第七話「シングルピンク」
六話の時に書き忘れてましたがお時間有りましたらどうそお付き合いくださいますようよろしくお願いします!
ピンクアフロの相棒登場の第七話です!
朝のワイドショーでは汚職事件を起こした前総理大臣が倒れたことと群馬で起きた連続殺人事件のことを騒いでいた。
政治は同じようなことを繰り返してきているのでもう汚職がどうとか聞き飽きたが連続殺人事件などの凶悪犯罪は聞き飽きるほど起きないで欲しいと思いながら結の作った朝食のお粥を食べ終わってそれぞれリビングでくつろぐピンクアフロと美少女三人。
フルワンとフルツーの情操教育のためあちこち行楽に出掛けまくっていたピンクアフロ一行であるが心配していた監視の目もなく追っ手の気配も感じられなかった。
一正に依頼して片手間ではあるが調べてもらって企業の特定も進めていた。
馬場博士に関する報道は未だされていないので怪しい裏があるのは間違いないだろう。
馬場博士との研究の方向性が違う公に出来ない成果が必要な企業であることは想像出来るがフルワンとフルツーの話では撤退が決定し博士の容態が急変するまでは馬場博士と二人の扱いは悪いものではなかった様であるのでよくある悪の組織っぽくもない。
力加減や様々な能力はセーブさせているが時々片手で軽々と持ち上げてはいけないモノを持ち上げてしまったり一瞬でぐにゃりと曲がった道路標識を真っ直ぐに直してしまったりする少女達の捕獲はピンクアフロでもやりたくはないので見つかっていたとしても簡単に手出し出来ないのかもしれない。
だが何が起きてもあの沖縄の時のような苦労を上回ることはないだろう。
しかし・・・結との体育の個人授業の一日の平均回数が5回から4回に激減しているのは大問題であった。
シチュエーション的には結のメイド服のスカートで見えてないからセーフとかフルワンとフルツーを気にして必死に色々と耐える結の姿が見れたり朝起きると三人が自分にしがみついてくれてたりするのでいーっちゃいーのだが・・・。
ワイドショーでは今しきりに難病の息子の治療費の募金の訴える若い夫婦の姿を映していた。ピンクアフロはつまらんとばかりにチャンネルを替える。
チャンネルを替えた先ではボランティア活動をする小学生に密着した女性レポーターが小学生と一緒になって清掃活動したりする様子が映っていた・・・ニヤリと笑い灰色の目を輝かせるピンクアフロ。
「あの・・・兄様お仕事の依頼メールが届きましたけれど・・・」完全に良くないことを考えている顔だったのでためらいがちに結がピンクアフロに声を掛けた。
ピンクアフロが珍しく単独行動していた。
どんなときにも必ず結を連れて仕事に向かうピンクアフロだったがフルワンとフルツーも連れて四人でゾロゾロと向かうのは流石に不謹慎な場合もあると思い表向きは自重したピンクアフロだった。
表向きというのは他に目的があったのである。
裏のツテを使ってフルワンとフルツーの戸籍をでっちあげて学校に通わせようと思いついたピンクアフロがこれから行く場所に結を連れて行くのをある理由で避けたかったのだった。
一人で出掛けるのでホンダS660に乗りまずツテの川崎へやってきた。
結やフルワンとフルツーを連れてこなかった原因のひとつとなる怪しい風俗街のど真ん中のパーキングに車を停めて荷物の紙袋を持って歩きだす。
夕刻なのでもう既に怪しい賑わいを見せ始めた通りを抜けてとあるマンションへ着くとオートロックで部屋番号を入力した。
カメラ付きのインターホンなのでカメラに向かって愛想よくピースするピンクアフロ。
部屋の主はなんの応答もせずにただ黙ってオートロックを解除した。
エレベーターから降りてきて怪訝そうに見てくるこれからご出勤のオネーサンに「どーもーお店何処?」と軽口をたたき完全に無視されたりしながら目的の部屋へ向かった。
