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魔導少年ユウト  作者: むげんゆう
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第5話 火の精霊エンジュ ①

「ほう。風に続いて水までも突破されたか。ずいぶんと早いな……」


 山頂へと続く一本のけわしい山道を、赤黒いローブに身をつつんだ男が、一人静かにのぼっている。


 よくよく見てみると、男は何か大きいものを引きずっていた。それは人がすっぽりと入るくらい大きな箱。まるで棺おけのような、いや、それは棺おけそのものだった。


「残る火と土がそう簡単に破られるとは思えんが、まだこちらにも準備というものがある」


 ローブの中からかいま見える、その男の顔はゲオルギィ。その瞳がぶきみにまっ赤に光りかがやく。


 ゲオルギィはふところからあわい緑色の宝石ベリドットをとりだすと、ふぅっと息をふきかけ、宝石を風にまかせてときはなった。宝石はレーザービームのように、一直線にまっすぐ、火の結界のある場所に向って飛んでいった。


「火の結界の精霊に知恵をさずけよう。身のほどしらずのこわっぱとガラクタ人形よ、火中の栗を拾う恐ろしさ、その身でしっかりと味わうがよいわ……」




「よし、この辺りだ」


 緑色のかぼそい光がとどいた直後に、ユウトとクーラリオは火の結界の場所にたどりついた。


「ここが火の結界の場所……」


 ユウトたちが降り立ったのは、みんなが寝とまりしていたテントの近くの広場。広さは学校のグラウンドの半分ほどだろうか。その真ん中に、燃え残ってまっ黒になっていた大きな角材がゴロゴロとむぞうさに転がっている。


「なるほど。ここは地上の人間たちが大がかりなたき火をする場所だったんだな」


「キャンプファイヤーっていうんだよ。キャンプをするためにやってきた人たちは、ここで大きなたき火をかこんで、ダンスしたり歌ったりして楽しむんだよ。今日もボクたちの町内会のみんなでやったんだ」


 そこでユウトは言葉につまってしまう。ほんのついさっきの出来事だったはずなのに、もうずいぶん昔の出来事だったように思えてしまっていた事に気が付いてしまう。


 肝だめしのすぐ後で、鉄也たちにおどされるすこし前にキャンプファイヤーをやったのだ。


 だからその時は、すなおにキャンプファイヤーを楽しむ事ができていた。みんな、炎に負けないくらい楽しそうな笑顔が灯っていたのをありありと思い出す。でも、そのみんなは今……。


 ユウトの顔がくもって、思わず目に涙がこみあげてきそうになった。ユウトの様子を見て取ったクーラリオは、ユウトの肩にやれやれと飛び乗った。


「ユウト、そのキャンプなんちゃらってのを、まだ思い出にするんじゃねぇ。思い出ってのはな、何もかも終わってから、しみじみとなつかしむものなんだからな」


「う、うん」


「いいか、今夜の事を思い出にするのは、朝日が昇るのを見届けてからだぞ」


 広げた右の翼で、ユウトの頭を軽くなでるクーラリオ。


「もちろんその時は、ゲオルギィのヤツをふん捕まえて命の光を取りもどし、このまわりで凍らされてしまった連中を全員助けてって事だ。まちがってもこのままゲオルギィに負けてくたばっちまって、あの世で今夜の事を思い出にするなんてわけにはいかないだろう?」


「わかってるよ。だからみんなをとりかえさないといけないんだ」


 クーラリオに向けて決意をこめて首をうなずくと、ユウトは結界のあるというキャンプファイヤーの場所に一歩一歩と近づいていく。


 しかし、キャンプファイヤーを行なった場所は精霊の姿どころか火さえ燃えていない。あたり一面には水たまりができるほど水がまかれていて、煙も出ていなかったのだ。その様子を見て、ふぅっと一息ついて安心してしまうユウト。


「そっか。キャンプファイヤーが終わった後に、大人の人がバケツで水をかけて火を消しちゃってしまったんだ。だからもう燃えていないみたい」


「……」


「それに燃やすための木だってもうあんまり残っていないし。それに相手が火だったら、ボクは水の力だって味方にしているんだよ。何にもこわいことなんてないよ」


「本当にそうだといいんだがな……」


 たしかに残っていたのは水たまりの中でじっとりとぬれた、まっ黒な木の燃えのこりだけ。


「ほら、やっぱり火なんて残っていないよ。ほんの少し、ぽわぽわまっ白い灰の中に、こんな小さな種みたいのが残っているだけ……」


 ユウトがつまんで見せたまっ黒な種を見た瞬間、クーラリオは血相を変えてどなった。


「ユウト、そいつをすてろ!」


「え?!」


 だがおそかった。ユウトが手にした種から、まっ赤な炎が勢いよくふきだした。そのすさまじい勢いにクーラリオはふきとばされてしまう。


「うわぁ!」


「ユ、ユウトぉ!」


 ふき上がった炎は、まるで手のような形になってユウトをがっしりとにぎりしめてしまう。こうなってしまうとクーラリオもうかつに近づけない。


「しまった!」

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