかいふかい眠りの底におちたのだ。


 ユウトはこぶしをグっと固めると、そのままふわりと夜空にまいあがった。


「行くよみんな!あのおじさんを止めて、みんなの命を取りかえすんだ!」


 いっぱいの星空に、イナズマのような流星が一筋、山頂に向って飛んでいった。

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