玄関のドアを空けた男は黙ってピンクアフロを迎え入れた。
その部屋のリビングはガラスショーケースがきれいに並べられ中にはフィギュアがきちんと整理されて飾られていてちゃんと360度見れるようになっている。
「あ、満氏そっち狭いからコッチね」男が別室に招き入れる。
男の名は東山 克彦と言い少し太ってはいるがストレートジーンズに可愛らしい美少女アニメキャラがプリントされた白のTシャツを爽やかに着こなしていて髪も短く清潔感があった。アニメキャラがプリントされていなければ好感度の高そうな残念な男だった。
別室には数台のパソコンが並んでいる他はソファとテーブルがあり促されてピンクアフロがソファに座る。
「マジで満氏ロリ二人追加したでござるかー?超絶羨ましい!」座るなり男が聞いてきた。
「うむ!マジである!克氏のコレクションも増えたのだろ?」ピンクアフロは向こうの部屋にと手で表現しながらニヤニヤ悪い顔をしていた。
「嫁は毎期ごと増える」キリッ。
克彦は元々千葉の魔術医師の家系の長男でお察しの通りアニメオタクである。
そんな克彦には魔術の才能が現れず一時は魔術医師協会の調査班に身をおいていたが今は調査班の外注のような形で報酬を得て様々な偽造証の発行をしたりするのを生業としていた。
ピンクアフロより歳は若く27歳で見た目は本当に好印象を受けるがピンクアフロと意気投合する立派な変態である。
しばらくは最近のアニメやお互いの近況を話しピンクアフロはスマホに写った善光寺や草津温泉、最近行った水族館やディズニーランドの写真を見せながら結やフルワンとフルツーの話しをした。
もちろんフルワンとフルツーが普通の人間ではないことや馬場博士のこともピンクアフロは話した。
「ほほー流石満氏!追っ手の目を誤魔化す建前で結たそと同じくらいの年格好に変えたのでござるな!相変わらずウラヤマチート能力ー!」建前の部分を強調する克彦。
「うむ!最高の素材は最高の状態で愛でねばな!」と悪びれもなく言い放つピンクアフロ。
「で、この二人の戸籍が欲しいと?」本題へ入る克彦に更に悪い顔をしながら指を三本たててピンクアフロが笑う。
「いいや結も入れて三人分だ」悪い顔。
「なんと!結たその分も?」片方の眉毛をあげて克彦が確認する。
「うむ!フルワンとフルツーの監視役をさせるためには致し方ない。もう一度ランドセルを背負う結を見たいとかはほんの些細なことであってあくまでもトラブル回避のためだ」説得力皆無の説明に克彦は突っ込みを入れずに目を輝かせた。
「なるほどなるほど結たそに嫁、妹、メイド属性に更に現役小学生を追加でござるか!これは胸熱ですな!」うんうんと感無量の克彦。
「しかももしもだ!学校でさらに美少女の友人を釣ってきたとしてその後の海水浴からの水着回でウハウハの展開だぞ!」とピンクアフロの妄想展開に「ナ、ナンダッテー!」状態の克彦。
この後さらに1時間ほど妄想パラダイスに居た2人だった。
克彦が言うには3日ほど時間をくれとのことだった。それだけ時間をくれれば戸籍の用意も学校の編入手続きもしておくとのことだったのでご満悦のピンクアフロは結達を連れてこれなかった最大の原因となる報酬の紙袋を「写真付きだぞ」とそっと手渡たした。
「ななな生でござるね?」
「14時間は経過しているがな。」目がキラーン。
蛇の道は蛇、邪の道は邪であった。
洗濯ものを干している時にも思っていたが今取り込んで畳んでいるとやはり3人分の下着がなくなっている気がする結だった。
克彦との交渉が終わってから依頼のあった田園調布の有名政治家の自宅へ。
相変わらず依頼内容は伏せられていたのだが相手はニュースなどで見る限り大病を患ってそうには見えなかったのでロクな依頼でないのはかも知れないと予想していた。
