カリンの力は派手スキル
「ところで、何でお兄ちゃんなんだ?」
お兄さんって呼んでたのに、いきなりお兄ちゃんになった。
「カッコいいお兄ちゃんが欲しいなって思ってたからだよ?」
まあ理由なんてそんな物だよな。
「お兄ちゃんって王都に住んでるの?」
「ああ、つい先日家を買って商売を始めた」
「もうお家買ったんだ!? 来たばかりなのにスゴいよ!」
奪った金で買った物だしな。昨日のゴブリンキング退治で儲けた金でも買えるけど。
「踊り子って生活は出来ていたのか?」
「贅沢は出来ないけどね。ちゃんと毎日、大銅貨3~4枚くらい稼げてたよ!」
一般市民の最低限の生活費に届かないから、安宿に泊まる生活だろうな。
旅客船じゃなく、荷物を運ぶ船に乗ってたからな。美少女が貧乏暮らしって切ないな。
これからは良い暮らしをさせてやりたい。
俺の腕にしがみ付いて、機嫌良くアニメソングを歌っているカリンを見ながら家路を急ぐ。
魔力も徐々に回復してきたので、空間転移で距離を稼ぐ。
魔力回復ポーションは高いから無駄に使いたくないし、魔法結晶を50個買って魔力を貯めてから、マジックイーターで回復するのが良いかもしれない。
魔法結晶なら自然に魔力が貯まるし、マジックイーターは同じ相手には1日1回しか使え無いが、複数の魔法結晶を持って措けば問題無い。
手の平に包めるサイズの魔法結晶なら、人間の魔力を全回復するくらいの魔力は貯まる。
1日に半分の25個だけ使えば、魔力が貯まって無くて回復出来ない事態は回避出来る。
魔法結晶は高いが、奴隷の首輪に付いていたのは少し小さ過ぎるし、初期投資と思えば安い物だ。
「お兄ちゃんは便利な魔法が使えるんだね。……いいなぁ」
「お前も魔力は有るんだから練習すれば使えるさ」
「魔法の教本は高くて買えないんだ……」
なるほど、俺は10代の平均的知識を与えられたから、10代の魔法使いの知識も有るけど、カリンは両親が居る様に神様に調整されたから、庶民生活で手に入れた知識しか無いんだろう。
「心配しなくても俺が持ってるから、カリンにやるよ」
「ほんと!? やったあぁぁぁぁぁ!!!」
跳び上がって喜んでいるカリンは良いな。美少女は本当に世界の宝だ。
王都に帰って来た時には、もう夕方だった。
早速マジックアイテムショップに行って魔法結晶を50個買ったら、カリンがお金の使い方が荒いと騒いだ。
「もう、お兄ちゃんってば……2個で良いのに勿体ないよ!」
「いざって時に後悔してもしょうがないだろ?死ねば金を幾ら持ってても意味が無いんだ、これは無駄じゃない」
「そうだけど……庶民には理解できないよ」
命には換えられないのだ。
串焼きを買ってやったら機嫌を直したので、家に帰る事にした。
コロコロ表情が良く変わる娘だな。アイスクリームも食べさせたい。
「ほえぇ~、お兄ちゃんのお家大きいな~」
「旦那! お帰り!」
「旦那様、今日も売り切れです!」
カリンが家を見上げて感心している間に、警備に付いていたアリッサと、アイスクリームの販売を終えて片付けをしていたフレイが寄って来た。
「あれ? 旦那、また女の子口説いてきたのかい?」
アリッサが呆れた様に失礼な事を言う。
「旦那様、奴隷の身で言う権利は有りませんが程々にして下さいね?」
フレイまで口説いてきたと勘違いしている。
「兎に角、風呂の用意をパティ達に頼んでくれ」
「アタシが伝えてくるよ」
アリッサが屋敷に駆けて行く。
アイスクリームを冷やして措く、冷気の発生するマジックアイテムを片付けている使用人達の挨拶に出迎えられて、風呂にカリンを案内する。
「あっ! ご主人様、お帰りなさい。子供達のお洋服を買って来ましたよ。皆喜んでます!」
風呂に案内して部屋に向かうとユリアが出迎えてくれた。
「ユリア、ただいま。危ない事はなかったか?」
ユリアを抱き寄せてキスをする。
「ちゅっ…………はい! 皆さんエルフに親切です!」
身振り手振りで今日の出来事を話すユリアは、楽しそうで何よりだ。
ソファーにゆったりと身を沈めて、ユリアの可愛い声を聴く。
一通りの話が終わったら、仲間にしたカリンの事を切り出す。
「それでユリア、新しい仲間を見付けたんだけど良いか?」
ユリアの意見も大事だ。
戦闘に支障が出るなら仲間を増やすのは反って危険だ。
「新しい仲間ですか? 戦いは人数が多い方が安心です!」
どうやら仲間を増やす事は賛成みたいだ。
「女の子なんだけど、大丈夫か? 思ってる事を聞かせて欲しい。人間は自分の事さえ理解してない事も有る。気持ちを隠さずに何でも話してくれ」
話す事でユリア自身も解っていないユリアの気持ちに気付けるかもしれない。
ずっと一緒に居る為には努力が必要だ。
「女の子ですか? ……ご主人様がユリアをいつも可愛がってくれるなら大丈夫です」
俺がユリアを可愛がらないなんて有り得ない事なので大丈夫だ。
返事代わりに長い口付けを交わす。
それは、カリンが風呂から上がるまで続いた。
「初めまして! カリンって言います!お兄ちゃんの妹です!」
風呂上がりに、俺の部屋で自己紹介をするカリンは説明が足りてない。
「ご主人様の妹さんなんですか?」
「いや違う。同郷だからお兄ちゃんって呼んでるんだ」
「カッコいいお兄ちゃんが居ると嬉しいよね?」
説明をすると納得したので、エクストラスキルを見せて貰う。
「えっとね? あたしのもう1つのエクストラスキルは、魔法戦士変身なんだ」
魔法戦士って……カリンは魔法が使えない筈だが、どうなんだ?
