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出逢ってはいけない2人が出逢ってしまった

 手紙を出し終えたら、兵士に呼ばれて王子と姫が2人やってきた。

 リーゼロット姫はミニスカートに上半身鎧姿で、ポニーテールにしている。


「やあ、君がトールだね? パーヴェルと戦って生き残ったなんて凄いよ! 僕は貧弱だから羨ましく思うよ」


 王子らしき男が、自己紹介もせずに頬を上気させて握手を求めてきた。妹姫と同じ金髪の美形だ。


「こやつは余の息子のアルフレッドじゃ。ひ弱なせいか強い男に憧れを抱いておってな、不躾なのは許してくれんか?」


 息子の態度に呆れながらも頬が緩んでいる。


「お兄様、そろそろトールから離れて下さい! シルヴィの紹介をしますから」

「ああ、すまないね、リーゼ、シルヴィ」


 王子が下がると、身長140㎝くらいの女の子が前に出て、ドレスを摘まんで挨拶してきた。

 カーテシーというやつだ。


「シルヴィアと申します。トール様、お姉様だけではなく、わたくしとも仲良くして下さいね?」


 肩までの金髪ゆるふわウェーブに、可愛いらしい翡翠の大きな瞳、照れた様な表情で見上げてくる。


「お兄ちゃん! お姫様達可愛いね!」


 カリンが嬉しそうに姫達を見ている。

 アイドルとか魔法戦士とかに憧れてるから、お姫様に憧れていても可笑しくない。

 でも実際可愛いな! 口説かないと!


「俺はとんでもない物を盗んで行きました……」

「お兄ちゃん! 決め台詞は早いよ! まだ盗めてないよ! いろいろあってからの名台詞だよ!」

「…………貴方のパンツです!!!」

「ホントにとんでもないな!! いつ盗んだんだよ!?」


 ケビンがツッコミを入れる。


「さっき散歩中に豪華な扉があったから、中に入ってみたんだよ。そしたら可愛いヌイグルミがあるじゃないか。これは可愛いロリ姫の部屋に違いない! と思ってパンツを物色したんだ」


 実に美少女らしい可愛い部屋だった。あの可愛いクマのヌイグルミを抱いて寝てるとか堪らんな!


「って、それはあたしの部屋じゃない! パンツ返してよ!」

「何だって!? あんな可愛いパンツを穿いてるのか!」

「子供っぽくて悪かったわね! ほっといてよ!」


 顔を真っ赤にして騒ぐ。


 う~む、俺としたことが間違えるとはな。

 クマさんパンツだからてっきり妹姫のかと思ってしまった。

 いや、ある意味可愛いか!


「子供っぽくても可愛いから良いんだ。どんなリーゼロットでも可愛いよ。ミニスカートも素敵だ」


 赤くなったままのリーゼロットを抱き寄せて、お尻を撫でる。


「だから! お尻を撫でたら台無しじゃない!」

「お前ホントに不敬罪で捕まるぞ!」

「お兄ちゃんは今日も元気だね! 安心だよ!」

「僕、弟が欲しかったんだよね」

「トール様がお義兄様になるのですか?」

「わっはっは、リーゼが好みじゃったか! シルヴィの方かと思っておった!」

「ユリアちゃんにバレたら恐いわよ?」


 最後にマリンがツッコむが、俺とユリアはラブラブなので大丈夫だ。


「陛下、宜しいのですか? 貴族が黙っていないのでは?」


 護衛の兵士まで貴族を厄介者扱いしているらしい。


「アホ貴族どもに持っていかれるより、気骨のある若者の方がよっぽど良いわい! 娘も満更ではなさそうじゃしの」


 将を射んとするなら、まず馬を射よ。


「お義父さん! 何かお困りではないですか? 貴族関係で」


 未来のお義父さんの隣に座り、肩を組む。


「そうじゃの、もの凄く困っとるぞ! あのアホ貴族どもが毎度毎度ふざけた事を~!」


 青筋を立ててお怒りじゃー。


「あのバカどもは国の事も民の事もまったく考えておらん!」


 そ~と~ストレスが溜まっているらしい。


「国の政治にも関わっとるから処刑もできん! せめて私兵を雇う財力だけでも削げんものか!」


 殺すと政治が滞るからマズイらしい。


「例えば、最近死んだ貴族がいませんでしたか? お義父さん!」

「おお! あれは助かった!」

「悪徳貴族の情報があれば、そのダーティヒーローがなんとかしてくれると思わないかい? パパりん」


 おもむろに立ち上がったパパりんがノートを床に(ほう)った。


「おっと、閻魔帳を落としてしまったのう。無くしたら困るわい」

「とうっ!」


 俺は飛び上がり背中で着地して閻魔帳を隠す。


「いや~、床に寝転がるとパンツが丸見えで幸せだな~」


 勇者は閻魔帳を手に入れた!!