それでも本人の治療でない場合は先日の山吹の時のように本当に価値ある奇跡を起こすことが出来るので会って話をしてみなければ判らない。
ピンクアフロにとって自分の能力は自分のために使うものでしか無い。
報酬を得るための手段であり最愛の妹を守る手段であり新しく出来た妹たちを守っていくための手段でもある。
そして報酬を得るためとしてもやはり自分を殺してまでも奇跡を起こすつもりは無い。
満足いく奇跡の要求ならばやはり気分も良くなるがそうでない場合はやはり面白くないのである。
内容が伏せられるということは要求される奇跡を選ぶ権利はこちらには無いということで魔術医師協会の指示通りに働くしかないのである。
しかし権利がなくともピンクアフロは普通の魔術医師達が絶対にしない職場放棄を過去に数回したことがあり、今回もくだらない依頼だったら帰ってやろうと思っていた。
佐久間 宏。現在最大野党の代表であり祖父から続く政治家家系である。
譲り受けた地盤だけで成り上がったボンクラ政治家ではなく実力もあり肝も据わっていて昨年の与党交代劇がなければ総理大臣に間違いなく成っていたと言われていた。
近くのパーキングに車を停めて暗くなった住宅街を歩きピンクアフロが一件の白い3階建ての家のインターホンを押すと「お待ち下さい。」と女性の声がした。
玄関のドアを開けて出迎えに現れたのは佐久間 宏の娘の佐久間 涼子だった。
年齢は30歳で現在は父宏の秘書として手腕を振るっていてあと10年もすれば政治家として頭角を現すだろうと言われている。
リビングに招き入れ「お話に聞いていた通りユニークな髪型ですこと」とピンクアフロの容姿を揶揄しながら涼子自らお茶をピンクアフロに出す。
美人とは言えないが明確な意志が顔に現れていて魅力的な女性である。
涼子はピンクアフロを座らせたソファの正面ではなく上座にあたるソファに座ると静かな口調で話し始めた。
「父や私のことはご存知かしら?出来れば知らないで通してくださると助かるのですがいかがでしょう?」涼子がイキナリ話の冒頭で口外するなと匂わせたことにピンクアフロが信用してもらう気ゼロの口調で応えた。
「いやー私は政治にはとんと疎くてですねー衆議院何それ美味しいの?状態でしてはっはっはっはー」
「愚者を演じるお方には正直に話しておくべきかしらね」
軽薄に笑うピンクアフロを見透かすようにクスリと笑うと涼子は静かな口調のまま依頼について詳しく話した。
昨年大臣の女性問題から端を発して建設の完了した大橋に建設費を超える予算が流れていることで問題発覚からわずか4ヶ月で解散総選挙となった。
解散後、政権は交代し問題の責任をとって失脚した政治家も多い。
経緯はピンクアフロもニュースで見聞きしていたことではあるしここまでは魔術医師の自分が呼ばれたことに繋がらない。
「マスコミにも困っておりましてね。「報道の自由」の「自由」を履き違えている輩が多くて困っておりますわ。報道すべきでないことを報道されて報道して欲しいことを報道していただけないなんてね。報道してもらえない事実があるなら事実を変えてしまえばよろしいですし報道された事実も変えてしまおうということですわ」
「と言いますと?」それまで黙っていたピンクアフロが聞いた。
「女性問題のクズはそのままで構わないのですのよ。口の軽い馬鹿な女に手を出したのは自業自得ですわ。良い女を口説けない男にはこの先この国の舵取りなんて出来ないと思っております」一度言葉を切り手にしていた湯呑みのお茶を一口飲んで涼子は続けた。
「使途不明の明石海峡大橋に流れていた大金の責任はどうしても父とは別の男にとってもらいたいのですわ。前総理の仲西が昨日倒れたのはご存知でしょう?」
現在使途不明金の責任を追求されているのは前総理大臣の仲西 英夫であった。その仲西が倒れたのは今朝のニュースで見た気がするので知っているが・・・なるほど。仲西が居なくなれば責任の追求が佐久間 宏に及ぶのかと思い当たるピンクアフロ。
