第三話「ご指名はピンク」
いやー書くのって難しいですね。
人の作品を読むと影響されやすいので読んで無いのがイケナイ気もしますし勉強不足です。はい。
あれから同じ電話も掛かってきてはいないが調査班のお陰で発信された位置などはほぼ特定出来ていた。
位置が女神湖周辺であることには満足していたが一正は方針に悩んでいた。
位置は判ったとしてもそれだけなのだ。横の連携を使って警察にも介入してもらうのも正しい判断かもしれないが借りを作るのにも抵抗があった。
頼った先にも必ず奇跡を望む者が居て見返りの要求がある。無用な利益の無い奇跡を果たす義理を持つことはやはり避けたかった。
「所長、福岡からのがん治療の依頼件ですがどうしましょう?武藤先生にご依頼いたしましょうか?依頼者の調査結果はOK出ています」ルナが一正に指示を乞う。
「そうですね。武藤先生ならお任せ出来るでしょうからよろしくお願いします」
「はい!」嬉しそうに返事を返すルナ。
一年前のあわあわとしていた頃とは違い立派になったと思う。
ルナの父親も西門家も秋田で東北方面の魔術医師として活躍しており、本来ならルナが跡継ぎのはずだったがルナは魔術医師として向いておらず良縁を求めて上京してここに就職したのである。
ルナは髪型がコロコロと変わるので一正は必ず褒める様に心掛けていた。
下心などではなくつまりは一正なりに嫁入り前の箱入りお嬢様に気を使っているのである。
もうひとりの楓の実家の望月家は埼玉で比較的新しい血筋となるが実力は高い。楓の姉は魔術医学だけでなく多才で今ドイツに留学していて後を継ぐ事も決まっていた。
ルナと違い楓はまだ子供っぽく「お姉ちゃんいるからいーや」的な楽観的な感じで家とか血を残すとか考えられない様だった。
だが良家の子女であることには変わりなく、一正は監督役として才能ある二人には良縁に恵まれて欲しかった。
魔術の家系に生まれながら全く才能が無い者も多い。
出払っている調査班の男どもの面々もだが当の一正もそうだった。
一正の実家は東京で祖父の代までは魔術武道の名門だったが生まれた兄妹には魔術の才能が無く兄妹で結婚して一正が生まれたのだが人より勘が良い程度で一正にも魔術の才能が現れなかった。
数代にわたって才能が開花しない家系となっても突然才能を持った子供が生まれるので魔術の血を守り続けるのが当然の事である。
つまり一正も良縁を求めてここに就職し独身のまま10年が経とうとしていたのだった。
「所長?この前の電話の件はどうしましょう?」
まだ悩んでいる一正にルナがストレートに聞いてきた。
「調査班の誰かに見に行ってもらえばいいじゃん。」お気軽に楓が言う。
「うーん・・・前例が無くて色々未知数な案件ですし簡単には指示出来ないのですよー」
思い切り楓の顔に「どうして?」と浮かんだので一正は学校の先生の様に話し始めた。
「どうして我々へのコンタクトのハードルが高いのかはご存知でしょう?こちら側の人間が少ないかぎり一般人には魔術は奇跡や迷信のままにしておかなくてはならない」
真剣に聞くルナと楓。
「発信地はほぼ特定出来ましたがそれは電波の中継アンテナのことで今回の場合はまだ何処の誰の家からどんな人間からのコンタクトか判っていません」
真剣なルナと少し飽き始めた楓。
「仮の話ですがもしも相手が犯罪を起こす魔術の側の人間ならば危険度があがります。調査班を危険な目に合わせる訳にはいきません」
真剣ルナと目がショボショボし始めた楓。
「基本的に依頼者の支払い能力の調査がメインの我々ですが最終的な身元調査で安全保証をしなければなりません。それは紹介する医師もそうですが私達の安全も確保しておかねばならないからなのですよ」
うんうんと頷くルナと夢の中の楓の対象的な姿に笑いそうになりながら一正は「私の勘では放っておけない案件なのでこのまま放ってはおきませんから安心してください」と付け加えた。
−−−と、一正は何か閃いた様にメモ書きに何か書き始めた。
ルナが所長の変化に気が付いて手元を覗き込むと照れながら一正が言った。
「一人で悩んでないで皆で一緒に考えましょうか?楓さんも退屈しないで済みますよ。初の会議といきましょう」
?魔術の秘密保持
?危険の回避及び安全の確保
