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ファーストキスは祝福の中で、ドジは俺の知らない所で

 買った奴隷の子供達の首輪を解除して、買い取った孤児院に連れて行く。

 資金繰りに苦労していた、お婆ちゃん院長に運営費を渡すと肩の荷が下りたようなホッとした表情が印象的だった。

 出来ないことはどうしようもないが、出来ることはしていこう。少しでも俺が気分良く過ごす為には必要なことだ。


 しかし孤児院を出ても気が晴れない。苦労する人間をよそに、悪徳貴族などが好きに生きているかと思うと、自分のことを棚に上げて非常にむかつく。

 俺は我儘なので、自分に甘く敵に厳しいのだ。パーヴェル共々倒さなければなるまい。


 屋敷に帰る途中でリーゼを見掛け、後ろから近付いてお尻を撫でる。


「ひゃんっ! なにするのよ、エッチ!!」


 平手打ちが飛んできたので、サラリと躱す。


「やあ! 俺の可愛いリーゼ。今日も魅力的なお尻だな!」

「って、またアナタなの! ……お尻を触らないで普通に口説いてくれたら、もう少し素直にするのに」


 真っ赤になって小声で呟くが丸聞こえだ。俺の耳は悪くない。

 普通に口説くのもいいけど、やっぱりお尻を触りたい。

 それに、リーゼのムキになる顔も可愛いので、普通に口説くのはたまにでいい。


「ところで、こんな街中で何をしてるんだ? 買い物か?」


 まあ、姫君が自分で買いに行く必要もないし、兵士が20人くらい居るので違うだろう。


「トールに絡んだドラ息子と手下達を鉱山送りにするの。犯罪奴隷は一旦国が管理するから」


 当然だな。犯罪奴隷をいきなり一般に売るなんて有り得ない。犯罪者が買ったら犯罪組織をでかくするし、家族や盗賊仲間が買ったら奴隷にした意味がない。

 犯罪奴隷は契約を国が管理するらしい。契約内容が法律で細かく決まっている。

 刑期が終わると奴隷の首輪が外れる。法に触れることをすれば即死する。体調不良や休憩以外で仕事をサボると電撃。

 買う人間も身元のハッキリした人しか買えないし、仕事内容も届け出をしなければならない。

 手間が掛かるので、犯罪奴隷は相場以上にはならないらしい。


「トールはなにをしてたの? また女の子を口説いて回ってたんじゃないわよね? そんなことしたら怒るからね!」

「妬くな、孤児院に行ってただけだ。運営費を渡して方針を決めたんだよ」


 基本は子供の教育をしっかりすることと、食事の回数を1日3回にして栄養状態を整えることになった。


「そうだったんだ、ゴメンね? 変に疑って。……それに国の仕事なのに頼っちゃって。いままで貴族のせいでなにをするのも時間がかかってたから」


 綺麗な眉を八の字にして(うつむ)く。貴族の力が強い国は大変だな。

 落ち込んでしまったリーゼを抱き締める。


「リーゼ、誰がやったって国が良くなるならいいじゃないか。愛する未来の嫁さんの大事なものは、俺に取っても大事なものだ。俺も一緒に守らせてくれ、リーゼとリーゼの家族のことも、国のことも」

「…………うん」


 お互いの目を見詰めて、固く抱き合う。

 リーゼは涙で濡れた目を閉じて、顎を上に向けた。

 唇が合わさるとリーゼの熱い吐息を感じることができた。

 両腕を俺の首に回し、俺は抱き締める腕に力を込める。



 溶け合うようなキスは、だいたい1時間は続いたらしい。気付いたら兵士達が周りを囲み、こちらに背を向けて護衛をしていた。

 通行人から見えないように、壁役をしてくれたらしい。


「あっ姫様、おめでとうございます! ファーストキスは我らがお守りいたします! どうぞ続きを!」

「お小さい頃から姫様をお守りしておりますが、幸せそうで何よりでございます!」

「いつかアホ貴族とかに持って行かれるのではないかと、戦々恐々としていましたぞ」

「魔王軍と戦うような男らしい方で安心しました!」


 気の利く兵士達だな~。


「ありがとう! って言うわけないでしょ! バカ!! 見るな~~~」


 照れ屋な女の子は可愛いな。……大抵の女の子は照れるか。

 笑顔で真っ赤になって拗ねてしまったリーゼと別れて家路を急ぐ。人混みをすり抜けるように歩いていたら、元浮浪者が俺を拝んでいたのでやめさせた。

 今は従業員として働いている。街から浮浪者が居なくなったと噂になっていたので、指示通りに動いているみたいだな。一安心だ。


 あとはパパりんが出した各国への書簡の返事が来れば、冒険の再開だ。

 封印の遺跡は国が管理しているので、勝手に入れない。更にリーゼは姫なので、国境を勝手に越えられない。

 そもそも遺跡の場所が判らないので、だいたいの場所を訊いておかないと探し回るはめになってしまう。

 一応ビリーが調べているけど、この国には封印の遺跡は1つだけのようだ。

 戦争や時間の経過、内乱や御家騒動で資料が紛失したかもしれないから全部回るのは無理かもな。



 屋敷に着くと、メイド3人娘が迎えてくれた。そんな些細なことが嬉しいのは両親のお陰かもしれないので、産んでくれたことと合わせて感謝しておく。目の前に居たら殴るけど。両親を殴ることができるならトラウマ克服も近いのに。

 ソファーに座り、報告を聞いて雑談する。


「旦那様、お帰りなさいませ。いかがでしたでしょうか?」

「話は付いたぞ。子供達は大丈夫だろう。パティもたまに見に行ってくれ」

「かしこまりました。わたくしにお任せください。不正は許しません」


 パティは生真面目だから、孤児院も安心だ。


「お店からの報告はまとめてお部屋に置いていますので、目を通してくださいね、旦那様?」

「ご苦労さん、フィーネ。量が多くて大変だっただろう?」

「旦那様の出世の証なので嬉しいですよ?」


 働き者だと気にならないのか?


