次は浮浪者の女の子を雇い入れる
食事もつつがなく終わり、次は服屋に向かう。人通りが多いのではぐれない様に注意して、中心街に在る高い服屋に急ぐ。
奴隷達は居心地が悪そうに中心街を歩いているので、早く服と靴を買ってあげたい。
15分ほど歩いてやっと到着した。豪華な造りの店にビクビクしながら入る奴隷達が可愛い。
俺は怯えっ娘属性も持っているので、実に萌える。奴隷達を促して店員の所に連れて行く。
「この奴隷達に可愛い服を頼む。全員に普段着を3着、よそ行きの服をを2着、靴を2足、警備担当の5人は防具の下に着る戦闘用の服を3着、使用人にはメイド服を3着ずつ。本人達の好みに合わせて選んで欲しい。予算は全部で小金貨4枚」
そう伝えると、店員も奴隷達も驚いている。貧乏な庶民は、普通は中古の中銅貨1枚~大銅貨2枚くらいの服を着る。
奴隷や貧民なら裸足が当たり前だし、服も安い布に頭と手足を通す穴を開けた貫頭衣だ。
「だ、旦那様!私達は奴隷です!その様な高い服は勿体ないですから、中古品で構いません!」
あまりの事態にメイド長候補のパティが止めに入る。
「俺に恥を掻かせない為だと思って納得しろ。俺のポリシーは女の子に不自由させないだ」
キッパリ宣言して選ばせる。
「ユリアも新しい服を買って良いぞ。俺の為にもっと可愛くなってくれ」
「はいっ!任せてください。ご主人様をメロメロにします!」
元気良く答えて服を見に行くユリアは、実に可愛い。
奴隷達を眺めると、店員達の薦めるままに選んでいる。この店の服は、庶民の着る服の20倍から50倍するので、よく判らない様だ。
俺は出された紅茶を飲みながら、クッキーをかじって待つ。金が有るって良いな~。
好きな物が買えるし、商人の扱いが違う。女の子に好きな服やパンツをプレゼント出来るのも最高だ。
暫く待つと皆選び終ったらしく、頬をほんのり染めて嬉しそうに笑っている。
次はお待ちかねの下着選びだ!!!俺の中のエロ獅子が騒ぎ始めたので、止められない。
「さて、諸君!今日最も大事な買い物をする!気合いを入れて選んでくれたまえ!!」
下着の所に連れて行くと、やっぱり奴隷達が慌て出す。
「旦那様、奴隷にお金を使い過ぎです。高級な下着は必要有りません」
「こんな下着は貴族様やお金持ちのお嬢様方が着ける物です」
「奴隷になる前にも着けた事が有りませんです!」
口々に冗談を言う。笑わせてくれるな。
「いいか、お前達!女ならパンツに妥協するな!パンツは女の戦闘服だ!命を預ける戦闘服をいい加減に選ぶと危ないぞ!?」
店内の女達が俺の迫力に圧されて、拍手してくれた。
「同意が得られたので早く選べ!!」
急かされて慌てて動き出す。
ユリアには必要ないブラジャーも必要だ。この世界の庶民はドロワーズというカボチャパンツと胸帯という帯を胸に巻くのが主流だ。
貧民に至っては、下着は穿いて無い。ドロワーズや胸帯は造りが単純なので、一揃え大銅貨1枚程度で買える。
対して、現代日本人が身に着ける様な下着は、造りが複雑な上に機械が無いので、1枚1枚手縫いで造る。
だから高い。デザインや使用する布で値段が変わる。木綿製の物で小銀貨1枚程度、シルクなどの高い布製だと小銀貨3枚以上はする。
俺は、木綿製の下着が見た目の質感、触り心地が好きなので木綿製の下着を買わせる。
女の子のパンツは木綿製の方が、シルクのツルツルスベスベした感じより、生々しくてエロい!
この主張と美少女だけは絶対に譲れない俺の正義!だから俺は死ぬまで木綿パンツを買い続けるのだ!
良い買い物をした後は、とても清々しい。奴隷達が着飾った姿とパンツを目に焼き付けて店を出た。
「う~、その内ブラジャーを着けて見せます!」
ユリアだけ、なんかショックを受けた様だ。小さくたってオッパイなのに。
服屋の後は武防具屋に行き、警備担当の5人に武器と防具を買って、全員に護身用の短剣を持たせる。
この世界の常識だと、お護り刃は貴族や金持ちが大事な異性に渡す物なので、奴隷に持たせる様な物じゃ無いと遠慮されたが、女の子は全員自分を大事にするべきなので持たせる。
感激している奴隷達に対抗して、ユリアもお護り刃を見せて嬉しそうにしている。
買い物を終えた俺達は下町に向かう。そこには浮浪者達が暮らしているので雇いに行く。
偽善では有るが少しでも困った少女達にマトモな暮らしをさせてやりたい。
やらない善よりやる偽善だ。全ては無理だが部屋の数に余裕が有るし、屋敷の維持に人数が必要だ。
俺は俺の出来る範囲で救う。その為にも金儲けは必要だ。当面は馬鹿貴族や悪徳商人から奪い、アイスクリームで商売をして稼ぐ事にしよう。
他に養蜂とかも良いかもしれない。養蜂はまだこの世界に無いので、蜂蜜がそれなりに高い。
いずれ商売の手を拡げる時に考えてみよう。莫大な金を手に入れて苦労をしている子供達を大勢助けてやる。
金は天下の回り物、俺の所で止めたら駄目だ。稼いで遣う。これが俺の生き様だ。
「ご主人様~、今度はどこに行くんですか?」
ユリアがどんどん貧しくなる光景にや、すえた匂いに顔をしかめて不安そうに訊く。
「下町の貧民街で、浮浪者の女の子を雇う。屋敷の雑用を任せる積もりだ。全員奴隷でも良いんだが、悪環境に居る子供を少しでも助けられたらと思ってな」
「ご主人様!ユリアも頑張ってお仕事手伝います!2人で頑張ってお金稼ぎましょう!」
臭い匂いに顔をしかめていたユリアが、ぴょんぴょん跳ねてやる気を出した。
良い娘だ。俺の様に打算が無い。女の子優先で助ける俺はかなりアレである。
奴隷達も感心しているが、俺を尊敬の眼差しで見ないで欲しいものだ。エロい眼差しで見返すぞ!!
