リーゼとの交わり
次に目を覚ました時、腕の中に温もりがあることに気付いた。目を開けて確かめるとカリンがすぴ~と寝ていた。
「おいカリン。何をやってるんだ?」
状況を確認するためにカリンを起こす。揺すられても幸せそうに寝ているカリンにデコピンを食らわす。
「あいた! …………お兄ちゃん!? 起きたんだ? 大丈夫なの?」
寝起きのボーッとした顔が瞬時に驚きに染まって、すぐに心配に変わる。
「大丈夫だ。ところでどうなった?」
ゴーレムを倒して安心してから気を失ったのは覚えている。
「うん。お兄ちゃんは生命力と魔力の使いすぎで倒れたの。回復しても短時間で使いすぎたらダメなんだって」
お師匠にも言われてたな。魔法や薬で回復させても倒れるまで使うなって。
「それで代わりばんこに看病してたの。ユリアお姉ちゃんも封印の強化に魔力を使いすぎて、まだ寝てるよ」
ユリアの魔力じゃ封印強化はキツかったか。
「ユリアお姉ちゃんは寝てれば大丈夫だけど、お兄ちゃんは衰弱してたから。治療魔法の使える人を女王さまが手配してくれたんだよ?」
治療魔法は使える人が少ないからな。国ならお抱えが居るだろうけど。
「他のみんなはどうしてる?」
ユリアはあとで見に行こう。
「ビリーさんはお兄ちゃんの代わりに国のお仕事してるよ。マリンさんは治療魔法の練習。リーゼお姉ちゃんは看病疲れで寝てるし、アルちゃんはごしゅじんを守る! って言って魔法練習しすぎて魔力切れで寝てる。ケビンさんは魔法弓の練習中だよ」
俺の剣も折れたし、新しい剣を探さないと。旅を少し中断して準備と休息が必要だ。
ふと窓の方を見ると暗くなっていた。
「分かった。もう遅いし、カリンも今日は休めよ」
寝過ぎて固くなった身体を起こし、眠そうなカリンの頭とお尻を撫でて部屋に帰した。
さっぱりしたくて、その辺を歩いていたメイドを捕まえて、風呂に案内して貰った。サインをねだられたが。
当然のようにメイドも風呂に入ってきて、服を脱がしてくれたり身体を洗ってくれた。若いメイドなので恥ずかしそうだが。
風呂から帰ると部屋にリーゼが居た。
「トール! どこ行ってたのよ。心配させて。もう大丈夫なの?」
俺に駆け寄り身体を支える。病人や怪我人じゃないんだけど。
「大丈夫だ。筋肉が固くなってたけど、風呂に入ったら治った」
リーゼを抱き締めて安心させる。柔らかくて良いお尻だ。
「ほんとに大丈夫そうね。……よかった」
俺の首に両腕を回して身体を預けてきた。首筋に顔を埋めてから、顔を上げて目を瞑る。
何日かぶりのキスを交わし、お互いの熱を確かめ合う。
「……ゴーレムから守ってくれてありがとね。国もあたしも守って貰ってばっかり。目を覚まさないから心配したんだから。無茶はしないでね?」
頬を染めてそう言ったあと、再び強く抱き付いてキスをしてきた。
しばらくイチャイチャすると、リーゼが頬を膨らませて不満そうにしている。
「もっとキスするか?」
お尻を撫でながら訊く。それともムードで怒っているのか? お尻を撫でるのは俺の癖だからな。
そこに可愛いお尻があると、無意識に撫でてしまうので気を付けようがない。
今も気付いたらお尻の感触があったんだよ。
「……違うわよ! なんでお尻は触るのに何もしてこないのよ! ユリアにはしてるんでしょ? 婚約者なのに何もされないと不安になるじゃない!」
それで怒ってたのか。王女だしアレかなと思ったんだけど、女の子は難しいな。
不安を表すように強めの力で抱き付いてくるリーゼ。
俺も抱き返して、リーゼをベッドに寝かせる。
「……変なことはしないで普通にしてね? ユリアに聞いたようなのはまだ早いんだからね!?」
女の子のネットワークは恐いからな。何を話されるか分からないから気を付けよう。
気を付けてはいたが、真っ赤になるリーゼが可愛いくて、いろいろしてしまった。
「もう! トールのエッチ! 初めての女の子にあんなことする!?」
シーツで顔を半分隠して拗ねている姿も可愛いので、またいろいろしてしまった。
そのせいで、リーゼは眠りに就くまでツンツンしていた。が、その姿も可愛いので、デレるまでいろいろした。
やはりツンだけでは駄目だ。デレがないと。
翌日は女王が見舞いに来たが、リーゼがベッドに居たので上手く誤魔化してから、ユリアの見舞いに行った。ベッドの上で退屈そうにしていたユリアとお喋りをする。
