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冒険に出発!街を出る

 翌日、兵士が聞き込みを行っていたので、何も知らない振りをして逆に聞き込みをしたところ、屋敷は全て炎に焼かれ、死体も骨になっていた為、何も判らなかったらしい。


 やはり兵士達は熱心に調べてはいない様だし、街の人も協力する気が無いみたいだ。

 領主まで犯人を探して褒美を取らせたいなどと冗談を言っていると、兵士が笑いながら教えてくれた。


 どうやら犯人探しは国への言い訳の為に、形だけ調べた振りをしている。この街を離れれば、ユリアもフードを取って暮らせるだろう。


 俺の手をぎゅっと握って緊張しているユリアの肩を抱き寄せて安心する様に撫でた。

 徐々に力が抜けてきたので、ユリアの形の良いお尻をローブ越しに撫で撫でする。


「ご主人様、メッ!お外じゃ駄目ですよ。お部屋に行きましょう」


 身体をクネクネさせて、照れ隠しにつねってくるが痛くも痒くも無いので、イチャイチャしながらリリーに逢いに行く。



「よう、リリー居るか?」


 カンカンと鉄を打つ音が響く店内に入ると、リリーでは無くオッサンがニカッと笑って出迎えた。


「おお!ボウズ、リリーに逢いに来たのか?まあしょうがねえ、俺の娘は可愛いからな!」


 腕を組んで、うんうん頷いているオッサンはなんかムカつく。


「全くだ!リリーの可愛さと来たら、オッサンの劣性遺伝子を駆逐して産まれた奇跡の美少女だからな!」

「小難しい言葉でバカにすんなよ!!」


 相変わらずノリの良いオッサンだ。からかうと面白い。


「ところでリリーは修行中か?」


 カウンターの奥の扉を見ながら訊く。


「ああ!益々張り切って修行してるぞ。それより、その子供は誰なんだ?」


 俺の背中に張り付いて、隠れていたユリアの事を訊かれたので、自己紹介と事情説明をする。

 悪党に狙われた事、捕まっていたところを助けた事、恩返しの為に付いて来る事を、貴族の事だけ伏せて話した。


「なるほど……、それは良い事をしたな!先日悪徳貴族の屋敷が全焼して貴族の馬鹿娘が死んだし、悪党にが減るのは良い事だ!」


 良い事をした上に金まで入る素晴らしい就職先だ。


「それで、この()のお護り刃を買おうと思ってな」

「よっしゃ!任せろ!いま娘を呼ぶ」


 任せろって言ったのに、相変わらずリリーの方が詳しいらしい。このオッサンは売り子じゃなくて留守番だな。

 延々と金属を打つ音がする扉の奥に引っ込み、少ししてから音が止んだ。


「ご主人様、護身用の武器を買って戴けるんですか?」


 俺の袖をクイクイ引っ張り、爪先立ちで()()る様な角度で見上げてくる。


「ああそうだ。念の為にな。杖じゃ殺傷力が低い」


 オッサンの説明が終わったのか、ドアノブが激しく回りドアが音を立てて、リリーが飛び出して来た。


「お待たせ~、武器の事ならボクに任せて~」


 やはり何が楽しいのかニコニコしている。


「それで……、使うのはこの可愛い娘だよねっ?」


 ユリアの手を掴み、繁々と眺める。俺はリリーのお尻を眺める。


「ふむぅ~ん、手が小っちゃいな~」

「なに、お尻が小さめでもリリーには太ももが有る」

「握力も少ないし~」

「弾力なら小さめのお尻に(まさ)るものは無いさ」

「……相変わらず親の前でもセクハラするな……」



 リリーはユリアの手を、俺はリリーのお尻を堪能して、お護り刃選びに取り掛かった。

 棚をゴソゴソして何本かの短剣を持って来てカウンターの上に並べ、説明する。


「ユリアーナちゃんに合いそうなのはこれくらいかな」


 飾り気の少ない物や装飾品としても通用しそうな物、アホな貴族が喜びそうな豪華な物など色々有る。


「ユリア、どれが良いんだ?好きなのを選べ」

「わかりました!これにしますね!」


 1番安そうなのを選んだ。あまり(こだわ)りが無い様なので、俺が選んだ方が良いかもしれない。


「この魔法石は何の魔法が封じ込められてるんだ?」

「回復魔法だけど、魔法石じゃないよ?」


 知らない?みたいな表情で首を傾げる。


「魔法石は魔力を込めないと封じ込めた魔法が発動しないけど、これは魔法結晶だから周囲の魔力を貯めて使うんだよ!だから本人が魔力切れでも、時間を置けば何度も使えるよ。使える回数は結晶の大きさで容量が変わるから、この短剣に付いてるのだと、3回くらい使ったら満タンまで半日くらい掛かるかなぁ?」


 じゃあ奴隷の首輪に付いてたのは魔法結晶だったのか?


「あとは……、値段が5倍くらい違うかな?」


 奴隷の値段はそれ込みの値段なのか?奴隷を解放しまくったら一財産だな。


「じゃあ、これにする」

「値段が小金貨3枚するけど良いの?」

「美少女の為の金なら惜しくない!」

「ボクにも可愛いって言ってくれたのに~」


 可愛い娘に可愛いと言うのは当たり前だ。可愛いければ誰にでも言うぞ、俺は。

 愛してるはまた別問題だけど、基本的に美少女は皆好きだ。美少女が嫌いな男は男じゃ無い!!



