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遺跡探索の準備

「……そんな法外な要求は無理だ」


 おもむろに剣を抜いて虚空に突き刺す。


「ぐっ、あぁぁぁぁ、こ、殺さないでくれぇ!」


 いきなり背中から腹を貫いた剣を呆然と見詰める貴族達。


「空間魔法の使い手か! こんな高度な魔法を簡単に」


 剣を引き抜いて鞘に納める。


「法外もなにも、法を守らない奴等が何を言ってるんだ? 俺は死ぬか真面目に生きるか訊いてるんだ。それ以外の言葉は要らん。因みに王には全て伝えてあるから、お前達を殺しても罪にはならんぞ?」


 腹を押さえてのたうち回る貴族を見て、他の貴族達も渋々従った。


「宜しい。早速仕事をしろ。約束を破ったら国に不要な奴として殺しに行く。死にたくなければ自分の必要性を証明するんだ。言っておくが人質を取ろうなんて考えるなよ? 空間魔法で遠くから殺せるからな。暗殺なんて嫌だろ? 人質は無事でこそ価値が有るんだ、脅してる間に殺すぞ」


 怯えた貴族達は直ぐに仕事に向かった。

 未来のパパりんに報告して、貴族達の金の管理を任せよう。

 毎月莫大な金が入るな。夢が広がるぜ。


 余談だが、この10日後に奴隷保護法、エルフ保護法という法律が公布された。

 奴隷やエルフの虐待等を禁止する法である。

 細かい決まりもあるが、俺が絶対やらないことなので、どうでも良い。

 税制も変わり、どこの領地でも3割までしか取れなくなった。

 酷い貴族は、6割取っていたからな。

 パパりんは仕事が早いな!


 褒美にパパりんから、悪徳貴族と繋がり、国に数倍の値段で品物を売っていた商人の店舗を幾つも貰ったので、数十人の奴隷を買って責任者にする。

 もともと働いていた従業員と協力させて、商売をさせた。

 儲けは店を続ける事が出来るだけで良いので、なるべく多くの浮浪者や失業者を雇う様に指示を出した。

 これで餓死者や貧民が減るだろう。治安も多少は改善する筈だ。



 その日から俺の剣術の稽古も始まった。

 国1番というだけあって、レベルが77もあり、剣術、体術、気配察知、気配遮断、先読み、戦気、光魔法のスキルを全て極めていた。

 戦気は生命エネルギーを使って身体能力を高めたり、攻撃に使ったり出来る、闘気の上位版らしい。


 何でも、国の剣術指南役を務めていたそうで、30代から引退するまで無敗を誇ったらしい。

 人呼んで、光剣カインと言うそうだ。


 カンッカンッと木剣を打ち合う音が城の練兵場に響く。悔しいけど防戦一方だ。

 手加減されてるのに、手も足も出ない。


「大振りの一撃は読み易いし躱され易い! 止めを刺す瞬間でさえ大振りは避けろ! 逆転されるぞ!」


 俺の一撃を躱し、手首を軽く打たれる。

 力が入ってる様に見えないのに、俺が力を抜いたタイミングを狙ったのか、木剣を落としてしまった。


「相手の動きを良く見ろ! 人型である以上、予備動作が必要だ! 振り上げた剣は魔法でも使わない限り下から来ない! 予備動作から次の攻撃を読め!」


 俺の攻撃は、繰り出す前に全て止められた。


「敵の攻撃を読んだら、出鼻を挫け! 振り抜く瞬間が1番威力が乗る。剣を振った勢いが乗る前に攻撃を潰せ!」


 剣を振る前の力が入らない体勢で止められてしまう。


「攻撃する時は(きっさき)で、受ける時は鍔元(つばもと)で受けろ!」


 斬り掛かるが鍔元を鍔元で抑えられる。有効な箇所で攻撃をさせて貰えない。


「身体の軸を真っ直ぐにしろ! 重心移動が甘い! 体勢を崩せば攻撃も防御も力が入らんぞ! 足腰を鍛えろ!」


 受け難い所を狙って体勢を崩され、叩きのめされる。


「無闇に攻撃するな! 相手の隙を探らんか! 隙が無いなら作れ!」


 がむしゃらに放った攻撃は、剣の先端の尖った部分で軽く止められた。

 技量にここまで差があるなんて。


 その日は指一本動かせなくなるまでしごかれた。


 翌日の訓練でも怪我も無いのに、動けなくなる。

 怪我させない様に手加減する余裕があるらしい。悔しい!


「ご主人様、マッサージしますね?」

「お兄ちゃんを癒してあげるね!」


 言葉を返す余裕も無く、城のでかい風呂場でマッサージを受ける。

 使用人達に手紙も書けないので、兵士に言伝てを頼んだ。

 こんなに疲れたのは、終電後の駅の清掃、物流センターの仕分け、引っ越しのバイトを掛け持ちでやった時以来だ。

 そのバイト代も両親に奪われたので、精神的にはまだマシかもしれない。


 返事をする余裕は無いが、お尻だけは魂に懸けて絶対に触る。

 視線で話を促すと、ユリアの修行も順調に進んでいるそうだ。


「精霊の力を宝珠に流す訓練なんですけど、精霊界と繋げっぱなしにするのが、すっごくむずかしいんです!」


 俺の腰に跨がった、ユリアの背中を揉む手に力が入った。


「繋げたあとは、維持するのに魔法結晶の魔力を使う必要があるんですけど、魔法結晶と封印の術を繋げるのが巧くいかなくて……」


 そんな事より背中で感じるお尻の感触が気持ちいい。


「お兄ちゃんの手、皮が硬くなってるね!」


 うつ伏せで背中にユリアを乗せた俺の手を、カリンが優しく揉む。

 腕を足に挟んで、手の平を揉んでいるので、いろんな処がプニプニ気持ちいいな!