「ご主人様も無事でよかったです! ユリアもさっきまで寝てたので大丈夫です。レベルを上げて魔力を増やせば倒れないそうなので、レベルアップのためにカリンちゃんたちと魔物退治に行くんですよ」
「それはいいけど、気を付けろよ?」
「はい! 心配かけてごめんなさいです」
ユリアは疲労していたが、元気は元気だったのでよかった。
俺はユリアの部屋をあとにして、アルテミスの見舞いにも行ったが、お尻を突き出して寝ていたので、撫でてから新しい武器を探して店を回った。
「これからの戦いに耐えられそうにないな~」
オークションのほうが高く売れるから、いろいろな物が出品されるけど、オークションはまだないし。
何軒の武器屋を回ったか忘れそうだ。どっかのダンジョンに落ちてないかな。
夕方まで探したけど、見つからずに城に帰ったら、城門でコゼット王女がプンスカしていた。
「勇者さまはイジワルなのじゃ! 妾はずっとお部屋で待っておったのに、妾をムシして出かけるなんて! 婚約者をほったらかしにしたらダメなのじゃ!」
だからリーゼとはイチャイチャしたんだがなあ。
「あっ! それと勇者さま宛に手紙がきたのじゃ」
懐をゴソゴソして手紙を出す。俺の屋敷のメイド長、パティからの手紙だ。
女の子をほったらかして手紙を読むのもナンだし、手紙を仕舞ってから王女の手を繋ぐ。
「勇者さまは大胆なのじゃ……照れるのじゃ~」
モジモジし出した。どうすりゃいいんだ、女の子よ。
王女を部屋に送って自分の部屋に戻ると、早速手紙を読んだ。
手紙を読み終わると、俺は屋敷に戻ることをビリーに伝えて、帰還の翼を起動した。
屋敷の自分の部屋に戻ると、すぐさま部屋を出て下に降りた。
「リリー!!」
リビングでジュースを飲んでいた鍛冶屋のハーフドワーフ、リリーに声を掛けた。
「トール君!? どこから帰ってきたの? ……まあいっか! 久し振りだよ~」
トテトテ走ってきたリリーを抱き返して再会を喜び合う。
「トール君は勇者さまになったのに、ぜんぜん変わってないね?」
おお! また、ついうっかりお尻を撫でてしまった。気付いたけど気持ちいいから離せない。
「旦那様、お帰りなさいませ」
「わ~! だんなさまだ~!」
使用人たちも挨拶しに、続々とやってくる。
「旦那様のご友人ということでしたので、屋敷に泊まって戴きましたが宜しかったでしょうか?」
パティが確認をする。優秀だ。主人が居ないからとお客を追い返したりしない。
「構わない。そのために奴隷契約を緩くしているんだから、自分で判断してくれないと意味がない」
使用人たちに告げて、リビングのソファーに座ると、すぐに紅茶が出てきた。
「そんでリリー、どうしたんだ? 修行は終わったのか?」
鍛冶スキルのレベルが5になってるし。
「一応終わったよ! そしたらトール君の手紙で魔王軍と戦ってるって知って。おと~さんも行ってこいって言ってくれたし、おか~さんもやる気になったから、店ほっぽいて来ちゃった」
ありがたい話だ。神鉄で武器を作って貰おう。
「リリー。俺の剣が壊れちまってな。困ってたんだよ。神鉄があるから剣を打ってくれ」
作って欲しい剣の概要を伝える。
「う~。ボクも作ってあげたいけど、神鉄は特殊な設備が必要なんだよ~。金剛貨2枚は必要だから手が出ないんだよ」
「それなら問題ない。すぐに用意するから作ってくれ」
金剛貨2枚くらいなら全然余裕だ。
「お屋敷を見たときから思ってたけど、お金持ちになったんだね」
何にせよ金がないとできないことが多いからな~。幸せになるために金儲けしたけど、やはり金は役に立つな。
「わかったよ~。ボクにできる最高の剣を作るね! 任せてよ」
これで剣は大丈夫だ。他の皆の武器や防具も作って貰おう。
急いで用意したので、4日で準備ができた。
屋敷の裏庭に工房を造り、炉を設置する。
冷却のためのマジックアイテムを工房内に複数取り付け、熱さ対策もした。
神鉄は8千度の高熱でなければ融けないので、工房内が非常に暑くなってしまう。
リリーが倒れたら大変なので、最高級の奴を買ったから大丈夫だろう。
事故が起こらないように、炉には炎を逃がさない結界も張られている。
「こんなにスゴい設備を買ってくれてありがとう~。愛を感じるよ~」
リリーのためなら安いものだ。
「とにかく頑張って作るね! ボクにお任せ~」
神鉄を炉に放り込んで、リリーはハンマーや金床を準備した。
世界最強の男になるために、という話を書き始めました。
読んで頂けると嬉しいです。