「あの子達の教育は順調でーす! あたしに任せてください!」

「ドジっ娘メイドの言うことは、話し半分で聞いておくよ……」


 そう言ったら、プリシラはぷーっと膨れた。


「ヒドイです! 旦那様ったら、からかって」

「俺はドジっ娘も大好きだぞ。今日はどんな失敗をしたんだ?」


 訊くと首を傾げて答えた。


「えっと、寂しがっていたセリーナと一緒に寝たんですけど、朝起きたら間違えてセリーナのパンツを穿きました! 小さいから変だな~って思いました! あたしお尻小さくて嬉しいです!」


 8才のパンツじゃ14才には小さいよな。むっちり感が増してエロいだろう。見たかった。


「そのあと顔を洗いに行ったら、魔道具の操作を失敗して水をかぶりました! でも目がさめたからよかったですね! いつもは眠いんですよ?」


 へこたれないからドジを繰り返すんだろうか?


「見習いメイド達を起こして食事の準備をしてたら、美味しそうだったから摘まみ食いをしてメイさんとラナさんに怒られました!」


 それはドジじゃねぇな。


「あっ、それから子供達が真似して2重に怒られました!」


 ドジっ娘と言うよりアホっ娘かもしれん。


「ご飯を食べたあと、旦那様をお見送りするときにユリア様の靴を間違えて履きました!」


 それでユリアが見送りに遅れた挙げ句に裸足だったのか。堂々としてたからエルフの風習かと思った。

 最早、パティとフィーネの目が呆れを通り越して絶望だ。


「それから」

「まだあんのかいっ!!」


 さすがの美少女好きの俺もツッコむぞ! 午前中だけでやらかしたな~。


「プリシラ、もういいですから再研修です」

「プリシラちゃんは可愛いけど、さすがに庇えないわ」


 再研修を受けることになったプリシラが落ち込んでいるので、ドジっ娘メイド枠で雇い直した。

 見習いメイドになるところを助けられたからか、真っ昼間からプリシラのご奉仕に熱が入った。熱が入り過ぎて八重歯が痛いけど。


 ユリア達が修行から帰るまで惰眠を(むさぼ)っていたら、見習いチビッ子メイド隊が部屋にやって来た。


「だんなさま~、のいてのいて~。おそうじしますよ~」

「お布団叩きます!」

「だんなさまをお風呂に入れないと!」

「お昼ゴハンを食べさせますね?」


 ステラとティアの10才コンビが俺の手を引いて風呂まで連れて行き、服を脱がして湯を掛ける。


「ゴシゴシしますよ~、痛かったら言ってね?」

「はい! あ~んしてください!」


 風呂に入りながら飯を食うのか? 一度に全部やるなよな~。


「美味しいですか?」

「気持ちいいですよね!」


 チビッ子なので仕方ないけど、何でだ?


「旦那様! 申し訳ありません!」


 パティが風呂場にやって来て説明してくれたことを纏めると、チビッ子達に掃除などを教えてギリギリ合格点を与えたら大喜びして、俺に褒めて貰う為に飛び出して行った。

 掃除は俺の留守中に終わっていると忘れて掃除をしに来た。

 外から帰ったら俺の手足を洗って差し上げると教えたので風呂場に連れて来た。

 食事の世話を習ったチビッ子も早く褒めて欲しくて、順番待ちをせずに風呂場まで付いて来た。


「なるほど……」

「だんなさま~、ゴメンなさい」

「早くお世話したくて」


 素っ裸でショボくれている2人を抱っこして、頭を撫でてやる。


「皆の気持ちは解った。失敗したけど嬉しいぞ。怒ったりしないから落ち込むな。続きを頼む、パティもご苦労さん。叱らないでやってくれ」


 パティが一礼して下がり、泣きべそをかいていた2人も続きを再開した。

 食事が終わり、身体を洗い終わると湯船に浸かる。2人を両脇に侍らして3人でパティの持って来たジュースを飲んだ。


「だんなさまに拾われてよかった~」

「お腹が幸せだよ~」

「俺はお尻が柔らかくて幸せだ~」


 グラスを浴槽の縁に置いて、2人のプニプニのお尻を撫でた。


「だんなさまはお尻が好きなの?」

「あたし達は汚いから、みんな触りたくないって言うのに」

「それは浮浪者だった頃だろ? 今はそんなこと言う奴は居ないって。柔らかくて良い尻だ」


 この娘達も肉が付き栄養失調が治り、身体の調子が良くなったからパーティでもするかな? パーヴェルもレベルが下がって魔力が足りてないだろうし。お祝いくらいはいいか!


「パティ、明日はパーティの準備を皆でしてくれ。アルテミスの歓迎と使用人達の回復の祝いをする。パーティ開始は明後日だ」


 パティを含めた3人が笑顔で返事と歓声を上げた。

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