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魔導少年ユウト  作者: むげんゆう
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第3話 風の精霊フーガ ③

 やっつけるという言葉にまっすぐに反応して、嫌がるユウト。だが、クーラリオはつきはなすようにつづけた。


「あの首輪をつけられた精霊は、自分の力で首輪をはずすことはできないんだ。絶対にだ。はずしてやるのなら、首輪をつけられた精霊を倒してしまわないとはずす事ができないようにできている。それがあの首輪のおそろしい力なんだ」


「だから、かわいそうでも何でも、とにかく首輪をつけられた精霊は倒すしかないんだ」


「わ、わかったよ。なるべく痛くしないようにして、あの精霊さんをしずかにさせるよ」


 ユウトは、心の奥の方から聞こえてくる誰かの声に耳をかたむける。それがだれの声なのかはよくわからなかったが、とにかくマーダルおじいさんからさずけられた力の使い方を教えてくれていることはわかった。


「それじゃあ、いくよ……。物を宙にうかせる魔法、フラム!」


 ユウトは手にしたタクトをかるくふると、その動きにあわせて足元の小石が、ゆっくりふわふわ浮き上がって、目の前をくるくる回りはじめた。


「こ、小石が……、浮かんできたよ!」


 ユウトの指図にあわせて、ダンスをおどりはじめる小石たち。わずかな動きと力加減に合わせて、ゆっくり動くものもいたり、逆にすばやく動いたりするものもいる。見ているだけでも心が楽しくなるような、小石たちのダンスパーティ。


「よしよし、いいぞいいぞ!あとはフーガにねらいをつけて、そいつをぶっぱなせ!」


 クーラリオの言葉に反応したユウトの心をうつすように、小石たちはピタリとダンスをやめた。そして一斉にスクラムを組むと、ユウトの指揮に従って頭上にゆっくり浮かび上がる。


「怖くなんかないぞ。怖くなんかないんだ!精霊さんなんか、怖くあるもんか!」


 ユウトはふるえだしそうな心を、大きな声でさけぶことでふるい立たせた。


「打ち出しの魔法、ターム!」


 ユウトが力一杯大きな声で呪文をさけびタクトを振ると、小石たちはパチンと音を立てて、鉄砲の弾のようにフーガに向かって飛んでいった。


 しかし魔法の力は持っていても、初心者のユウトにはまだまだうまく使いこなせない。狙ったつもりの小石のつぶては、ビュンビュン飛びまわるフーガのそばをかすめて通りこしていった。


「あ、あたらないよ!」


「もっとしっかり、相手をよく見て狙うんだ!あわてず急いで、正確にな!」


「う、うん!」


 今度はさっきよりも石を大きくし、数もふやす。何十個もの石つぶてがふわりと浮き上がり、ユウトの一振りで一斉に飛び出した。


「いっけぇ!ターム!」


「よっしゃあ!これならいけるぞ!」


 まるで夕立のようにフーガに向かう石つぶて。これだけの数と勢いなら、まずよけられないだろうと確信したクーラリオ。だがしかし。


「何だか変だよ。まっすぐ向かって行っているのに、途中でまがっちゃうんだ!」


「なんてこった。フーガも風の力で小石の弾をはね返しているんだ!」


 ユウトの打ち出した石つぶては、軽自動車くらいなら一撃で穴をあけてしまうような威力のはず。しかしフーガは風の力で強力なバリアを作り、ユウトの石つぶてを全て受け流してしまったのだ。


「ど、どうしよう……」


 攻撃をやめずに続けているが、やはりユウトの攻撃はフーガに届いていない。


「こりゃあ遠くからねらったってラチがあかねぇな。すきを見てふところに飛びこむしかないみたいだぞ」


「と、飛ぶの?!あ、あんなに高いところに?!」


 ついさっきまで風のように走ることだってできなかったのに、空なんて飛べるわけがないよと、ユウトはしりごみしてしまっていた。だが、クーラリオはユウトを力強く応援する。


「飛べる!」


 その言葉に迷いはない。


「ユウト、お前ならできる!できるんだ!」


「で、でも……」


 まだ不安そうなユウトに、しっかりと力強い言葉をぶつける。


「オレの言っている事を、ユウトに授けられたマーダル様の力を、何よりユウト、お前自身を信じろ!信じるんだ!」


「自分を、ボクを信じる……」


 ユウトはクーラリオの目をしっかり見つめると、がっしりにぎりかためた自分の両手を、自分の足を見た。グーパーを二、三回。足ぶみも二、三回。もう一度顔をパンパンとはたくと、かくごを決めて飛び出した。


「よ、よーし!飛ぶぞ、飛んでやるんだ!」


「おい、ユウト!どうするんだ?!」


「ボクは飛べるんだ!だから、勢いをつけていくんだ!」


 全速力で突っ走ったユウトは勢いにまかせて展望台のあるガケにむかって突っ走っていく。


「ユウト、魔法の力は思いの力だ!だから強く思えばスピードは上がる!」


 後を追いかけるガクの応援にユウトはさらにぐんぐんスピードを上げる。


「そのまま飛べ!飛ぶんだユウトぉ!」


「いっけぇぇ!フラァァム!」


 ユウトの体は星空の中に投げ出された。ついた勢いで今は飛んでいるのだが、その勢いも弱くなってきたとき、風向きが変わったのを感じ取った。


「や、やった……、ボク、飛んでいるよ!」


「よっしゃぁ!」

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