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魔法が欲しいから練習してみる

 今俺はデカイ猪の魔物の突進を必死に避けている。異世界ライフ始まって以来の忙しさだ。ファミレスのバイトの皿洗い並に忙しい。敵はレベルを奪っても結構強い。岩に激突する度に岩にヒビが入る威力だ。剣で斬り掛かる気にはなれない。練習がてら1匹ずつライフイーターを掛けたが、手加減し過ぎたらしく2匹のワイルドボアの元気は休日の子供並みだ。

 ターゲットが選べる事と手加減出来る事が判明したが凄く面倒な事になった。

 敵のステータスが見られるスキルを手に入れないと手加減が巧くいかない。

「どうすりゃ良いんだ?ライフイーターは同じ相手には24時間通用しないのに!」


 猪突猛進なので避けるのは簡単だが、分厚い筋肉の所為(せい)で斬れない。

 ぶつかる度にダメージを受けているらしいから、(いず)れは倒せるだろうけど、体力が持たない。


「よしっ、ゴブリンの巣に誘導して身代わり作戦だ!」


 数が多くて断念したゴブリンの巣に向かって走り出す。


「ブヒッブヒッ」


 鼻息荒く追い掛けて来る。何か恨みでも有るのか?そうか、レベルを奪われた恨みか。

 頭悪そうな癖にしつこい奴だ!