「あとオッサンは接客もせずに寝てんじゃねぇ!!」

「グフゥオォォォ」


 椅子に座って寝こけていたオッサンの鳩尾(みぞおち)に飛び蹴りをかます。


「いきなり何とんでもキック喰らわしてんだ!!」

「オッサンが娘働かせて寝てるからだ」


 まだブツクサ文句を言っているオッサンを黙殺して、リリーにお金を払って短剣を受け取り、ユリアと向き合った。


「……ユリア、戦場は命のやり取りをする場所だ。俺に万が一の事が有ったら、このお護り刃で自分を守れ。それでも駄目な時は…………、女の尊厳を守る為に使え。あの世で逢おう」


 ユリアの瞳から目を逸らさずに気持ちを伝えた。


「…………はいっ!!!!絶対この身体を他の男の人に触れさせません!!死んでからも御供(おとも)しますね?ご主人様」


 ユリアも目を逸らさずに胸を張る。それを見届けてからお護り刃を渡した。

 小さな手で力強く短剣を掴み、胸に抱いた。そして顔を上げて、両目に涙を浮かべて微笑んだ。


「ご主人様…………、この短剣、ユリアの宝物にします!」


 胸に飛び込んで来たユリアを抱き寄せて、離れない様に強く抱いた。


 微笑ましげに見ているオッサンと羨ましそうに見ているリリーを余所にいつまでも抱き合って、お互いの温度を確かめた。










「気持ちは解るけど5時間はさすがに長過ぎるからな!!!!もう娘のHPは0だぞ!!!」

「ボクの一生なんて金属を叩いて終るんだぁ……グスン」


 気が付いたらオッサンは酒盛りを、リリーは床でふて寝をしていたので、取り敢えず宿に帰ってからイチャイチャしよう。


「それで、俺達は狙われてるから明日王都に引っ越す事にした。リリー、寂しいけど(しばら)くお別れだ」

「そんな……、急過ぎるよ」


 (うつむ)くリリーの頬に手を当て、上を向かせる。


「心配するな、リリーが一人前になったら俺の剣を造って貰うんだからな。次に逢う時までに、強力な武器の素材を見付けて措くから腕を磨いておけよ?そしたら専属鍛冶師になって貰う」


「……うん、解ったよ!この世界で1番固い神鉄でも鍛えて見せるからね?」


 指でリリーの涙を拭ってやると、(ようや)く笑顔が戻った。

「オッサンもまたな」

「ああ、騒がしい奴だったぜ、まったくよぉ」


「お世話になりました!短剣大事にします!」


 ユリアがペコッと頭を下げて、俺達は武器屋を後にした。


「良い方達でしたね?ご主人様」


 手をぎゅっと掴んでユリアが笑う。


「そうだな、…………あっ、しまったぁぁぁぁ!リリーのお尻を撫でるの忘れてた。俺としたことが、情けない」


 兎に角引き返そう!撫で(おさ)めだ!


「ご主人様!メッ!」

「いてっ、……ユリア、遠慮が無くなって来たな」


 魔法のステッキで殴られたぞ?


 帰り道で旅に必要な道具や食糧を念の為に買っていく。半日も掛からないがアクシデントが有ったら困る。



 翌朝、早起きして支度を済ませ、宿を出ると朝靄(あさもや)の中、ユリアの小さな手を引いて歩く。

 王都に向かう通常の移動手段は、徒歩、乗り合い馬車、船、魔導列車が有り、俺達は魔導列車で向かう。

 徒歩なら10日前後、乗り合い馬車なら4日、船だと普通の船なら4~5日、魔導船なら2日、魔導列車なら8時間程で着く。

 しかし船だと、直接王都には行けない。王都の近くの港に降りて徒歩か馬車になる。


 魔導列車は料金が高いが、王都まで直通だから早いので小金持ちには人気の移動手段だ。

 移動距離で料金が違うが、港街タイラルからは草原の街レジーナを経由して、レクス王国の王都キールに着く。

 徒歩や馬車で向かう者もこの道を通って王都まで行く。



 駅に着くと早朝にも関わらず、商人の一団や旅行客などが(ひし)めき合っている。

 魔物に壊されない様に特殊合金で造られた線路の上に、重厚な黒い鋼鉄の塊、魔導列車が()っていた。


「人間さんの造る物はスゴイですね~。森と共に生きるエルフには造れませんよ~」


 俺の手を握ったまま、ほぇ~っとした顔でひたすら感心しているユリアを促して、魔導列車に近付いた。

 予め買って措いたキップを渡して乗り込んだ。魔導列車は客室が付いていて一部屋取って措いた。


 魔導列車の動力は、当然の如く魔力だ。巨大な魔法石を使っているかと思ったが、魔導結晶の方だろう。

 魔導結晶を使っているが、魔力供給に魔法使いが何人も乗っていて、魔導結晶の魔力が切れたら供給するそうだ。


 因みに動力源は1つでは無く、列車を動かすのに2つ、外敵の撃退用の魔導砲の魔力供給用の魔法結晶が4つ有るらしい。

 魔導砲は、その名の通り魔力や魔法を撃ち出す大砲で、威力は人間大の岩を砕く程度とか。


 俺達の客室に着くと、ユリアが窓の近くのソファーに走った。景色が見たいらしい。


「楽しいです!ご主人様!」

「まだ発車もして無いのに、気の早い奴だな」

「えへへ、旅なんて初めてですもん」


 まだ動いてもいないのに窓枠にかぶり付き、足をブラブラさせて外を見ている。

 楽しい時の癖なんだろう。昨夜は短剣を見て寝るまでデレデレ笑っていた。

 何にしても旅が始まる。王都の近くに遺跡やダンジョンが在るらしいので、財宝を求めて挑戦してみるのも悪く無い。

 まずは家を買って、悪党や魔物退治でレベルアップをしてからにしよう。


 ユリアとどんな家が良いか話そうとしたら、列車が発車すると乗組員が注意を促して行った。

 汽笛が鳴り、重い音を立てて列車が動きだす。どんな生活になるのか楽しみだ。

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