拝啓、ケビン様。リーゼに怒られそうなのしばらく帰りません
夜中に抜け出したトールたちのことが城の人間に知れ渡る朝方、城の正門でトールの仲間とコゼット王女は、勇者さまを見たと証言する門番から話を聞いていた。
「はい! 勇者さまはすぐ戻ると仰られて姫さまのペットのタロウと一緒に出て行かれました!」
若い門番のせいか、勇者と話をしたことで嬉しそうである。身振り手振りを交えて報告している。
「タ、タロウが……わらわのタロウが……」
「あいつは何でペンギンを連れてったんだ?」
ケビンの顔に疑問符が浮かび、門番に聞いてみる。リーゼロットたち女性陣は王女を慰めているのを横目で見ながら。
「分かりません。しかし夜警の最中、タロウがやって来て誰かを待つように城の一点を見詰めておりました。そこから勇者さまがいらっしゃって、タロウと視線を交わすと、お二方ともニヒルに笑って……城門を跳び越えて行かれました。……勇者さまの前には巨大な壁も無意味なんですね~、凄かったです!」
いや、お止めしろよ。と言う先輩兵士の言葉も聞こえていないのか、うっとりしている。
「……タロウ~……ズルいのじゃぁぁぁぁぁ~~~~!! わらわのペットのクセに勇者さまのなかまになるなんて~~!!」
「おいおい。そっちかよ。ペットの家出に落ち込めよな~、姫様」
「あ、ケビンさま。タロウの家出はしょっちゅうなので!」
「…………あんなペットは飼いたくない。あいつ噛むから」
絶句するケビンの横でアルテミスがぼそっと呟いた。
「姫様~、ユリアが精霊を見せますから泣かないで~」
「アタシ、久し振りに踊ろっか?」
「それよりトールのバカ~。婚約者をほったらかして別の王女のとこに行くなんて!」
高貴な者たちが騒ぎ始めて、1番の被害を受けたのはオロオロしている兵士たちだろう。居ても居なくてもお騒がせ勇者である。
「朝ごはんができたわよ~」
マリンがやって来て朝食の時間だと告げた途端に王女は泣き止んだ。
「お腹が空いたのじゃ~。わらわを早う連れてってたもれ」
アタシの踊りよりご飯がいいんだ、とカリンが落ち込んだが、カリンもお腹が空いているらしく食堂に向かった。
「やあ。先に頂いているよ。トール君のことだが、国境はすでに越えたらしいから国としては何もできないね」
「なんで落ち着いてるのよ~、ビリーは~」
長いテーブルの端に腰掛けて優雅に朝食を摂っているビリーに、頬を膨らませたリーゼロット姫が拗ねたように話し掛ける。
「ビリーさん、ご主人様のことをどうやって知ったんですか? ユリアに教えてください」
背の低いユリアーナは、テーブルの端に両手を置いて、爪先立ちで身を乗り出して聞いている。主人のことが気になって仕方がないらしい。
「女王陛下にお訊きしたんだよ。国境警備隊から明け方にマジックアイテムで報告があったらしい。馬でも追い付けないような速度で走る仮面を着けた黒髪の勇者らしき人物が、これまた仮面を着けたペンギンと一緒に駆け抜けて行ったらしい」
「お~、ごしゅじん、カッコいい! リーゼ、アルにも仮面を買って」
何故か必死な表情でリーゼロットのミニスカートを引っ張りながらオネダリしている。
「ちょ、わかったからスカートを引っ張らないで、買ってあげるから!」
スカートを下げられては敵わないと思ったのか、買うことを約束する。
「ていうか仮面って。トールの奴、そんなんで誤魔化せると思ったのか? いつも意外に冷静なクセに、美女や美少女のことになるとイロイロ置いて突っ走るな」
申し訳ありませんが、右手を怪我して入院中なので更新はかなり遅くなると思います。前回も今回もこれだけの文章でさえ時間がかかったので。
現在は、指に金具を入れて、砕けた指の骨がくっつくのと、繋げた血管が機能するか様子見だそうで右手が使えません。
血管が機能しない指は切断になるので、最悪、3本の指先を失います。
無事でもリハビリがあって、1年くらいは右手を十分に使えないと思います。すでに手首すら曲げるの苦労しています。
左手だけでは長い文章を書くのはキツくなったので、更新は一時中断させて頂きます。私事で申し訳ありません。