「どっか行けー!あほー!ブタ野郎!!」


「ブヒッブルルッッフゴォォォォォ」


 ワイルドボアのスピードが上がる。


「うわっ通じた。益々怒ったぞ!愛が有れば言葉の壁を越えられるんだな~。愛は無いけど」


 木々を薙ぎ倒しながら追い掛けて来るワイルドボアをジグザグに走って(かわ)しながら、ゴブリンの巣に急いだ。

 やっと洞窟の前に着いてゴブリンを誘き出す為に騒ぐ。


「ゴブリンのあほ~。チビ、短足!!」


 悪口に反応したのか、ただ騒がしかったからかゴブリンが出てきた。


「やった!あとは任せたぞ?今だけは仲間だ!」


 ワイルドボアをゴブリンに押し付けて俺は茂みに隠れて仲間達の活躍を見守る。

 蹴散らされながらも果敢に武器を突き立てる仲間達の勇姿に敬礼を送りながら、徐々に離れて行く。


「ふう~助かった。お前達の犠牲は寝るまでは忘れない!!」


 一応感謝はする。でも、もう仲間じゃないので気にしない。俺は過去は振り返らない男。親の事すらもうどうでも良い。

 しかし学習は必要だ。遠距離攻撃手段が要るので魔法を覚えよう。なぜかMPは有るんだし魔法を修得出来る筈だ。

 魔力が何で有るかはよく解らないけど、マジックイーターを覚えた時に、魔力を操れる身体になったのかもしれない。



 知識に拠ると、魔法は魔力を集中し変化させて、炎や風などに変える。集中力と想像力が重要らしい。

 子供の頃から親の暴力に(さら)されて無の境地に達する事が出来る俺には集中は簡単だ。

 殴られている間に別の楽しい事を考えて過ごした想像力は実物を見なくても絵に描ける程だ。

 きっと出来る筈だ。魔力の操作さえコツを掴めば。取り敢えず右手に集中してみたが何も感じない。


「おかしいな?MPは有るんだし魔力が無い筈は…………あっ、そうだマジックイーターで吸収する時に魔力が動いているんだから、その感覚でやってみよう」


 吸収する時に入ってくる力を右手に集めようとしたら身体の中から熱が発生するのを感じた。

 その熱を右手に集中させると右手がぼんやり光り始めた。しかし成功した事に喜んで気を抜いたら、光りが霧散してしまった。

 自然に出来るくらいじゃないと戦いには使いにくい。この世界の魔法使いは大体後衛なのは、この所為だろう。

 集中や魔法のイメージ方法は人其々(ひとそれぞれ)だけど、殆んどの魔法使いは使う魔法を表した呪文を唱えるらしい。


 もう1度試し、右手に集中すると光りが集まり始めた。それを炎に変える為にイメージする。

 ガスコンロの炎をイメージしたら蒼白い炎が右手から吹き出し、炎を右手に纏っているが熱くは無い。


「炎が飛ばないな。これで殴ればダメージが高そうだけど、遠距離攻撃では無いぞ。」


 右手を前に突き出して炎を球体にして飛ばすイメージをしてみると、右手に纏った炎が徐々に凝縮されてバスケットボールくらいの大きさの球になった。

 飛ばすのはちょっと難しいな。撃ち出すイメージにしてみよう。投げ付けるより速く飛びそうだ。

 イメージすると炎が野球のボールみたいな速度で飛び出した。あっという間に岩に着弾して炎を撒き散らす。

 炎が収まると、岩に焦げ目が付きシューシューと煙が上がっている。

 まあコンロの火じゃこんな物だろうな。今度は岩を融かすイメージをして魔法を撃ってみよう。炎の色は何色でも関係ないだろう。物理法則の炎じゃ無く、魔力の炎だし格好いい色にしてみよう。


