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俺とゴブリンキングが決着をつける

「ご主人様ぁぁぁぁぁ!!」


 ユリアの叫びが洞窟内に響き渡る。


「グゥゥアアアッギャギャ!」


 ニタニタ薄ら笑いを浮かべて、俺に止めを刺そうと棍棒を振り上げて歩いて来る。

 ドスドスと足音が徐々に近付いて、地面を震動させる。ユリアが言い付けを破り、ゴブリンキングを杖で叩いて阻止しようとするのだが、ユリアの腕力では、例えゴブリンキングの倍のレベルが有っても、基本的な肉体の強さが違い過ぎて魔法以外通じない。


「待って下さい!ユリアが相手です!こっちを向いて!」


 自分を傷付けられる相手ではないのが判っているので、まったく無視して俺に止めを刺しにやってくる。

 数十メートルの距離が縮まりゴブリンキングが止まる。良し、漸く効果範囲に入ってきた。


「ユリア!離れてろぉぉぉぉ!!!」


 早速ライフイーターを発動させて回復する。

 棍棒を降り下ろす瞬間、急に力が抜けてしまい勢いが緩む。

 俺は前転して棍棒を躱し、ゴブリンキングの股の下に潜り込んだ。

 剣を弾き飛ばされていたので、空間魔法を封じた魔法結晶から剣を取りだしキングの急所に突き立てた。

 臭い返り血を浴びるが気にしない。


「グゥギャアアアァァァァァァァァァァ!!!!」


 男の人生を終わらせる俺の必殺の一撃が決まったぜ!!

 股間を押さえながら俺の足下に這い(つくば)るキングは、最早二重の意味でキングではない。


「ハアッ、ハアッ、ハアッ、…………止めだ!」


 ユリアと一緒に距離を取ったら、残りの魔力を()ぎ込み、洞窟を壊さない様に爆発の範囲を抑えた爆裂魔法を発動させて、股間の傷を更に抉る。


 爆音を響かせてキングの命も完全に消えた。

 ユリアが腰を抜かして座り込んでいる。その頭を優しく撫でて安心させたら、しゃぁぁぁぁぁぁ、という音と共にユリアのお尻の下に水溜まりが出来た。


「うぅっ、グスッ………………見ないで下さい、ご主人様」

「……まあ気にするな。戦場では良く有るから」

「よく有っても無くても恥ずかしいんです!!!」


 女の子は大変だな。美少女のお漏らしなら可愛いもんだが。


「ユリア、本当に恥ずかしい事じゃない。俺はどんなユリアも愛している」


 しゃがんでユリアの肩を掴み目を見詰めて愛を告げる。


「こ、こんな時に言わないで下さいよ……」


 恥ずかしそうに頬を染めているが、嬉しいのは隠しようがなくはにかむ様な笑顔だ。

 空間魔法を封じた魔法結晶、面倒だからアイテムボックスと呼ぶ事にする、からパンツとタオルと着替えを取り出し、ユリアに渡してからゴブリンクイーンに向かう。


 妊娠中で、数十匹のハイゴブリンの赤ん坊を腹の中に宿しているので、腹が膨らみ過ぎて動けないクイーンが俺の事を、焼き付く様な視線で睨んでいた。


「お待たせしたな?次はお前の番だ」


 途中で弾き飛ばされた剣を拾い上げ、クイーンにお別れを告げた。

 キングを倒したので、俺とユリアはレベルが上がって34と21になっている。

 ダメージを与えたら経験値を貰えるらしい。敵とのレベル差が余り無い上に、レベルが上がると必要経験値も上がるので、俺の上昇値は低いがユリアは6も上がった。



 戦闘中にライフイーターでクイーンのHPも奪ったので、既にグッタリだ。


「これならユリアの方がレベルが1高いし殺れるか」


 まだHPがそこそこ残っているので減らして措こう。

 それにしても、ユリアの最大HPが133しか無いのに、クイーンの最大HPは、レベルが27も下がったのに518も有る。


 種族差の所為かステータス成長率が違い過ぎる。

 レベル1の強い魔物を倒すのと、レベル50の弱い魔物を倒すのは、どちらが経験値を貰えるのか。


 ユリアのMPも少ししか回復していないので、一撃で殺せるくらいには減らしたい。

 腕を斬り落とすとガクッと減り、血が流れる間も減り続けている。

 あと数分で気絶するまで下がるだろう。


 着替えを終えたユリアが真っ赤な顔で脱いだ服を自分のアイテムボックスに入れた。

 因みに俺とユリアのアイテムボックスは、魔導列車の線路と同じ材質の鎖でガッチリ繋いで服の下に隠し持っている。

 もっとも起動言語を設定してあるので、盗む様な奴は余り居ないと思うが。


「ご主人様、クイーンはどうなりました?」

「見ての通り死に掛けだ。ユリアが止めを刺してレベルを上げると良い。魔力が無いならMPポーションを使って良いから」


 俺は既にダメージを与えているので、経験値は入る。

 ユリアの方がクイーンよりレベルが高くなったからレベルアップするかは判らんけど。


「分かりました。ユリアにお任せです!」

「ギャギャアアアァァァ!!!!」


 突き出した両手から風の刃を飛ばしてクイーンを切り刻む。

 断末魔の悲鳴を上げてクイーンとハイゴブリンの命の火が吹き消された。


「ご主人様ご主人様!ユリアはレベル22になりました!」

「俺は上がって無いな」

「キングやクイーンを倒したのに、……意外にレベルアップしませんでしたね?」


 それは俺が相手のレベルを下げていたからだ。もったいないが死ぬよりマシだ。

 レベルが低い魔物からは奪わない様にする。


「それにしても疲れたな?ゴブリン達の死体をモンスターボックスに入れて帰ろう」


 魔物の死骸を入れる用の魔法結晶だ。

 食べ物や水と一緒にしたくない。


「ハイ!お家に帰ったらマッサージしますね」


 俺もマッサージをしてやろう。重点的にお尻を!!