 少女の未成熟な足も良い。お尻が丸見えで最高の眺めだ。

 変なポーズなのは、生えてないアソコを見られるのが恥ずかしいので、見えない様にしたそうだ。

 余計に恥ずかしい格好になったけど。

 はあ~、極楽だな!


 筋肉痛が回復魔法で治らないかマリンに訊いたら、治療魔法と言う魔法で治るらしい。

 回復魔法が怪我を治すのに対し、治療魔法は病気等の身体の不調を取り除くらしい。

 高等な魔法なので、宮廷魔術師クラスの人しか使い手が居ないそうだ。

 しかし、第2王女シルヴィアのエクストラスキルの、王女の祝福と言うスキルが、周りに居る味方の疲労を徐々に回復するスキルらしく、その力で俺を癒してくれた。

 因みに、リーゼロットのエクストラスキルは王女のカリスマ。自分以外の味方の身体能力を10%強化するスキルだそうだ。



 翌日も練兵場に俺の雄叫びが響く。

 人体急所を実地で教わっているので、身体のアチコチが痛い。


「トールよ、お主は攻撃を食らうと一瞬硬直するな。弱い相手なら問題にならない僅かな隙だが、達人には通用せぬぞ。……恐いか?」


 痛い所をを突かれる。

 ダメージを受けると、一瞬、嫌な記憶がフラッシュバックして、どうしても怯んでしまう。

 親の事など、もうどうでもいい筈なのに。


「とにかく、お師匠! どんどん攻撃してくれ!」


 絶対に克服してみせる。アイツを倒す為にも。


「……もう私も年寄りだ。若いお主達に任せるしかない。しかしのぅトール、無理はいかんぞ。心にシコリが在るなら仲間に頼るのもよい。逃げ出すのも悪くない。悪いのは現在の自分を認めずに無理に前に進むことじゃ。今は私の様な引退した老人の戯言と切って捨ててもよいから、限界を感じた時にでも、立ち止まってじっくり考えてくれんか?」


 ……俺は焦っているんだろうか? 勝てる自信が無くて誤魔化しているのか?


「考えてはみるけど、今は稽古を付けて欲しい。俺には、まだどうすれば良いか判らん! とにかく強くなりたいんだ!」


 今は誰にも敗けない力が欲しい。


「…………分かった。この老骨に出来る限りの技を教えよう。まずは生き残る事が肝要じゃ! 死ぬでないぞ」


 お師匠の威圧感が増し、ますます俺の身体が自由に動かなくなる。

 その日もボコボコにされたが、トラウマが改善する気配はなかった。



「今日もお疲れ様です、トール様。身体が治るまで、いっぱいお話しして下さいませ」


 シルヴィアは俺の話すアニメの話が大好きらしく、昨日も暇潰しに話したら、眠りに就くまで聴きたがった。

 今日も回復するまで一緒に居るので、お尻を撫でながら話し込んだ。



 それからユリアの修行が終わるまでの5日間、毎日修行して回復してを繰り返して、剣術が4になり、体術1、闘気3、光魔法2のスキルを手に入れた。

 ライフイーターのお陰か、生命エネルギーを操るのは簡単に出来て、お師匠が驚いていた。

 トラウマは消えないが、のんびりする時間は無いので出発する。


「心配は尽きないが、……頼んだぞ。リーゼもしっかりトールの補佐をするんじゃぞ?」

「わかってるわ、お父様。任せてよね!」


 謁見の間に集まり、別れの挨拶をしている。


「うむ! では王として餞別を贈ろう! 小銅貨100枚じゃ!」

「いや何でだよ!!」

「お父様! 王家の恥です! 少な過ぎよ!」


 小銅貨100枚じゃ高校生の小遣いだよ。


「異世界の王は、魔王退治に向かう勇者に、僅かな金を渡して送り出すんじゃよ!」


 ……ゲームみたいだな。


「何でパパりんがそのお約束を知ってんの?」

「何を隠そう、5代前の王が異世界人だったのじゃよ!」


 ああ! そんでリーゼロットも異世界を知ってたのか。


「父上、その辺りにして下さい」


 王子が呆れて諫めている。


「まあ冗談はこれくらいにして、本当はこっちじゃ!」


 兵士が持ってきた宝箱を開けると、手の上に乗るくらいの金色の羽根が有った。

 これは帰還の翼というマジックアイテムで、世界に数個の王家の秘宝らしい。

 対になる目印を設置すると、その場所まで転移出来るマジックアイテムだそうだ。

 目印となる宝珠は10個。帰還の翼を通して魔力を込めると、目印になるらしい。

 帰還の翼は、使うのにMPを300も使うけど、距離は関係ないので便利だ。

 既に城と俺の屋敷に設置してあるそうだ。

 その際に俺の使用人達へ、事情の説明を詳しくしてくれたそうだ。


 手紙で商売の指示を出して措いたが、いざという時は城に頼る様に書いた。

 女騎士が10人も護衛に就いてくれるので、トラブルが起きても安心だ。

 ちょくちょく帰れるし、税金も免除される。

 使用人の生活費は、商売で得た金を使う様に手紙に書いたので大丈夫。



「トール、各国の王に書簡を送った。封印の遺跡に入るには王家の許可が必要じゃから、他国に行ったらまずは城に行くんじゃぞ!」

「妹と世界を頼むよ、トール」

「皆様、お気を付けて。絶対に無事に帰ってきて下さいね」

「過酷な旅になると思うが、私の授けた技が助けになると幸いじゃ」


 パパりん、王子、シルヴィア王女、お師匠が見送ってくれ、兵士達の敬礼を背に受けて、俺達は封印の遺跡に出発した。

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