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よかった、噓告されたオレはいなかったんだね  作者: 小宮地千々


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9/12

旅行にいくヨ! 3

 台湾旅行二日目。

 無事にちゃんと起きられた(何もなかったとは言ってない)オレたちは、まずMRT(地上も走る地下鉄)で台北駅から南東にある市立動物園へ向かった。

 MRTの路線図はシンプル極まる福岡市営地下鉄と比べると入り組んでいたが、色分けとかあと大事な駅名が漢字表記なのもあってなんとかなっている。

 あと福岡市の闇の支配者であるバス路線に比べれば乗り場が一つってだけでも圧倒的にわかりやすいしな……。

 他県民にはぜひ天神とかを見て欲しい、飛ぶぞ(脱線)。

 そんなこんなで乗り換えを一回挟んで三十分ほど列車に揺られて目的地へ。

 朝に弱いキノエは普段より静かで、そうなるとなんもないと黙ってるミカとオレでは会話はとぎれとぎれになりがちだ。

 もっとも、互いにそれが苦にもならないので気まずいこともない(キノエが見ると「二人だけで通じ合ってるー」とすねる)。

 まぁ綺麗な車内ではしゃいで浮くよりは良いだろう。

 動物園は、博物院と同じく山中と言うか山を背負っているというかそんな感じで、列車は案の定最終的には地上に出た。

 駅から園は目と鼻の先である。

 うーん、正門の金文字に強烈な中華魂を感じるな。

「え、今って日本にパンダいないの?」

 そして明かされる衝撃の事実。

「上野にいるんじゃなかったっけ? 双子かなんかが」

「帰った」

「帰っちゃったかー」

 凄い、ミカのシンプルすぎる返答にものすごい無念が込められている。

「だからね、今回ミカが絶対見たいって」

「今日の第一目標。遅くなると混むらしいからまずパンダに行こ」

横中(よこなか)が燃えている……!」

 ピースサインを作る彼女は例によって予習はばっちりの模様。

 個人的にはセンザンコウとかいう強そうな生き物が気になってたんだけど、そういうことならとまずはパンダ館に向かうことになった。

「国内にいないってことは、オレらがパンダ見ようと思ったら台湾が一番近い感じ?」

 移動中気になっていたことをたずねるとキノエは首をかしげた。

「ん-、中国よりは近いよね。ミカ?」

「距離的には韓国。ソウルの近くにもいる」

「さすミカ!」

「うーん、回答によどみがない」

 これはたしかにさすミカ(さすがミカという賞賛の意)ですわ。

 あと多分その内ソウルにも旅行にいくことになりそう。オレは詳しいんだ。

 女子って韓国好きな印象あるし。


 まだ午前の早い時間と言うこともあって、パンダ館には幸いスムーズに入れた。

 日本語も混じった喧騒の中ゆったりと進む列に従って歩くと、すぐに大きなガラス張りの展示室? 飼育室? の前へたどり着く。

 やや女子率高い気がするものの行列は老若男女が入り混じっている。

 そして彼らのほとんどが今やガラス向こうでごろんと転がって笹をむさぼる白黒のでっかい熊(失礼)にスマホを向けていた。

 うーん、ジャイアントパンダの人気はさすがといったところだろうか。

「わー、可愛いー!」

「ね」

 そしてもちろん彼女さんたちも大はしゃぎである。

 ミカは当然、キノエからも普段より本気度高めの「可愛い」が出ている。

 でも飼育室の壁には青々とした山脈を背に草原? が描かれてるんだけど、パンダってもっと山中にいるもんじゃないんだろうか。

 いかん、我ながら妙なところが気になってる。

 多分転がってるだけで女子にキャーキャー言われるパンダさんサイドが悪い。

 嫉妬だ、それだけははっきりしている。

 だって本当にこの生き物はやる気が感じられないよな……。

 どんくさい動きで笹をもっしゃもっしゃとむさぼり食う姿はこう、電池切れかけで眠そうな幼児とかを連想してしまう。

 それが可愛さだというなら、今度オレも飯のときはゆっくり食べてみようかな(錯乱)。

「ね、リク。可愛いでしょ」

「うん。可愛いな」

 いや、嬉しそうに聞いてくるミカの方が可愛いが?

 ただもしこれが生まれたての子パンダだったらオレも危なかったかもしれない。

「横中ってパンダのどこが好きなん?」

「あんまり考えたことないけど……丸いところと、色?」

 白黒は割と渋くない?

「じゃあペンギンとかも好き?」

「うん、ペンギンも可愛い」

 なるほど。

「パトカーは?」

「可愛くない……」

 ダメか―。

 そしてなんで関係ないこと聞いたの? みたいなご不満を感じる。

「なんかゴメン」

「うん」

 でもひとまず謝ったら許されたので良し!

