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よかった、噓告されたオレはいなかったんだね  作者: 小宮地千々


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わたしたち、二人とも彼女でいいから。 2

「えー、リクまだ友達できてないの?」

 先の講義後の一幕を説明したオレに、天辺キノエさんはそんな容赦のない言葉を投げかけてきた。

「ひどくない?」

 ときに事実は何よりも人を傷つけるって一番言われてるんだぞ。

「かわいそかわいそ」

「まるで心がこもってない……!」

 泣きました、オレは三年も日本に不在だった帰国子女で彼女が二人もいます。

 自慢に聞こえる? でもそれがオレの現在の苦しみの原因なんだよ。

 人の不幸に定型なんてないんだなってつくづく思うよね。

「キノ、無神経。リクは帰ってきたばっかりなんだから仕方ない」

 でもそんなオレにもフォローしてくれる理解ある方の彼女がいます。

「横中……!」

「そもそも私たちがいればいいし」

「横中!?」

 救いの女神に見せかけてとんだ堕天使だったよ……。

 キノエも「それもそっか」みたいな顔はやめてもろて。

「レポートなら、私が手伝うよ?」

「そこは素直にありがとうだけど友達作るのも認めて欲しい……!」

「あたしも手伝うからリクに友達はいらないね!」

「さらに追い込んでくんのやめて?」

 オレのボッチ化を実行可能っぽいキノエが言うとシャレになんないからな。

 こっちは三年でほぼ完全に人間関係リセットされてるんだぞ。

 あとオレがレポートのためだけに友人求めてるみたいな発言もやめてほしい。

 それだけじゃない理由もちゃんとあるから。

「えー? でもリクも友達欲しいならもっと上手に言えばいいのに」

「上手にってどうよ」

「適当ににごせばよくない? そんな二人と付き合ってるって言わなくてもさー」

「どっちだと思うって聞くとか」

「うーん……」

 二人の言うことももっともなんだけど、付き合ってることが事実な以上遅かれ速かれな気はするんだよな。

 そうなると二人と付き合ってることで離れる相手とはどのみち友達にはなりようがない。

「別にいいよ? ちょっと悪目立ちしちゃってるなーとは思うし」

「うん」

 殊勝なお申し出だけど現状まだ両腕を取ってオレをサンドしてるのが説得力的にでかいマイナス補正かな……。

「やー、でも二人が目立つのは二人のせいじゃないし、そうなることも分かりきってたじゃん。なのに付き合ってから他人に誤魔化すのは違くね?」

「ふうん」

「リク、格好いい」

「よせやい」

 ミカのストレートな称賛に頭をかこうとしても腕ががっちりロックされていて動かなかった。

 え、怖。

 ガチでぴくりとも動けなさ過ぎてちょっとビビる。力強いよね。

「じゃあじゃあ、また今日みたいに囲まれてたらーリクが連れ出しに来てくれるってこと?」

 そして何か考え込んでるようだったキノエがにんまりと笑って言う。

 それはまた違う話じゃん。

「こっちに気づいてるときはスッと抜け出して欲しくはあるよ……!?」

 ちょっとオレにあれこれ期待しすぎではなかろうか。

 第一に毎回他人とご歓談中に割って入るとかオレが嫉妬深い感じになるし。

「えー? いいでしょ。『これあたしの彼』ってしたいの」

 しかし天辺さんに置かれましてはこれにもご不満の模様。

 もー、この愛嬌◎、ワガママ◎の天衣無縫(てんいむほう)娘がよお……!

 オレがいつも可愛いから仕方ないと済ませると思ったら大間違いだぞ。

「せめて女子といるときにしてくんない?」

 そっちなら本当に彼女二人な時点で友達作るの諦めてるし。

 そう思っての言葉にキノエは「何言ってるの?」みたいな顔をした。

「え、女の子のときはパッと抜けるよ」

「なんでよ」

 あとやっぱり抜けられなかったんじゃなくてわざとだったんじゃないか。

「リクが目を付けられちゃうもん」

「?」

 なに、もしかして彼氏が女子見るのも女子に彼氏見られるのもダメなタイプ?