 岩に向かって右手を突き出して、今度は炎を飛ばすまでイメージしてみた。

 黄金の炎が火炎放射器の様に吹き出し岩に当たると徐々に岩を融かしていった。球体のイメージを忘れてしまった。慣れるまでは練習が必要らしい。

 でも強敵にも通じる攻撃手段が出来たから、効率的にレベルアップが出来そうだ。

 ステータスを見るとMPが半分以下になっている。スキル欄に魔力操作と火炎魔法が有る。

 この調子で他の魔法も覚えたいから、敵を探して魔力を回復しながらレベルアップをしよう。

 MPが増えれば練習量も増えるし魔物に遭遇しても安心だ。どんどん強くなって好きに生きよう。

 国でさえ俺に手が出せないくらいの力を手に入れる!まずは強くなって金を稼ぐ。

 金が無くてやりたい事も出来ないのは嫌だ。実力さえ有れば金を稼ぐ手段には困らない。


「俺の幸せの為に全ての敵を喰らい尽くしてやる!邪魔する奴は許さない!!」


 叫び、獲物を求めて森の中を歩き回った。



 索敵していると草むらからインプが出て来た。体長50㎝程度の大きさで簡単な魔法を使うらしい。

 一応悪魔族に分類される老人の様なシワくちゃの顔に青い体色、コウモリの様な羽根の魔物だ。

 お互いにいきなりだったので固まっている。しかし美少女や美女以外と見詰め合う趣味は無いので、腰のショートソードを抜いて斬り掛かる。

 相手も我に返ったのか、小さな身体を活かして跳び跳ねながら躱わし魔力を集めている。

 取り敢えずレベルイーターでレベル奪い、距離を取る。魔法を吸収する練習がしたいからだ。

 インプも俺を見ながら魔力を集中している。インプが口を開けて光線を吐き出した。

 すかさずマジックイーターを発動させると、光線は俺の身体に当たる前に消失する。

 効果範囲に居るからかインプからも吸収してしまったらしい。やっぱりコントロールが難しい。

 魔力が回復出来たので剣の練習の為に斬り掛かる。しかし敵は素早く、なかなか当たらない。


「はあっはあっ、くそっ、ちょこまかと逃げやがって!」


 剣の練習になってるか怪しいな。仕方ない、毎日素振りをするとして、剣術が使い物になるまで戦闘は拳と魔法でしよう。

 さっきインプが使った奴を真似してみよう。どうやら魔力をそのまま放出したらしい。

 魔力を集中する場所は何処でも良いみたいだから、目に集めて怪光線を出してみたい。

 魔力が無いからかインプは攻撃せずに逃げる隙を伺っているので、逃がさない内に仕留めよう。

 剣で斬り掛かり、避けた瞬間に顔を向けて光線を放つ。両目から光が伸びてインプの身体を撃ち抜く。

 目で見るだけなので狙いが付けやすい。しかし急所が人間と違うのか、血を吹き出しながらも着地した。

 直ぐに剣を左手に持ち変え、右拳(みぎこぶし)に魔力を込めて殴り飛ばす。

 ダメージを受けてフラついていたインプは避けられずに直撃すると、思ったより威力が高かったのか頭が潰れてしまった。


「咄嗟に魔力を込めてみたけど、魔力は色々応用が利きそうだ」


 武器に纏って威力を上げたり、身体に纏えば武器にも防具にもなりそうだし、頭を潰したのに手が汚れてない。

 魔法もイメージで色々出来そうだから試してみたい。出来れば荷物を仕舞う魔法が欲しい。

 剣術の練習と一緒に魔法の研究もしよう。イメージ次第なら知識が無くても大丈夫かもしれない。

 剣を納めてインプの羽根をナイフで切り落とす。薬の素材になるらしく買い取りをしている。

 今日は水場の近くで木に登って野宿しよう。さすがに疲れたし陽が落ち始めた。



 翌朝、魔物や盗賊の襲撃を警戒して余り眠れなかった俺は、木の実や食べられる野草を食事にして、川で水浴びをした。

 剣の素振りを300回してから、魔法の練習を魔力が半分になるまで続けて、森の出口を探しながら出会った魔物を倒してレベルを上げる。



 毎日同じ事の繰り返しと睡眠不足から、かなりイライラしながらワイルドボアの肉を歩きながら食べていると、武装した盗賊らしき連中を見つけた。

 話の内容から察すると、仕事帰りらしい。10人程の男達が手に入れた金や宝石で女を買うだの、何人殺しただのと自慢気に語っている。

 むかつく奴等だし、俺のレベルイーターが人間にも通用するのか試してみよう。あと、金も欲しいから盗賊のアジトまでこっそり付いて行って皆殺しだ。

 魔力で身体を(おお)って気配を遮断する方法を編み出したので、獲物を狩るのが凄く楽になった。

 どうやら魔力は空気中にも存在するらしく、全身に纏うと自然と同化した様な状態になる、動物にも音を立てなければ背後からなら簡単に近付ける。

 (ちな)みに、空気中の魔力はマジックイーターで吸収するのは無理だった。

 ターゲットを認識出来ない所為か、俺の練習が足りなくて使いこなせていないからだろう。

 俺のレベルも9まで上がったし、魔法の発動も8秒以内で出来る様になったし、剣の攻撃も当たる様になったから大丈夫だと思うけど、アジトに到着する前に倒してしまおう。

 数を減らしてから奇襲を掛ければ俺1人でも倒せる筈だ。しかし相手のレベルが判らないから不安は有る。

 何にせよ強くなるまでは慎重に行こう。レベルが上がれば相手もそれだけ弱体化できるし、暗殺も簡単に出来る。

 この力は秘密にしておかないと、バレたら捕まりそうだ。怪しまれたら魔法で弱体化させた様に誤魔化そう。


「もうそろそろアジトに着く。お前ら周囲を警戒しろ!」

「判った、俺はあっちに行く」

「じゃあ俺はこっちだ」


 盗賊達が散り散りに周囲の索敵をしに行く。チャンスだ!1人ずつ倒そう。

 離れた茂みに隠れて、こっちに来るのを待つ。1人が近付いて来た瞬間、レベルイーターでレベルを奪い、ライフイーターで生命力を奪ってよろけた男を茂みに引き摺り込み、左手で口を(ふさ)いでナイフで頸動脈を斬り裂く。

 血が噴き出すが横なので身体には掛からない。まずは1人だ。次の獲物はその場に残ったリーダーらしき男だ。

 指揮系統は潰しておくに限る。殺しの興奮も有ってか驚く程簡単に連続殺人が出来る。

 ひょっとしたら10数年分のこの世界の知識のおかげで、この世界に馴染んでいるのかもしれん。


「うっ、何だ?……力が抜ける」


 魔力を纏ったまま茂みに隠れて近付き、リーダーらしき男のレベルと生命力を奪い、膝を付いた男の背後から首にナイフを突きたてた。

 死体を茂みに隠して、次の敵を追い掛けた。それから10分もしない内に盗賊達をかたずけて、アジトを探した。

更新は2~4日くらいの頻度になりそうです。

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