 ゴブリンキングとクイーンの死骸を仕舞おうとしたら、部屋の外から靴音が聴こえてきた。

 ユリアを背中に隠し剣を構える。

 現れたのは、灯りを持った冒険者らしき3人組だった。


「警戒しないでくれたまえ。此方に危害を加える積もりは無いよ」


 短いブラウンの髪を後ろに撫で付けた、30代後半くらいの紳士的な男が手を上げる。

 身長は俺より少し高いから180ちょっとか。筋肉質でガッシリした男だ。

 その背中にはハウルバードを背負っているが、そのブラウンの目は穏やかで知性を感じる。


「今の悲鳴はそのゴブリン達か?すげえな!ゴブリンキングとクイーンを2人で倒すなんて!」


 興奮して捲し立てる、紳士と同じ髪と目の色をした20才くらいの男は、ひょっとしたら親子かもしれない。

 身長は俺より少し低いので170くらいか。ツンツン頭で少し粗野な感じの表情だ。

 得物は2メートルくらいの短槍と弓らしい。


「驚かせてごめんなさいね?自己紹介をさせて貰えるかしら?」


 謝りながら前に出たのは、30代中頃の薄紫の髪と目をした女だった。

 この年代の女が近付くと身構えてしまう。

 髪を腰までストレートに伸ばして、身長は170有るか無いかだ。

 武器はメイスを持っている。


「私達は家族で冒険者を生業にしているの。ゴブリンが殖えてきたから調査に来たのだけれど……、終わってるみたいね」


 そう言って冒険者達は自己紹介を始めた。

 冒険者の身分証も持っている。


 念の為にステータスチェックで確める。


 レベル37 ビリー 


 HP452/486  MP32/35


 身体系スキル

 斧術(極) 槍術(3) 肉体強化(小、中、大)

 腕力強化 剛撃 罠解除(3) 気配察知(2)

 礼儀作法(4)


 魔法系スキル

 罠感知(4)



 レベル25 ケビン 18才


 HP227/233  MP0/0


 身体系スキル

 槍術(3) 弓術(3) 肉体強化(中)

 視力強化(小)



 レベル32 マリン 


 HP187/199  MP241/257


 身体系スキル

 槌術(4) 肉体強化(大) 料理(5)


 魔法系スキル

 魔力操作 土魔法(3) 光魔法(2)

 回復魔法(5)


 偽名は使ってない。

 ビリー40才、ケビン18才、マリン38才らしい。


 ビリーってオッサンはスキルが強力だ。

 肉体強化は全て持っていて、30%、50%、100%で、合計180%も身体能力が上がる。

 腕力強化は、体力を使って数分間だけ腕力を2倍にする。

 剛撃は、体力を使って一撃の威力を倍にする。


 殴り合いじゃ絶対勝てん。


 ケビンの視力強化は、数分間だけ小1.5倍、中2倍、大3倍に強化する。弓には丁度良いスキルだ。



 俺達のレベルも上がったが、レベルイーター無しじゃ勝てないな。


 レベル34 トール・レオンハート 


 HP231/317  MP186/280 


 エクストラスキル

 レベルイーター ライフイーター マジックイーター


 身体系スキル

 剣術(3) 短剣術(3) 肉体強化(小)

 瞬撃 


 魔法系スキル

 ステータスチェック(全) 魔力操作

 MP消費軽減 火炎魔法(4) 水魔法(2)

 氷魔法(2) 回復魔法(3) 空間魔法(極)

 爆裂魔法(3)


 レベル22 ユリア


 HP81/145  MP12/389


 魔法系スキル

 ステータスチェック(全) 魔力操作

 MP消費軽減 精霊魔法(2) 妖精魔法(3)


 今の俺達では勝てんのは確実だ。敵意は感じないけど、襲い掛かって来たらレベルイーターで返り討ちにする。


「それでトール君、私達の仕事はゴブリンの巣の調査だったんだが、報告をしなければならない。申し訳無いが冒険者ギルドまで付き合って貰えないだろうか?」


 ビリーのオッサンが頭を下げて頼んできた。


「冒険者じゃなくても討伐報酬なら出るぜ!オレも(つえ)え奴が一緒なら安心だ!」


 ケビンは口は悪いが陽気で気の良い奴らしい。


「都合が悪かったら、都合の良い時でも良いのよ?」


 何でも良いから余り近付かないで欲しい。


「俺達も王都に帰るから構わない。疲れてるから人数が増えると有り難い」

「そうか、お礼に戦いは任せてくれたまえ。街に着くまで護衛させて貰おう」


 こうして5人で王都まで帰る事になった。

 ゴブリン達の死骸を全てモンスターボックスに仕舞ってから、夕暮れの道をユリアと手を繋いで帰った。

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