表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透明な雨  作者: とも
2/14

ひいらぎ 2

居間には豪奢な椅子に華やかに着飾られたひいらぎがぽんと置かれた人形のように座っていた。

閉じた眼瞼の睫毛が長く陰を曳いている。

目前に立つと、ぱちりと眼瞼が開いた。

焦点が私に会うと、ひいらぎは少し驚いたような表情をした。

わずかに見開かれた眼と口はやはり精巧な人形の様なのに、その動きはやはり生き物に特有なもので、なんとなくがっかりした。





聞こえないの

聞こえないの

いつものあの声が

いつものあの声が





突然ひいらぎが歌い出した。





それでも 出会ってしまったから

戻ることは出来ない縁

見つけたわ

離れることも出来ないの





歌声は館の中で聞いたものと同じで、ああやはり夢ではなかったのだと思った。

それでも、知らなければ良かった。

こんな歌があるなんて。

こんな声があるなんて。

知ってしまったらもう戻れない。

私は体中に細く切れない糸が巻き付いているような気がして体をぬぐってみたけれど、手のひらには何も掴めはしなかった。

そして、はっと気づいた。

糸が巻き付いてるのは体ではなく心だった。



歌が終わると、がしゃんと大きな金属音とともに鳥籠が落ちてきた。

磨かれた艶やかな鉄の策はひんやりとしていた。

籠はひいらぎの周りを取り囲み、こうして籠の中の鳥になった。




私は毎日毎日ひいらぎに食事や水を運び、気が向いたように歌う歌声に聞き惚れた。

ひいらぎは思いついたように手を伸ばして私の頬をなでときに抱き寄せたりもした。

しかし、そこには某かのものが込められてはいなかった。

そう、単なる思いつきにしかすぎない様だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