?必要経費の捻出
メモに書かれた議題に沿って第一回目の会議が開かれた。
「もちろん通常業務が入ればそちらが優先ですよ」と一正が前置きして一つ目の秘密を保持するための条件から話し合いが始まった。
「秘密を保持するためには関わる人間は少ないほうがいいですね。したがって応援を要請するにしろ出来るだけ少数の信頼できる所となります」一正が最重要点をまず語った。
「私達三人でとりあえず見に行くとか調査班の方にお願いするのはやはり駄目なのでしょうか?」とルナ。
「それは2つ目の安全の確保が出来といるとは言えませんね・・・先程も言った極論ですがもし犯罪者が関わっていてもおかしくありませんから」
一正が言ったが二人共ピンとこないらしい。箱入りのお嬢さんの危機感の薄さに一正が苦笑して例え話を出す。
「一般の泥棒さんや強盗さんは魔術なんて信じていないので大丈夫でしょうが魔術に関わる泥棒さんや強盗さんはここを知っていてもおかしくないですよね?しかも知っていればここがお金持ちだってことも知っていますから悪いことしようとしてもおかしくありませんよね?滅多にあることではありませんが用心はしておかねばならないくらい昨日の電話は特殊ですからね」
一正はわざと解りやすく金銭目的の犯罪で説明したがそれでもまだ納得いかない顔の二人に「とりあえず我々が直接行動するのは無しの方向で」と一正が付け加えると少し考えて楓が言った。
「じゃあ誰かにお願いしないといけないのですね?」
「信頼出来る安全を自力で確保できる方ということになるので難しいのですよね?」とルナ。
「そうですね。安全を自力で確保という点もですが費用の問題もやはり軽視出来ません。先程までの悪い心配の反対になりますが電話の内容通りだった場合は特にここが問題です」
不思議顔の二人にまたも一正はまたわかりやすく話した。
「父親が危篤状態の娘の祈りが神に届いて奇跡的にここへ連絡出来た。疑いながらも我々の派遣したA先生がその父親の治療をして無事事なきを得ます。ですが患者には残念ながら支払い能力がありませんでした。今回公ではありませんから我々の紹介料はいいとしても治療費は誰かが支払わねばならないとなるとウチが支払うことになるのですよ」
華奢な両腕を一人前に組んで「つまり」と言うと目を見開きドヤ顔で楓が言った。
「私達の依頼できる最悪どうなっても良い魔術医師を無償で働かせればいいのですね!」
「自信たっぷりに黒いこと言わないで欲しいのですがあながち間違ってはいないですね」思わぬ楓のぶっ飛びように驚きながらも一正は言った。
「まずは皆の思いつく魔術医師を候補に出していきませんか?」
「でも所長?普通に警察とかに届けるのはどうでしょう?魔術関連方面に・・・」ルナらしい真面目な意見に一正が言う。
「本来それが一番正しくて間違ってはいないのですが最期の手段にしようと思っています。何故なら経験上組織相手の場合「タダより高い物は無い」とゆうリスクが跳ね上がるからですよ」
魔術の存在を秘匿するために様々な機関は存在するが一曲二癖あるために本当に最後の手段にしたい一正だった。
「誰か良い候補は居ませんか?楓さん」
楓は即答で「じゃあパパ!私のお願いならお金要らないでしょ?」と無邪気に答えた。
「ふむ。血縁者に頼んで報酬の問題をクリアする訳ですね。安全対策も私の家に依頼すればそちらの報酬もなんとかなるかもですしね」
おおおー。となるルナと楓。実際楓はただ思いついたのが父親だけで深くは考えてはいなかったのでルナよりも目がキラキラしていた。
「ではルナさんも誰か候補は居ませんか?なるべく血縁者でない方で思い付きませんか?」
問いかけられたルナは少し考えてから顔をあげて言った。
「横浜の桂木先生はどうでしょうか?安全は所長のお家の方にお願いするとしても治療費はかかってしまいます。でも桂木先生ならば脳梗塞や心臓病などにお詳しいし何よりも電話の通り父親を助けることが本当だったとしたらその辺りに詳しい先生をと思います」
「患者を想定したなかなか思慮深い意見ですね。とてもいいと思います」一正が褒める。
ルナの言った桂木先生とは桂木 大輔と言って若き名医である。ルナの縁談的にはもってこいの相手であるため今回の件がキッカケになればルナには良縁かもしれないので一正はこれから自分の考えを言うのを辞めてしまおうかと思ったくらいだった。
