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俺も使用人達も、生きる為にいっぱい食べる

 まだ歩く力も無い子供達を、皆で抱っこして食堂に連れて行く。魔導列車の戦いでレベルが上がったからか、小さな身体のユリアでも2人抱えて平気な顔をしている。


 食堂に並ぶ食事を見て喉を鳴らす子供達を、席に着かせて食事を始める。

 お腹がびっくりしない様に、具をトロトロになるまで煮込んだ野菜スープを少しずつ食べさせる。


「お、美味しいよ」

「うぇ、ふぇ~、むぐっもぐっ。……こんな美味しいご飯食べたの生まれて初めて」

「……スープって味が有ったんだね」

「味が無い色の付いた水みたいなスープはもう食べたくないよ」

「はぐっはぐっ……、ありがとなの!おにいちゃん」

「ご飯って椅子に座って食べるんだ!足が痛くないし凄く美味しいよ~!」

「温かいスープは凄く久し振りだ~」

「何時間も並ばなくてもご飯が食べられるなんて……幸せ」

「生きてて良かったよ~、ワ~ン」


 6才の子供が生きてて良かったって、人生諦めそうになるのが早いな!


「えぐっ、うっ、ぐすっ、いっぱい食べてね!これからはご主人様が守ってくれるから」


 何でユリアも泣いてるんだ?貰い泣きか?豪華な白いテーブルクロスの掛かった長机に並び、泣いてる女の子達。

 最後の晩餐じゃ有るまいし、異様な光景だなぁ~。最後の晩餐では泣いて無かったっけ?

 まあどうでも良い話だ。金がもっと必要だな。今夜にでも仕事に行くかな?

 商売も考えないと、奪うだけじゃ後が続かなくなる。アイスクリームが売れるかどうかだな。


 ここは高級住宅地だから、多少高くても大丈夫だと思うが。まずは宣伝を頑張って食べて貰えば口コミで売れる筈だ。

 養蜂を行う人員も確保出来たら街の中の空き地でも買って、花畑を造って蜜蜂を捕まえて巣を作らせればたぶん大丈夫。

 こっちの世界に無くて、回転率と利率が高い物をいっぱい売れば儲けられる。

 作り方が他人にバレずに希少価値が高ければ利益を独占出来るし、高くても売れると思う。


 メイとラナに計算して貰ったら、アイスクリーム3人前作るのに材料費が小銅貨1枚らしいから、値段を中銅貨1枚にすれば、庶民でも手が出せる。

 1人前売れる度に、小銅貨4枚以上の儲けになる。ボロ儲けだ。まだバニラアイスクリームだけだが、別の味を増やせば売り上げも上がるかもしれない。

 いろんなバイトをして措いて良かった。お陰で作り方が判るからラッキーだ。


 冬場はたこ焼きなんかも良いな。この国ではタコは食べないからタコが獲れたら棄てられるので、安く手に入る。

 王都近郊の漁港から直接送って貰おう。輸送費くらいしか掛からない。

 うちのドワーフ娘達が鍛冶スキルを持っていたので、たこ焼き器を造って貰おう。

 鍛冶場を庭に建てるか。タコは形が判らない様に切ればタコだと判らないだろ。

 肉マンも作ろう。冬は温かくて珍しい物ならきっと売れる。安く多く売る。薄利多売にしては利益が大きいが。



 食事が終わり、衰弱した女の子達も少し元気になった。体重が健康な状態まで戻れば大丈夫だ。

 歯磨きをさせてユリアとプリシラが寝かし就ける。他の使用人達は歯磨きをして後片付けを始める。


 メイとラナ、フレイとリネットは大量のアイスクリームを作り置きしている。

 アリッサ達は警備計画を立てながらシフトを決めて行く。俺は次に狙う獲物を考える。

 候補者は噂を聞いた限りでは17人。さすがに全て調べるのは無理だった。

 その中で確実に悪さしていると判明したのが2人だ。この2人は見ただけで悪さしているのが判る程嫌な奴だった。


「どちらを喰い殺すかな?」


 貴族の方は領地持ちのくせに領地に()らず、王都で権力争いに夢中らしい。

 領民から金を搾り取り、味方に付ける為に貴族や有力者に金をバラ撒いている。

 当主を殺しても息子が跡を継ぐので問題無い。そいつも悪さするなら殺して奪う。

 領地の金には手を付けずに、商売で稼いだ個人資産のみを奪う事にする。

 最低限の商売が出来るだけの資金を残せば、また悪事で稼いだ金を奪える。


 もう1人は悪徳商人だ。先の貴族の権力を笠に着て、商売敵を次々破滅させている。

 こちらは貴族が死ねば破滅するだろうから、個人資産を使い切る前に奪おう。



 夜の闇が深まる頃、ある貴族の屋敷に男の悲痛な声が響いた。


「かっ、金ならやる!殺さないでくれ!!」


 俺の足下に土下座で命乞いをする見苦しい男が居る。でっぷりと突き出た腹の所為で、頭が床まで下がらない。

 散々威張り散らした挙げ句、護衛の首が転がったら一転して命乞いを始めた。


「金は貰う。だが、お前を生かして措くと、また他人を食い物にするだろう?……だから死ね!!」


 そう告げた瞬間、首を突き刺し床に縫い止めた。



 翌朝、寝不足の頭を振りながら下に降りると、使用人達が騒いでいた。

 パン屋と果物屋が届けに来たらしい。貧民街の住民達に使用人達が配っている。

 昨日の内に朝飯は要らないと伝えていたので、ゆっくり眠れた。朝風呂に入ってサッパリしてリビングに向かう。


「あっ、ご主人様おはようございます!」


 ユリアに挨拶とキスをしてから一緒に外に出る。


「旦那、パン屋達から訊いたんだけど、昨夜悪い貴族の屋敷と悪徳商人の屋敷に賊が浸入したらしい」


 アリッサが深刻な顔をして、報告して来た。


「ほー、物騒だな。どうなったんだ?」


 素知らぬ顔で訊き返す。


「何でも当主が両方殺されたらしいよ。貴族は財産も半分以上奪われたらしい。商人に至っては、別に取って置いた従業員の給金以外は全て奪われたらしい。あと商人の娘のパンツも無くなったとか噂されてるけど、そんなバカな事は無いよな」