「このスキルはね、魔法戦士に変身して強くなるスキルなんだぁ」
スキルの説明が下手なので、ステータスのスキル説明を読んで貰った。
それを要約すると、魔法戦士変身は1日合計3時間だけ魔法戦士に変身出来るスキルだ。
変身している間は自分のレベルに10レベルをプラスする。
要するに3時間だけパワーアップ出来る。
レベルアップに必要な経験値は、元のレベルの必要経験値で良い様だ。
「10レベルも強くなれるなんて凄いです! カリンちゃんは立派です!」
「エヘヘ、ありがとう! ユリアお姉ちゃん」
仲良くやってくれそうだ。
安心したので取り敢えず実際に変身して貰う。
ソファーから立ち上がり、部屋の中央の広い場所に行く。
「いくよ! お兄ちゃん! 変身! 魔法戦士カリン!」
可愛いポーズを取ったカリンの身体が光り出す。
服が消えたが光の所為で見えない。チッ!
カリンの髪がサイドテールからツインテールに変わる。
光の帯が身体に巻き付き、ピンクと白を基調とした、ヒラヒラでミニスカートのアイドルが着るステージ衣装の様な服に変化した。
身体から発していた光が弾けて背中に集まると光の翼になった。
目を開けたカリンの頭上に天使の輪が現れる。
クルッと回ったカリンがビシッとカッコ可愛いポーズを取る。
「愛と正義の光の天使が悪を討つ! 魔法戦士カリン参上です!」
俺とユリアがポーズを取るカリンを見詰める。
「わ~、カリンちゃん可愛いですね! ユリアも変身したいです!」
え~~~~~~~~~~、この娘達って羞恥心が無いの?
「お兄ちゃん? どうかな?」
期待している! 俺は美少女の期待に応える男だ! 頑張れ男の子!
「凄く可愛いよ。俺の前でだけ見せて欲しい」
人前ではちょっと。
男はコスプレ大好きだけど、いきなりするとびっくりするから、女の子達は気を付けてくれ!
コスプレは、やってと言われて恥ずかし気にするのが萌える。
「この力でお兄ちゃんを守って上げるね?」
「人前では使わない様にね」
「え~、何で?」
「……可愛いから一人占めしたいんだよ。それに可愛いさに目が眩んだ男に誘拐されたら困る」
人前で使うのが危険なのは確かだ。
「お兄ちゃん……うんっ、判ったよ! お兄ちゃんの許しが無かったら変身しない!」
素直な娘で良かった。
「もう、お兄ちゃんったら……やきもち妬きなんだから」
モジモジして照れている。
なんとか思い止まってくれたか。
これを期に、ユリアにも俺のレベルイーターを除いたエクストラスキルを教える。
ゴブリンキングの時にいきなり回復した事を不思議に思っていたらしく理由が判って納得してくれた。
何も訊かなかったのは、俺の事を信じたからだそうだ。
使用人達にもカリンを紹介して、これからは一緒に暮らす事を告げた。
好意的に受け入れてくれて助かった。
夕飯は、久し振りのマトモな食事だったらしく大喜びだった。
見習いメイド達と一緒に泣きながら食べている。
「お米のご飯が食べられるなんて!!! 7才の時以来だよ~!!」
米は高いからな。皿に1杯の炊いた米でパンの20倍はするから庶民だと手が出にくい。
もう食べられないかも、と思っていたアイスクリームも3人前食べた。
「こんなに凄い部屋に住めるなんて……お兄ちゃんありがとう!」
寝間着に着替えたカリンが抱き付いて良い匂いだ。
天蓋付きのベッドで眠るカリンの頭とお尻を撫でて、自分の部屋に戻る。
ユリアと風呂に入り、ベッドの上で愛し合った後、眠るまでユリアと話をする。
「いつも相談無しに決めて悪いな」
「いいんです。ユリアは何があってもご主人様に付いて行きます」
腕の中でモゾモゾして、位置を調整するユリアにキスをして、抱き合って眠りに就いた。




