表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/119

誤解があったようです

「え……?」

「俺があいつを殺したんじゃないかって、今でも悪い仲間との縁が切れてないんだろうって考えてたみたいだ。まぁ、仕方ないよな、俺みたいなワルは……」

「美咲は、そんな人間ではありません」

 思わず駿河は言った。すると孝太は頬を歪めるようにして笑い、

「思い出ってのは美化されるもんだよな。まして好きな女だったらなおさらだ。いいこと教えてやるよ、どうしてサキちゃんがあんたを裏切ったか……」

「はい、そこまで」

 友永が割って入る。

「俺達は桑原圭史郎が誰にどうして殺されなければいけなかったのか、そのことを調べるためにわざわざ県内を横断してきたんだ。お前さん達のプライベートに興味はない。あんたは自分を殺人犯に仕立てたいようだが、なら物証を持ってこいよ。頭の固い検事を納得させるだけのな」

 駿河は思わず同じ班の仲間である友永を睨んでしまった。


 彼の言うことは正論だ。しかし感情は納得してくれない。

 どうして美咲が自分を裏切ったのか、それはどうしても知りたい。

「なぁ、お前もそう思うだろ? 葵ちゃんよ」

 友永は最近、和泉に倣って自分をそう呼ぶようになった。

 今さら文句を言うつもりもないし、言っても無駄だろう。


「あんたも偏見を受けるのは辛いだろ? 好きな女に限らず、世間からだってさ。悪いことは言わない、今すぐに『宮島を守る会』から脱退することだな。あの支倉って野郎はクズだ。関わり合いにならない方がいい」

 孝太は驚いて友永の顔を見つめる。

「あいつこそ『争いの火種を見つけると、暇を見つけては首をつっこんでいく』典型定なクソ野郎だ」

 それがタレコミの手紙に書かれていた一文を引用していることに気付いたのは、駿河ではなく孝太の方だった。

 顔色が変わる。


 元少年課の刑事は続ける。

「再開発計画みたいな大金が動く話になると、必ずと言っていいほどあいつらが顔を出してくる。せっかく苦労して暴走族を抜けたんだろ? 今の職場を見つけたんだろう? 手に入れたものを手放すのは簡単だけど、失うと二度と手に入らないんだぜ」

 孝太は唇を噛み黙りこんだ。

「まさかとは思うけど、警察に宛てて石岡孝太が怪しいっていうタレコミの手紙もあんたが自分で出したんじゃないだろうな? 自分に疑いがかかるように」

「……」

「だとしたら何のためだ?」

 答えはない。

「まぁいいや。それより彼女……藤江美咲さんは今日来てるのか? 彼女にも話を聞きたいんだが」友永はキョロキョロと辺りを見回す。そして「あ、女将さん。ちょっと」

 彼は女将に声をかけて、美咲をここへ呼んでもらうように言ったようだ。


 孝太は立ち上がって事務室を出て行こうとした。

 友永はそれをとどめ、再び椅子に座るよう肩を抑えつける。


 少しして美咲がやってきた。

 いたって冷静に、平常と変わりない表情である。

「どうも、お仕事中すみませんね」

 いえ、と短く答えて美咲は立ったまま刑事達と向き合う。

「こちらの板前さんは、あなたに疑われたからってヤケクソになって、桑原圭史郎氏を殺したのは自分だと主張してますがね、どう思いますか?」

 友永がそう言うと、美咲は首を横に振り、答えた。

「私は石岡さんが桑原さんを殺したなんて、少しも考えていません」

 孝太が腰を浮かせかける。

「もしかして、と思ったのは……宮島を守る会の人が、彼……駿河さんを襲った事件の方です」

 そこで美咲は自分が考えたいろいろなことを話し出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