第5話 赤い椿
マンションの植木の中に、椿があると気がついたのは今年に入ってからのこと
それまで気がつくことはなかった
昨日 ふと見ると 小さな蕾がいくつか
寒さの中の花は 何によって大きくなるのだろう
春や初夏の花は 温かく強い陽射しから力をもらうから
昔、私のことを花にたとえるなら「赤い椿」だと言った人がいた
一輪挿しの赤い椿
あってもそれ程には主張はしないが、ソコにあるのと無いのとでは違うのだと
「小さな存在感がある」のだと
その人にとって私が何かを持つのであれば嬉しいのだと思っていた
マンションの椿は 赤色ではなくピンクのよう
私の椿のイメージは 赤い椿の上に わずかに降った雪
雪におしつぶされることはない 葉っぱ達が守ってくれるから
そうして冬や初春の白の世界の中に 赤い椿があるのを頭に浮かべた
自分では 私が「一輪挿しに飾られた」椿かどうかはわからない
カサブランカや薔薇、可愛らしいスィートピー、向日葵、満開の桜・・・
美しく 見事な花は一杯
名もなき花が美しいこともある
花は競わない それぞれが美しく 人を癒し ホッとさせてくれるから
どの花が一番美しい、など比べることは出来ない
赤い椿も それなりに・・・