「酷いです……。人間さんや獣人さんが困ってます」
ユリアは人間の街は奴隷として捕まってからだし、知らなくても当然だな。
貧民街の住民は3日に1回の教会の炊き出しで命を繋いでいるので、1ヶ月に8回しか確実に食事にありつけない。
ボロボロの布切れを身体に巻いて、薄汚れた顔を拭う気力も無いくらいに、ガリガリに衰弱している。
ショックを受けたユリアの頭を撫でて、今にも餓死しそうな女の子を優先して雇う。
残りの人は部屋が無いから無理だが、炊き出しの無い日の3日に1回、大きめのパンとクリエの実を1個ずつ配る事にする。
ユリアと奴隷達にお金を預けてパンとクリエの実を買って来て貰う。1個小銅貨1枚のパンと5個で小銅貨1枚のクリエの実を1000個ずつ買っても、1日大銀貨1枚と小銀貨2枚で済む。
俺は残って貧民街の住民を集めて回る。集めた住民達に説明をすると半信半疑だ。
何にせよ、ユリア達が帰って来るまでステータスをチェックして、生命力の下がった女の子を優先して傍に連れて来る。
ユリア達がパンを抱えて戻って来た。荷物が多いので、店の小姓達が荷物持ちとしてやって来た。
何軒かの店を回って買って来たらしい。ユリア達が配る間に、小姓達と話を付ける。
月に5~6回、貧民街の人数分買うので、取り置きして貰う為に小姓達が店に帰って店主に訊きに行く。
貧民達は嗚咽を洩らしながら一心不乱にパンを口に詰め込んでいく。
パンは10軒のパン屋から100個ずつ、クリエの実は20軒の果物屋から50個ずつ取り置きして貰う契約だ。
屋敷に届けてくれる事になった。その時間に貧民街の住民は俺の屋敷に来させる。
1000人も居ないが、餓死しそうな人に余った分を余計に配れば無駄が出ない。
これで教会の炊き出しと併せて2日に1回食事が出来る。出費は1ヶ月大銀貨6枚~大銀貨7枚と小銀貨2枚だ。
「旦那様、配り終えました。この後はどう致しますか?」
パティが報告に来たので、雇う女の子を全員集めて屋敷に帰る事にする。屋敷の場所を教える為に、何人かの比較的元気な住民も連れて行く。
「ありがとうございます。お陰で飢えずに済みます!」
「子供が死にそうだったので、本当に助かりました!」
「おにいさん、ありがと!!」
「貴方のお陰で俺達も生きられる希望が持てます!」
多少なり生気が戻った住民はお礼を言う。その為に帰るのが1時間以上掛かった。
ちなみに雇う事にした女の子達は、グッタリしていたので、皆で抱き抱えて屋敷に連れて帰った。
やっと屋敷に帰って来たら、奴隷達が屋敷を見上げて驚いている。
「……凄いお屋敷です」
「あたし達、今日からこのお屋敷に住むの?」
「旦那様、……お金持ち」
「こんな豪華な家だと緊張して眠れないかも……」
「冒険者だった時もこんな凄い所に泊まった事ないね?」
「綺麗なお洋服だけでも夢みたいなのに」
奴隷達もこれからの生活に夢を馳せているらしい。ポーッとした女の子達が我に返るまで待ち、屋敷に入る。
道を憶えた貧民街の住民達は自分の住みかに寂しそうに帰って行った。
門を潜り、玄関に入ると靴を脱いでスリッパを履く。左の壁際に備え付けた靴箱に靴を入れて、右に在るマジックアイテムの水道で手を洗う。
靴を脱ぐ習慣が無い世界だが、靴を脱いだ方が楽だし掃除も簡単だ。戸惑いながらも、同じ様にする奴隷達を風呂場に案内して使い方を教える。
サッパリして出てきた奴隷と浮浪者の女の子達を部屋に連れて行く。
「その娘達をベッドに寝かせてくれ。全員一部屋ずつ使って構わないから1、2階の好きな部屋を選べ」
「ご主人様とユリアのお部屋は3階なんですよ!」
落ち込んでいたユリアの元気が戻って来たらしい。
「個人でお部屋を使って良いのですか?」
「自分の部屋なんて初めて……」
「…………なんか冒険者してるより奴隷の方が良い気が」
「……格差社会は切ないね?」
嬉しいのか哀しいのか判らんコメントだ。
部屋を選んだ奴隷達をリビングに集めて、仕事の役割を決めないといけない。
家のルールも決めて憶えさせないと。金も稼がなきゃならんしレベルも上げる必要が有る。
やることが多いので暫くは忙しそうだ。ダンジョンに潜る為に知識も必要だし、仲間も要る。
はあ~、忙しいのは嫌いだ。膝に乗せたユリアのツインテールを弄りながら、先の事を考えた。




