ようやく街に着いたが疲れたので寝る
盗賊の死体を1箇所に集めて隠しておいた後、隠れながらアジトを探して100メートル程進んだ先に、大きめの木造の家が在った。
見張りが2人立っているので、こっそり近付きレベルと生命力を奪い、手早く殺す。
魔力はまだ奪う必要は無いだろう。魔力を身体に纏っているだけなので、消費されないらしい。
敵を殴ったり攻撃を受けた場合は消費される様だが、攻撃はナイフでしているし受けてもいない。
死体を隠して、音を立てない様に扉を開けてアジトに入る。座っていた男が声を上げるより先に、手で口を塞いでナイフを突き付け、レベルを奪う。
「騒げば殺す、動いても殺す、大人しく質問に答えろ、判ったら頷け、俺は敵対する奴に容赦はしない」
男は顔面蒼白になりながら慌てて何度も頷く。
「では訊くぞ?小声で話せよ。アジトの中に居る数は何人だ?ここに来るまでに10人、見張りを2人殺した、あと何人居る?」
「……それなら俺を含めて8人だ、拐った女が何人か地下牢に居るけど」
地下牢まで有るとは。地下室を作るには時間が必要だし、その間飲まず食わずな訳が無いから、結構年期の入った盗賊団らしいな。
「拐った女の特徴は?仲間の女の数と特徴も答えろ」
盗賊と間違えて殺す訳にはいかない。区別が付く様に訊いて措かないと。
「仲間の女は6人だ、全員20代後半で目付きが悪い、拐った女は全員40代だ」
「はっ?何故40代の女を拐ったんだ、高値で売れないだろう?」
大抵盗賊は若い女を拐って奴隷商に売る筈だが、奴隷は美人が1番高く売れて、若い女、若い男、男児、女児、年齢の高い男、年齢の高い女の順に安くなるらしい。
たぶん役に立つ順に高値で売れるんだろう。子供は労働力が低く性的な事も身体が小さいから無理だし、年齢が高いと働ける期間が短いからだと思う。
年齢が高くても男は力仕事が出来るから女より高い値段が付くのだろう。
「若い奴は直ぐに売るよ。年増を拐ったのは、お頭が熟女好きだからだ」
「…………あぁ~、そう」
とことん趣味の合わない奴だ。収穫は金だけか、むかつくから頭は念入りに殺そう。アンデッドとしても復活出来ない様に。
訊きたい事は訊いたしナイフを首に突き立てた。
「ゴフッ、ガハッ、……な、ん、で?」
血を吐きながら虚ろな目で問う男に冷たく笑い、止めを刺す。
「騒げば殺すと言ったが、助けるとは言って無い。仮に言っても悪党を生かしておく意味がない。利用価値が有るなら兎も角」
ナイフを抜いて部屋を出る前に、一言告げて行く。
「ナイフを突き付けて来る相手を信じるなよ」
それから出会い頭に盗賊女を殺し、6人目は地下室の入口らしき場所で見張りをして居たので、地下室を探す手間が省けた。
1番奥の部屋に頭目が居るらしいので、到着してからショートソードを抜いて魔力を剣に纏って準備する。
「お頭!進入者だ!来てくれ!!」
部屋に向かって声を上げると慌てた様にガチャガチャと金属音が鳴った。
「進入者は何人だ!状況は!?」
怒鳴りながら出て来たむさ苦しい男の足に斬り掛かる。
「ぐあっっっっ!!、グウッッ何だ!?」
乾いた音を立てて骨がへし折れ、盗賊が倒れ込み憎らしげな目を向けて来る。
直ぐにレベルを奪い、両腕を斬り付けると、やっぱり骨が折れる。
何で斬れないんだ?…………ひょっとしたら魔力で覆っただけだと頑丈な鈍器になるのか?
