第6話 土の精霊アダマント ③
「ほう、こわっぱめ。もう土の結界にまで来ていようとはな」
山頂には、大きな石をいくつも積み上げて作られた柱が四本建てられ、その中をいろいろな色の火の玉が泳ぎまわっていた。
そして火の玉が泳いでいる真ん中には、ぴかぴかにみがきあげられた大理石の棺が。これが息子の棺なのだろうか。
「こわっぱ、一時的に力を授けられた即席にしては本当によくやったと言いたいが……。このまま来られては儀式のジャマになる」
そうつぶやくと、ゲオルギィは水晶玉のむこうに映っているアダマントに念を送る。
「わがしもべ、アダマントよ。その自慢の咆哮を、私がしめした方向に向って撃ち続けるのだ!」
「あれ?」
「どうした?」
音量をゼロにしているテレビがついているのに気がつくような感覚におそわれたユウト。
「カメさんの様子がおかしいよ。急にボクから興味をなくしちゃったみたいなんだ」
「そいつは好都合じゃねえか!今のうちに集中的にどこかを狙うんだ!」
その時アダマントは、おもいきり息を吸い込んで口から大砲を発射した。岩石がとんでいった方向を見たとき、ユウトの顔はまっ青になってしまう。
「どうしたユウト?!」
「あ、あっちはキャンプ場だよ!」
「な、なんだって!?」
そう。アダマントが攻撃の矛先をむけたのは、みんなが眠りについているキャンプ場だったのだ。
「げ、ゲオルギィ!あいつ、アダマントになんて恐ろしいことを教えやがった!」
クーラリオは機械じかけのまぶたを、シャカシャカとものすごい速度でまたたかせる。
「カチンコチンに凍らされた体が粉々にされちまったら、命の光を取り返したって、もう元には戻れなくなっちまうぞ!」
もし攻撃がテントに命中して、みんなの体が粉々にくだけてしまったとしたら?たとえ無事ゲオルギィから命の光を取り返したとしても、帰る場所がなくなった命の光は、そのまま天に召されてしまう。
「や、やめろぉ!」
岩石に負けない速さで空気の刃を打ち出すユウト。橋のような放物線を描いて飛んでいた岩石になんとか命中させる事に成功。なんとか方向を変えて直撃を止めることができたのだが、アダマントは同じ場所をもう一度狙っているようだった。
「間違いない。ゲオルギィのやつ、アダマントにキャンプ場を狙わせているぞ」
「そんな……、ひどいよ!ひどすぎるよ!」
そんな二人のあわてぶりをあざわらうように第二弾を発射するアダマント。その目の前に立ちふさがったユウトは大きな火の玉を正面から叩きつける。
しかし粉々にすることはできず、アダマントが狙っていた方向に飛ばないように方向を変えさせるのがやっとのこと。逆にぶつかった時の爆発が強すぎて、ユウトのほうが弾き飛ばされてしまう。
「アダマントは土の精霊だからな。弾丸の材料は取り放題。だからどんどん撃つことができる。でもこっちには全部どうにかする時間も力もねぇ」
クーラリオはアダマントを分析し、対抗策を考える。けれどもユウトは何かを思い定めると、いきなりつぶやいた。
「こうなったら、こうするしか……ない」
「おい、ユウト!何をする気だ?!」
何かを思いついたらしいユウトは風をまいて飛び上がった。
「クーラリオ、ごめんね!無茶しすぎるなって言ってくれたけど、他に方法が思いつかないんだ!」
ユウトはアダマントの正面に立ちふさがる。しかしアダマントは何事もないように口から大砲を打ち出す体勢に入った。
それを見たユウトはひとみをとじて、こぶしをぐっとかため両の腕をバツの字に組む。組むことでふれあった火のブレスレットから炎がふきあがり、ユウトの体をつつみこんでいく。
「火の魔法ホムル……。お願い!ボクにみんなを守る力を!」
火の力を使って体を火のボールのように変えたユウトは、アダマントの発射直前に空気を取り入れようと口を開いたアダマントの中に飛び込んだ。
「君は火の力に弱いんだろ?!だったら、こうやって!」
ユウトはホムルの魔法を唱えつづける。体のまわりの炎は、より勢いを増してまっ暗なアダマントの体の中を照らし出す。
その熱が耐えられないほど強くなったのだろう。アダマントは口の中に入ってきた火の玉をはき出そうと強引に弾丸を吐き出そうとする。
そしてアダマントとユウトの力が、口の中ではげしく衝突した。
「ユ、ユウトォ!」
目もくらむような光が辺りをつつみこんで、いっしゅんだけ辺りがま昼のように明るくなる。
そして光から夜の闇に帰った時、それまで堂々とのし歩いていた巨大な亀の怪獣は、前半分がきれいにそっくり消し飛び、動かない小山にもどってその場に動かなくなっていた。