 しかしジャイアントパンダめ、先に見つかったのに元祖からパンダの名を奪って本家面してる簒奪者のくせにオレに頭を下げさせやがって……(※ホモサピエンスの所業です)。

 こうなったら無様にひっくり返ってやるところを撮影してやろうとスマホを構える。

「二人ともガン見しすぎー。ほら、人にぶつかるってー」

 キノエに促されてじわじわと流れに乗って回遊を再開する。

 ぎりぎりのところでなんかしらんけど後ろにひっくり返るパンダの動画撮影に成功し、ミカはにこにこだった。


 ――なおそんなことしていたのと実は結構なクソデカ動物園だったため、あとの予定は押すことになった。

 百六十五ヘクタールって東京ドームいくつ分だよ。


 §


 動物園のファーストフードで簡単に昼食を済ませ、午後一番で向かったのはキノエご希望の台北101。

 最初名前を聞いたときは商業施設かと思った高層建築物は、ミカペディアいわくドバイの金持ちに抜かされるまでは世界一の高さを誇っていたらしい。

 ちな目的地の展望階はなんと地上三百八十二メートルとのこと、福岡タワーの展望室の三倍ってマ??

 人はどうしてデカい建物に憧れてしまうのか……。

 でも正直オレも嫌いじゃない、心の中の小学生男子が大はしゃぎである。

 見た目はこうなんか五重塔とかそれっぽい伝統的な感じで格好いいしな。

 でも下がのぞけるガラス床とかは用意されてないで欲しいな……!

「おっきいねー、楽しみー」

 こんなこと言ってるキノエが絶対飛びつく奴だから。

 オレとしては見下ろすよりは見上げたい派なんだが、予約列に並んで順番を待つ彼女さんはニッコニコだった。

天辺(あまべ)はなんでそんな高いところが好きなの」

「なんかね、高いところに行くと偉くなった気がする」

「位置エネルギーをマウントに使うのは控えてもろて」

 シンプル破壊力が増すからね。

「背が高いんだからそれで良くない?」

「えー、でも全人類見下ろしてみたくない?」

「立ちはだかるISS……!」

 野望がデカすぎるんよ。

「リクは高いところ大丈夫?」

「だいじょぶだいじょぶ」

 そんなやりとりをしているとミカに心配されてしまった。

 まぁ窓際とかに無理やり引っ張られて行かなければ大丈夫。

「上に行ったら手を握っててあげるから」

「オレ大丈夫って言ったくない?」

 別に地上でつないでていいよ、と手を取るとご満悦だった。

「あー、あたしも。あたしもつないだげるからね!」

「天辺はそのまま窓際に引きずっていくやつじゃん」

「え、景色見に行くんでしょ?」

 そうだけどさぁ、そうじゃないんだよ(フクザツな男心)。

「じゃあミカ、リクの気がまぎれる話してあげてよ」

「エレベーターが凄いんだって」

「すごい、すっと出てくる」

 これ多分ちょっと豆知識披露するの当人楽しくなってきてるな。

 ミカもノリは良い方だから。

「ちな具体的には?」

「速い」

「まんまじゃん!」

「逆にすごく速い上昇って怖くね?」

「ジェットコースターみたいなものだと思えばよくない?」

「それはエレベーターに求めるものじゃないんだよなあ」

「リク、腕組んでてあげるね」

「横中も実はあんまり心配してないでしょ」


 なお世界最速をアピールするエレベーターでは、ふっと照明が暗くなって、速度と内部をスッと上昇していってるのがモニターに示される謎サービスがあった。

 あと日本語を含んだ数か国語の案内音声がやたら幼女っぽかった。

「うお、たっか……」

 そうしてたどり着いた展望台は、高い、とんでもなく高いの一言だった。

 そのあまりの高さに台北という街の大きさが改めて感じられた、規模的にも高度的にもだ。

 地元福岡は空港との兼ね合いで中心市街にはあんまり高い建物が無いし、見下ろすタワーもそこまでの高さにない。

 でもここは地平線を見下ろしてる感じがあってヤバい(語彙消失)。

 これはいずれスカイツリーに行ってみて比べてみる必要が出てきたな……。

「登ってよかったでしょー」

「うん。キノえらい」

 オレより一歩半前に出ている彼女さんたちも実に楽しそうである。

 だから二人してオレを引っ張らないで欲しい。

 いいじゃん、ここでも十分見えるじゃん。

「リク、肩車してあげよっか?」

「なんでそんなおそろしいはっそうがでてくんの」

 尊厳破壊までしてくるじゃん……。

 危機に敏感なほうが生存には便利ってそれ一番言われてるから。

 そんな感じでオレたちは夜市に向かうまでの時間、じっくりと101を堪能することになった。

 

 スカイツリーには行くとしても二年後くらいでいいと思います。

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