初めてのアルバイト
まるっきり2時間ドラマのような内容になってしまったので、今回からR15指定とさせていただきました。えげつない表現などもありますのでご注意を。なお、微妙に女性向けです。
死ぬかと思った。
初めてのアルバイトで義姉の実家が経営する旅館の手伝いを申し出たはいいが、かなりの重労働だということが一日だけでよくわかった。
布団の上げ下げ、大浴場の掃除など、全身を酷使する体力勝負の仕事である。
初日の仕事を終えて帰宅した藤江周は、靴を脱ぐと同時に自分の部屋のベッドになだれ込んだ。
これが週に1、2回だからまだいい。
毎日やれと言われたら気が遠くなる。
もちろん慣れないことをするから余計に疲れるということもあるのだが。
このまま寝てしまいたい。
暑かったから汗をかいているし、風呂に入ってさっぱりしたい。
ああ、そうだ。猫に餌をやらないと……。
けど、面倒くさくて何もしたくない。指一本動かしたくない。
そう思っていたのに、猫達から餌の催促がきた。
自分で缶詰開けてくれよ……なんて、無理なことを胸の内で呟く。
もうちょっとだけ待って、と言ったところで猫達が納得してくれる訳がない。
二匹の猫はニャアニャアとそれぞれ鳴き始めた。
とりあえず無視。
しかし猫達もあきらめない。周の足の指を噛んだり、前肢で頬をばしばし叩いたり、ついには声を揃えて大合唱を始める。
とうとう我慢できなくなって周はノロノロ起き上がると、台所へ向かう。
猫用の缶詰を開けて皿に乗せる。それでやっと猫達は大人しくなった。
一度起きると、他のことも片付けてしまおうかという気になる。
風呂に湯を張る用意をしてから洗濯物をしまう。
テレビをつけてニュースを確認する。
今日も県内は平和のようだ。
こまごまとした軽犯罪は多発するようだが、お隣が出動しなければならないような大事件は今のところなさそうだ。
ふと、あの男のことを思い出してしまう。
あれからどうしているだろう?
元気なのだろうか。
周はふるふると首を横に振り、頭からその男のことを閉めだした。
あんな奴のこと、俺の知ったことじゃない……。
話全体に昭和の空気が流れているような気がします……。