「あら?本当に鋭いお方なのね」涼子がピンクアフロの僅かな表情の変化を見てとって言った。
「いえいえ、なんの事やらです」ピンクアフロがとぼける。
「構いませんよ。初めにも言った通り愚者を演じる方には嘘は通じませんからね。お察しの通り今仲西に死なれる訳にはいかないですし明日にでも表に出ていただかないとこちらには不都合なのです。仲西は使途不明金の存在は知っていますがプロジェクトの意味を知りませんので退場していただくには筋書き通り一度全て背負っていただきませんとね?」
涼子の最後の「ね?」に権力者特有の威圧感を感じたピンクアフロだった。
マスコミに見つからないようにと深夜になってから港区にある仲西の入院先の病院にホロを降ろしたS660で向かった涼子とピンクアフロ。
深夜までの待機の時間も移動の道中でも涼子はピンクアフロを試すように仲西が何者かに狙撃されていることや現在の政界の勢力や過去の事件などを話してきたがどの話も相変わらず軽薄に返事をするピンクアフロに向かって病院に到着し車から降りる前に涼子が言った。
「爪を隠す鷹は味方にする主義だからね」と・・・。
真面目に答えていないピンクアフロだったがそれは自分が関わる必要のないことだと考えているからだった。狙撃されていようが殴打されていようが佐久間の失脚を望む勢力と共謀するマスコミが居ようが大金が必要な大義のある案件があろーが知ったことではないし関わりたくないのだった。
ICUの前には関係者数人がおり佐久間 宏もその中に居た。
涼子が父の佐久間にスッと近寄ると何やら耳打ちし一旦2人だけで場所を移した。
その間はいつもの変なモノを見る視線を心地よく感じながらニコニコしているピンクアフロ。流石に深夜の病院で軽薄に話しかけたりはしなかったが黙っていてもウザいピンクアフロ。
しばらくして戻ってきた佐久間と涼子から仲西の治療を頼まれたので報酬額は5000万円と告げ了解をとるとICUに入るピンクアフロ。
入って2、3分だろうか?心臓近くで止まっている銃弾を抜き取り傷を回復させてピンクアフロがICUを出てきた。
報酬を受け取るまで少し待っていたピンクアフロに報酬を持ってきたのは佐久間 宏だった。
「一先ず礼を言っておく。ありがとう。報酬だ」と現金の入ったカバンを手渡す。
「いえいえー毎度ー」と相変わらず軽薄に返答するピンクアフロに笑いを浮かべて佐久間が言った。
「涼子に気に入られた以上これからも縁があると私は思っている。愚者のカードが必要になった時はまた力を貸してくれ」
佐久間が涼子と同じ見透かすような目をしていた。
狙撃された事実を隠す側が居て狙撃する側が居て狙撃の事実を失くした自分。
いやいや巻き込まれてない巻き込まれてないぞーーーー!俺はエンジョイロリハーレム計画を実現するんだーーーー!
家に帰り着いた頃には明け方になっていた。
「兄様お帰りなさい。お腹空いていませんか?それともお休みになりますか?」結に出迎えられたピンクアフロは一睡も出来なかった様子の結が愛おしかった。
珍しく今日は悪い顔にはならずにピンクアフロは何か食べさせてくれと言った。
「はい」と嬉しそうにキッチンへと向かう結の後ろ姿を眺めるピンクアフロは水面下で進行中の悪巧みにちょいと悪い顔になっていた。
キッチンで夕飯に作ったロールキャベツを温め直したりフランスパンを切って焼いたりと一生懸命に支度する結はもう一度自分が小学校に通うは羽目になるとは夢にも思っていなかった。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
自己満足で楽しくやってる駄作でございますが続きを待ってくださる方がいらっしゃれば幸いです!