「う~む、閻魔帳を失くしてしまった。仕方ないから諦めようかの」

「パパりん! それらしき物なら窓から飛んでいきましたよ!」


 寝転がったまま伝える。


「それでは諦めるしかないのう!」

「その通りだよ! マイダディ!」

「そうじゃの! 未来の我が息子よ!」


 取り引きは終了したので、立ち上がり閻魔帳を懐に入れた。


「なんか、仲良くなっちゃ駄目な奴等が仲良くなったよーな……。今、目の前で暗殺依頼が……」


 ケビンの奴は失礼だな。


「ケビン、マイダディはノートを落としただけ、俺は未来の嫁さんのパンツを覗いただけ。おかしい事はないさ」

「いや!? パンツ覗いただけでおかしいぞ!」


 口煩い奴だ。


「それじゃあダディ、未来の嫁さん達、行ってくる」


 リーゼとシルヴィの頬にキスをして部屋から出て行く。


「アイツ2人とも嫁にする気だぞ!」


 不埒な男が出ていった扉を見ながらケビンがツッコむ。


「……男にキスをされたのなんて初めてよ」

「お姉様、わたくしもお嫁さんです!」

「姫様その気になってるぞ!?」


 ケビンの言葉に姫達は頬を染めている。


「えっと、……貴族の問題を解決してくれるならいいかな? って思って。ゴブリンキング倒したらしいし、ちょっとスケベだけど顔もカッコいいし、性格も正直だから結婚相手として充分かなって」


 指先をツンツンしながら、どんどん赤くなる。

 どの国でも悪徳貴族は迷惑な生き物である。

 その上、姫ともなれば恋愛結婚は望めないので、好ましい相手と結婚出来るなら、それに越した事は無いのだ。


「ところで、アイツは何しに行ったんだ?」

「お兄ちゃんだし、貴族の人達をやっつけに行ったんだよ!」


 ケビンの疑問に両手を突き挙げてカリンが答える。兄をこれっぽっちも疑ってない元気な答えである。


「なんにせよ、貴族の問題が解決してくれるなら、ありがたいですね父上」

「うむ、そうじゃな! また余を喜ばせてくれるじゃろう」


 暢気な王族である。余程貴族が嫌いらしい。


「よし、婚約発表の準備じゃ!」

「判りました父上!」

「お父様もお兄様も気が早いわよ! あたし達の恋愛なんだからほっといてよね!」


 行動の早い父と兄を怒鳴って止める、真っ赤な姫君。

 怒られてしょんぼりする父と兄。

 話に付いていけずポヤッとしている妹姫。


「この国って大丈夫なのか?」


 と不安がるケビンに同意している兵士。


「お腹空いちゃった」

「それじゃ買い出しのついでに夕飯にしましょうか?」


 カリンとマリンはまるで母娘の様だ。政治には興味が無いらしい。

 纏まりの無い集団の1日は、そんな感じで終わった。




「金庫なんか俺には関係ないのだ!」


 俺は金庫の中を空間魔法で取り出してアイテムボックスに入れる。

 ついでに気絶させたバカ侯爵の顔に落書きをして、次の屋敷に向かった。

 次は辺境伯のくせに領地を守らず、王都で権力争いをしているバカの屋敷だ。

 警備の兵士や使用人をライフイーターで気絶させて、行き掛けの駄賃に可愛い貴族娘のパンツを剥ぎ取って行く。

 アホ辺境伯の寝室に忍び込み、すぐに気絶させて金庫の中身を奪う。

 昼間から翌日の明け方まで王都に在る悪徳貴族の屋敷を全て回り切った。



 その日の昼に貴族の集まる城のサロンに顔を出す。


「なんだ貴様は! 平民が居て()い場所では無い!」

「我等は重要な会議中だ! 卑しい平民は出て行け!」

「なに、皆様落ち着かれよ。下賤な平民ごときに言葉が通じるはずが無い」

「はははッ、それはそうだな! 奴等は家畜も同然だ」


 それを無視して椅子に座り、足を組む。


「貴様! 無礼な! 平民の分際で貴族に逆らうか!?」

「黙ってこれを見ろ。低脳なバカ貴族どもでも見覚えがあるだろう?」


 テーブルの上にバサッと書類を乗せる。


「いろいろとやらかしたな? 国庫から無駄遣い、領地経営もせずに、その金でこっそり兵を集めたり。更に公爵の暗殺、失敗したけど国王の暗殺も暗殺ギルドに頼んだ様だな? 裏切らないために念を入れるのは良いけど、文書は始末しておくべきだったな。信用出来ない奴と取り引きなんてするから、証拠を残すはめになる」


 信用のない奴は口約束なんて出来ないからな。


「暗殺ギルドも今頃は牢屋で別荘生活を楽しんでいるだろうな」


 青くなった貴族の目の前に、昨夜殺した貴族の首を17個並べる。

「これは茶会土産だ。返答次第でお前らの首も並ぶぞ?」


 貴族達がゴクリと唾を飲み込む。


「き、貴様、昨夜の賊か!?」


 立ち上がった貴族を睨み付けてライフイーターを発動する。


「ぐっ、ち、力が抜ける」


 椅子を倒し床に転がる。


「何をした!?」

「黙らなければお前達もこうなるぞ? まだ殺しちゃいないから安心しろ。返答次第だと言っただろ?」


 ヒッ、と短い悲鳴を上げて黙ったので、話を続ける。


「俺からの要求は真面目に国に尽くすこと、領地経営に必要な資金と国に払う税を除いた個人収入を毎月9割俺に払う。使用人の給金も必要な支出として省く。私兵は必要以上雇わない。民に迷惑を掛けない。最後に……俺をこれ以上怒らせるな」


 俺が死ぬか、マトモな当主に変わるまで貧乏暮らしをして貰おう。


「返答は?」


 貴族達は死刑宣告をされた様な顔で震えた。

今回のタイトルは、森○レオさんのナレーションふうにお願いします。

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