「あの・・・所長のお考えも聞いてみたいです」ルナが言った。
「ああ、そうですね。私も考えを言わなければなりませんね。本当に色々考えて桂木先生でもいいと思いますが私の候補は連想クイズにしましょうか。五つのヒントを言いますので連想してみてください」
微笑みながらそう言って立ち上がると一正はオーバーなジェスチャーで話出した。
「ヒント?です。血縁者や桂木先生の様にご迷惑をかけてしまうとこちらの心が痛むので迷惑かけても気にならない存在である」
「ヒント?です。迷惑かけても気にならない存在は普段こちらが迷惑を被っているからでありつまりは迷惑な存在」
「ヒント?です。迷惑だが腕は確かである」
楓は二つ目で思い浮かんだ様で「あっ」と声をあげてルナは三つ目でイメージ出来たらしいが構わず一正は続ける。
「ヒント?です。迷惑だが私と幼馴染でウチの魔術武道を心得ています」
「ヒント?です。迷惑でウザくて変態ピンクです」
ここまで聞くとルナと楓は吹き出してしまった。もう該当者は一人しかいなかった。
「えーと所長の候補が変態ピンクさんなのは判りましたけれどどうやって引っ張りだすの?あの先生ったら患者さんが若い女の子じゃないと嫌だとかワガママ言うし実際気に入らない患者さんだと放って帰って来ちゃうし目つきがいやらしいしロリコンだし・・・」被った迷惑や思っていることを吐き出しながら言う楓に一正は言った。
「いい餌があると私は思うのですけれど・・・?」言いながら昨日のルナのモンタージュをちらつかせる。
おおおー!となる楓に相反してルナが慌てだす。
「所長!待ってくださいそれは本当に合っているかわかりません!」
モンタージュを取り返そうと頑張るが身長差が有りすぎて届かないルナに一正が言う。
「いいじゃないですか。要は釣れればいいのです。現地でこの少女が居なければそれはそれで帰って来てくれても結果的に現地の状態の把握は出来ます。もし犯罪集団に変態ピンクが襲われて怪我の一つもしてくれれば私の気も晴れます」
「所長くっろーーーーい」なんとも言えない愉悦顔で楓が言った。
昨日は物凄くてクタクタになり起き上がれたのは昼を過ぎていた頃だが起き上がると昨日のシチューを温め直したりメールのチェックしたりいつもの一日の始まりの中で結はちょこまかと家事に没頭していた。
一段落もついたので兄様を起していつもの防御態勢で待ちいつもの様に無駄な警戒。
現れたのは全裸のピンクアフロだったのでいつもの一日だった。
いつもの一日がいつもでなくなるのは仕事の依頼からである。
魔術医師協会の回線ではなくガキの頃からの付き合いの一正からの着信なのが流れる着うたの魔法少女モノのアニソンでわかる。
ピンクアフロは自分の上でくたーっとなっている結をぬいぐるみごとひょいと抱き上げてパソコンの横の充電器に収まっている携帯の方へと移動する。
電話に出るとアニソンの続きを歌い出すピンクアフロだった。
流れていた着うたの可愛らしい歌声が突然野太い声に変わる。音痴ではないがウザい。
しかし付き合いの長い一正は歌い続けるピンクアフロを無視して告げた。
「患者の関係者に双子の美少女が居るんだが打ち合わせがしたい。すぐ来てくれないか?」
サビの部分を歌いきって電話が切れた。
魔術医師協会のオフィスとピンクアフロのマンションは徒歩3分の距離であるのでさほど時間はかからない。
15分後には到着したピンクアフロへ一正が概要を説明する間も仲良く話している結とルナと楓の三人に茶々を入れたりルナや楓に変態呼ばわりされたりモンタージュの美少女を褒めたりしていたがこれでも話は聞いているのを承知していた。
「そういうわけで我々は正式には動けない上に報酬を支払える保証は無いがよろしく頼む」
一正は嘘を一切言わずにピンクアフロに伝えた。
「うむ!では行ってくる!結行くぞー!」
一正の話が終わるとピンクアフロは依頼に対してなんの注文も指摘もせずに結を連れてオフィスを出ていった。
第三話も読んでくださってありがとうございました。
書き溜めたモノを連続で投稿していますがここでちょっと冷静になって恥ずかしいですね。
少し時間空けます。