 具体的には、合計金剛貨61枚と大金貨119枚、中金貨80枚と小金貨283枚。

 銀貨や銅貨を数えるのが面倒な数だ。美術品や宝石類も併せて400点くらい。

 宝石類や美術品は、足が付くと不味いので別の街で売る事に決めている。

 そして娘のパンツが37枚手に入った。


「使用人は全て気絶させられて、誰も侵入者の姿を見てない。凄腕の暗殺者かもしれない。旦那も気を付けなよ。アタシ達は警備の計画を練り直すから、夜は屋敷の外に出ちゃダメだぞ?」


 凄腕か…………、実際に暗殺したしな。凄腕と言われるのは気分が良いな。

 俺もついに立派な暗殺者になったか。レベルを上げればドラゴンだって、ライフイーターで瞬殺出来るかも。


「旦那様!アイスクリームを売っても良いですか?」

「もうパンは配りましたし」


 待ちきれない様子でフレイとリネットが許可を求める。


「良いぞ、俺はユリアとレベル上げをしてくるから任せる」

「「はい!」」


 昼飯に弁当を作って貰い王都を出る。


「ユリアは魔物と戦ったことは有るか?」

「1回だけゴブリンと戦った事は有ります。大人と一緒でしたけど2匹倒しました!」


 それならパニックになったりはしないだろう。


「風の精霊に魔物の居場所を探って貰ってくれ」

「任せて下さい!ユリアが役に立ってみせます!」


 ユリアが風の精霊を召喚して周囲に風が吹いた。風は木々を揺らし魔物の所まで届く。

 ユリアの誘導に従って行くと、ソードウルフという狼男の様な魔物の集団を見つけた。

 ソードウルフは器用に武器を使う素早い動きの魔物だ。肉食で人間の肉も好物だ。

 ついでに言うと共通言語が通じるのが獣人で、通じないのは全て魔物扱いになっている。


 ソードウルフは既に臨戦態勢を取って俺達を待ち構えていた。鼻が良いから近付く前に気付かれたのだろう。

 レベルは10~16、スキルは剣術(1)を全員持っている。警戒しているらしく、唸り声を上げて威嚇している。


「ご主人様、ユリアが妖精魔法を使います!」


 ユリアが祈り出すと、植物のツタが勢い良く伸びてソードウルフに絡み付いた。

 慌てて避けようと跳躍するも、足首にツタが絡み地面に叩き付けられた。


 ツタが剣で切られる前に剣を抜いて接近する。地面で藻がいているソードウルフは後回しで、立って腕が自由になっている奴から狙って行く。


 首を狙って真一文字に剣を振るう。日頃、型の練習を繰り返しているので綺麗に決まった。

 仲間の首が飛んで焦ったのか、転ぶ奴もいる。自由にならない腕を振り回しツタに噛み付く。

 それを横目に見ながらツタを切りそうな奴から冷静に斬り殺していると、ユリアが水の精霊を呼び出して水の玉で敵の口を塞ぐ。


 血と首が飛び散る中で舞うように斬り裂いていく。何匹かツタから抜け出し逃げようとする。

 足では追い付けないので魔法を使い倒す。俺の魔力が高まり、ほんの数秒で氷の槍が数本飛んで行き敵の背に刺さる。


「ユリア!こっちは任せて倒れたのを狙え!」

「はい!頑張ります!」


 ユリアに瀕死の敵を倒させてレベル上げを図る。


「お前達は俺が相手だ!」


 ツタを噛みちぎり自由を取り戻した3匹と対峙する。ライフイーターを使えば楽勝だが、戦闘経験が欲しいので負けそうにならなければ使わない。


「グルルルッガァ!」


 あれが奴等の言葉か?俺を囲む様に動いたぞ。3方に散って一斉に飛び掛かる。

 そのタイミングで、前方の奴に斬り付けた。鍔迫り合い持ち込み力で押す。

 レベルが低いので力押しで体勢を崩し、蹴りを入れて直ぐに追い掛け、残りの2匹から距離を取る。

 蹴られて倒れた奴の心臓目掛けて剣を突き刺す。引き抜いて右に跳ぶ。

 

 その足で着地と同時に、俺に背後から襲い掛かろうとしていた奴に向かい、横から脇腹を斬った。


 余勢を駆って突きを放つが弾かれた。ソードウルフが横凪ぎの一撃を繰り出し、それをしゃがんで躱す。

 立ち上がる勢いを利用して顎の下から口を貫いた。身体に生温かい血を浴びて気分は悪いが勝利は出来た。


 ユリアの方は止めを刺すだけなので、とっくに終わり、タオルの用意をしてくれていた。


「ご主人様、お疲れ様です。返り血をお拭きしますね」

「ありがとう、ユリア」


 ユリアに優しく拭いて貰い、水分補給をして次の獲物を探し始めた。

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