今度は纏った魔力を刃物の様に鋭くして斬り掛かると腕が斬り落とせた。
「があっっっっ、何しやがる!!俺様の腕がぁ!」
取り敢えず回復魔法の実験台にしよう。
「今から回復魔法を使うから騒ぐな、じっとしてろ」
念のため武器と魔力を奪って措いた。
斬り落とした腕に手を翳して魔力を集めて傷の治るイメージをした。
毎日怪我をしていたので、傷の治るメカニズムを知っていた為結構簡単に傷口が塞がった。
「痛みはどうだ?」
「……ああ、足は痛ぇけど腕は痛くなくなった」
よし実験成功だ。
「さて、質問に答えろ。牢と宝物庫の鍵はどこだ?言わなければ殺して探すだけた。お前の仲間は既に19人殺したしな、お前を殺してゆっくり探せば良いだけだ」
観念したのか素直に喋ったので、鍵を回収して頭目と盗賊達の死体を外に出す。
「ちっ、使えない部下共だ!」
仲間の死体を見ながら悪態をつく頭目を冷めた目で見ながら、金目の物を死体から回収して1ヶ所に集めた。そして死体を燃やし終えたら頭目に道を訊いた。
知識は少し有るけど、現在地が判らなければ意味がないのである。
「あっちの方に2日歩いた所に大きな街が在る。タイラルって街だ」
腕が無いので顎で指す。知識に拠るとレクス王国の街だな。国の人口は70万人で、王都はキール、人口20万人だ。
タイラルの街は人口8万人の港町で貿易と漁で成り立っている街の筈だ。
「それじゃ、生まれ変わったら盗賊はするなよ」
右手を向けて炎を放つと、顔に恐怖の色を浮かべた頭目が燃え上がり、のたうち回って息絶えた。
「おおー、結構貯め込んでるな!暫く金には困らなそうだ」
拐われた人が居る部屋より先に宝物庫に寄ったら金や宝、武器防具にマジックアイテムなどが有った。
全部は持って行けないなあ。便利なマジックアイテムは無いかな?この世界には多く入る袋なんかが有るらしいし。
盗賊なら持ってそうなんだけど。商人を襲えば1つや2つ手に入れる事は出来る筈なんだかな~。
「無いなら作ってみるかな?」
適当な袋を持って魔力を注いでみる。袋の中を拡げるイメージでやると、袋が膨らんで破れてしまった。
失敗だ。う~ん、袋の入口に別の空間を創る感じのイメージをしてみよう。
出来たので、ナイフで石に印を付けて放り込み空間を閉じ、また開けたら別の空間に繋がったらしく、驚いた顔の着替え中の女の子が居たので、尻を撫でてから騒がれる前に閉じた。因みにパンツは白だ。
「上手くいかないなあ~。どうするか?」
空間を開きっぱなしにすると魔力を消費し続けるみたいだし、防犯に問題が有る。
「ん?この石は魔法石だ!!」
宝石の中に魔法石を見付けて小躍りしてしまった。魔法石は魔法を封じ込めて、魔力を流しながら決めて措いた呪文を唱えると魔法が発動する石である。
この石なら空間を固定出来るかもしれない。試しに空間を創って魔法石に封じ込めてから、呪文を決めて印を付けた石を放り込んで閉じた。
「よし、オープン!」
こちらの世界の言葉では無いので、呪文を知らない他人が開くのは難しいだろう。人前でやらなければ大丈夫だ。
魔法石の上に黒い渦が出たので手を入れてみると石の感触がしたので取り出す。成功したので、何度か繰り返して確かめる。
「大丈夫らしいな。これで全部持って行ける」
お金を何枚かと少しの食糧だけ袋に入れて、後は全部魔法石に放り込む。宿を取ってからゆっくり確認しよう。
「牢に行くか。………………熟女を助けに」
助けに行く前に、名前を決めて措こう。えーと、透はそのままトールにして、名字はどうするか?
全て喰い尽くすからライオンハートにするか?少し変えて意味は同じレオンハートにしよう。
頻りに礼を言ってくる熟女を連れて街に急ぐ。この人達が居ると迂闊な事が出来ない。
少なくともライフイーターで瞬殺はマズイので、遭遇した魔物はレベルを奪ってから魔法と魔力拳で倒す。
「お強いのですね」
「え、あぁ、それなりに」
熟女が話し掛けてくるが、母親を連想させる様な年齢層の女は苦手だ。早く街に着いて解放されたい。敵対して来るならぶっ飛ばすだけだから楽なのに、接し方が判らん。
盗賊から奪った食糧を食べながら街へと急ぐと1日半で到着した。
街道を行き交う人々に付いて行くとでかい門が在り、並んだ人を門番がチェックしている。
俺達も並んでチェックを受け、盗賊に拐われた人達を引き渡す勢いで出身などを誤魔化して街に入った。
早速宿を探そう。小銀貨1~2枚の少し広い宿の場所を近くの店で訊いて、ついでに着替えなどを買って行く。
この世界のお金は、銅貨、銀貨、金貨が有り、其々小、中、大の硬貨が有る。小が5枚で中に、中が2枚で大になる。
大銅貨10枚で小銀貨に、大銀貨10枚で小金貨になる。大金貨10枚で金剛貨というダイアモンド製の硬貨になり、金剛貨は小の1種類しかない。
この世界ではダイアモンドは結構産出されるらしく地球程の価値は無いらしい。最も高い事には変わりないが。
小は1円玉サイズで、中が100円玉サイズ、大が500円玉サイズだ。
大きな街でも庶民の生活費は大銀貨1枚程度で1ヶ月暮らせるらしい。
1ヶ月は25日で、1年は14ヶ月、350日だ。
宿の場所が判ったので直ぐに向かう。道幅が10メートルくらいで、人は多くても歩き易い。
街の入口から20分程歩いた所に、少し綺麗な建物が増えてきた。
恐らく中心部に近い方が金持ちの区画だろう。治安も良さそうだし、チラホラ身なりの良い人が増えてきた。
宿に着いたので、部屋を取ろうとカウンターに向かう。
「いらっしゃいませ。お泊まりですか?食事だけでも可能です」
俺が声を掛ける前に、男性従業員が一礼して声を掛けて来た。
「2泊頼む。食事は部屋に運んで欲しい」
「畏まりました。1泊小銀貨1枚と大銅貨2枚です」
お金を払って部屋に案内して貰う。12畳くらいの部屋に、ベッドとテーブルに椅子、クローゼットが有る。
共同の大浴場が在るらしいので男が入れる時間に行ってみようと思う。
出掛ける時は貴重品を宿に預けられるが俺には必要ない。
さすがに疲れたので、食事をして風呂に入ってから直ぐに眠ってしまった。戦利品の確認は明日にしよう。