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意外な組み合わせ

「まぁ、女性関係を除けば、ノヴァリス将軍は本気ですごい方よ。大公宮の全員が絶対に足を向けて寝られないわ」

「は、はぁ・・・」

私が言葉もなく、呆けていると、アルミナが「さっきから思っていたんだけど」と言い出した。


「あなたもたしかクリムハルト様がらみで大公様のお目に留まったのだったわよね? まさかクリムハルト様とノヴァリス将軍のことを知らないってことはないわよね?」

「ク、ク、クリムハルト様ですか?」


この寝室で。

大公殿下とのあれこれを見届けられている女官に。クリムハルト様のことを持ち出されるのは、なんだかものすごく気まずい。っていうか、あなたもって何よ、あなたもって!


「あ、あの、いろいろ誤解があるみたいですけど」

あわあわとしている私をアルミナがじっと見てくる。

「私、クリムハルト様の恋人じゃありませんし、親密になったことも関係を持ったことはありません。むしろあの人が何者なのか教えてほしいです。ノヴァリス将軍と関係があるんですか?」

「え、え、まさかの何も知らない?!」

なぜアルミナが飛び上がらんばかりに驚いているのかよくわからない。


クリムハルト様がからむとややこしいことになる、というジョシュアの言をずっと実感してる。


「あのう、はっきり言いますが、私絶対に知らないところで勝手に巻き込まれてるんですよね。なのにわかってないんです。もう少し教えてもらってもいいと思うんですよ」

「くどい言い方をしないで。つまり教えろってことでしょ」

「はい、そうです」

アルミナの目をじっと見つめて懇願すると、彼女はうーんと大きな頭を振った。

「やっかいね。知らなくてもよかったんじゃないかって後悔するかも」

「そうなんですか?」

「あなたがクリムハルト様と無関係なら」

ズキンときた。


無関係はいやだ、と胸の奥が叫んでいる。


はぁっとアルミナは大きく息を吐いた。

「なんて顔をしてるの。はぁ、もう、ほんとにみんなしてあの男にたぶらかされて」

と呆れたように言って私の頬を、やさしく撫でた。


アルミナが深呼吸する。


「ええと、まず、クリムハルト様はノヴァリス将軍の3番目のお子です」

「えっ」

「さっき話したでしょう。奥さまが敵に囲まれた城で出産なさったって。そのとき産まれた子がクリムハルト様なの」

自分の口がぱかんと開いているのがわかる。

なんだろう。

わかってるのにわかってるような、感じ。


「あれが、親子」

かろうじて口に出した間抜けな呟きを、アルミナが笑う。


いや、だって、あの冬の寒風みたいに厳しい雰囲気の大将軍と、陽光の月光と両方をまぶしたような華やかな美貌の大男が。


「あれが親子」

もう一度つぶやく。


先程まで聞いていた、ノヴァリス将軍の若い頃の話。名家のお嬢様や女官たちをたぶらかしたとかなんとか。血を分けた息子があれほどの美貌なら、うん、わかるかもしれない。

いやいや、その名家のお嬢様だったというお母上が美貌だったのかもしれないけど。

首を振りながら、やっと納得していると、アルミナがそうっと背後から抱き締めるようにしてきた。


「あなたも薄々気づいているんじゃないの?」

「え?」

「大公様はねぇ、クリムハルト様に恋い焦がれて身悶えしながら自分に抱かれる女がとってもお好きなのよ。それをクリムハルト様も知ってる。お二人で遊んでいるのよ」


「・・・・・・悪趣味ですね」


「そうね」

彼女は私の反応を面白がるように眺めて、くすっと笑った。

「もっと悲愴な顔をしてくれると思ったのに。悪趣味の一言で済ますなんて、あなたも相当ね」

「そんなことありません」

私の肩はふるふると震えているから、アルミナは面白がるようにさらに抱きしめてきた。

「だから私も気に入られたって言いたいんですか? 私がクリムハルト様に・・・・・・心を持っていかれているから」

「まぁ、その言い回しは素敵。心は持っていかれちゃってるのね。でも、そうね。下種な言い方をするなら、あなた今、とっても女丸出しの顔なんだけど」

「じゃあ大公様のお好みですね」

つんとして強気に言い放つと、アルミナがくすくす笑った。

「そうね、本当だわ。私、言ったでしょう。大公殿下をご機嫌良くさせるのは難しいって。クリムハルト様が手を出した女をすべて呼んだとして、その全部が大公殿下のお気に召すはずがないでしょう。あなたは気に入られたの。ちゃんと殿下を喜ばせているのよ。私が保証する」

「はぁ、ありがとうございます」

思わず間抜けな声になってしまった。


違う。私が聞きたいのはそういうことじゃない。

大公殿下が私を気に入ってくださっているという事実はちゃんと自明にあるのだから、アルミナに保証してもらう必要はない。

それにしても。

あんなふうに輝くばかりの精悍さと、権力と身分と、莫大な富を持った大公殿下が。

そんなふうに女を抱こうとするものなんだろうか。

不思議。

男はそういうものなんだろうか?


別の男に恋い焦がれている女を征服するのは、そんなに楽しいのだろうか。


フレイは私を手に入れて楽しかったのだろうか。


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