 それって最終的に行きつくところは監禁だぞ。

 さすがに事件化されるのは困るんだが。

「まぁ、あたしたちから取れるなんて思わないけど。リクだって男の子だし? 間違いが起きる可能性はゼロじゃないもんね」

「横中、これ何の話?」

「リクが他の女子に狙われちゃうって話」

 急に話を振ってもいつも平然としているミカだけども、今日はちょっとキノエに引きずられている模様。

 またまた、ご冗談を。

「ハハッ、ウケる」

 思わず猫の気持ちになりながら否定する。

 なにせ今のオレの学内での評判なんて、

・お前には背の高い美人の彼女がいるんだな(+10)

・しかも二人も(-20)

 とかそのへんでしょ。

 なんて思っていると彼女さんたちはわかってないなあ、みたいに肩をすくめてそれ以上は特になにも言わなかった。

 なんでよ。


 そんなやりとりをしながら地下鉄駅から直通の百均ショップにたどり着く。

 今日のな目的は二人がオレの部屋に置くための私物の購入である。

 短期間で順調に侵食されていた。

 もう男友達ができてもこれはちょっと呼べないなと思うくらいに女子の気配がしている。

 ごめんよ、叔父さん。

 大学が近いと友人のたまり場にされるからって気を利かせて探してくれた部屋は、当面は彼女たちを連れ込むことしかなさそうです。

「ええやん、素敵やん」とかのたまう叔父の幻聴が聞こえた気がした。

 いや気がするじゃなくて実際に言うわ、あの人。

 ならいいか(混乱)。

「――ねえねえリク、洗面台の周りってまだ何か置く予定ある?」

「え? やー、多分ない、かな」

「オッケー。じゃあ結構色々置けるね」

「キノ、ラックあったよ」

「わー、可愛いー」

「ね」

 もしかしてこれ止めないとびっしり美容洗顔用品で埋め尽くされるやつかな。

 あとただの小さめの透明ラックに見えるんだけどそれ可愛い要素ある?

 戦々恐々とするオレをよそに二人は次々とカゴに商品を放り込んでいく。

 思い出したけど百均あるあるだよな、つい買いすぎるやつ(現実逃避)。

 というかなんかこう「あると便利なもの」に加えて「あると彼女の存在を主張できるもの」も選んでない?

 本当に誰相手の匂わせなんだろう。

「その小顔ローラーとかオレの部屋にいる……?」

 と言うかそもそも二人にはいらなくない?

「いる」

「いるよー」

「ほなしゃあないか……」

 ついつい入れてしまったツッコミには力強い断定が返ってきた。

 でもそれ以上二人が顔小さくしたら九頭身とかになんない? 並んだ時のオレの公開処刑要素が増えるんだけど。

 そしてガチモードに入った女子の買い物に付き添うのはなんとも手持無沙汰だ。

 二人楽しそうなのはいいんだけどね、店内そこまで広くも無いしね。

「オレも別のとこ見てていい?」

「えー」

 控え目なオレの申し出に審議ランプがともる。

 彼女さんたちはアイコンタクトをしたあとで頷いた。

「勝手に帰らないでね」

「ちゃんと待ってて」

「ハイ」

 お母さんと買い物に来た男児かな?

 二人ができるだけ早く済ませてくれることを祈りつつひとまず文具コーナーへ。

 講義中なんかにときどきあれがあればQOL爆アゲなのになあと思うのに、いざ文具売り場に来るとこれ買っても使うか? ってなるのはなんなんだろうな。

 この感じにもし名前があるなら教えて欲しい。

 ルーズリーフの穴の補強パッチとにらめっこしているときゃいきゃいと高い声が近づいてくる。

「う」

 女子高生の一団だった。

 私服通学だったオレには三年間縁の無かった制服の集団というのは、それだけで何となく居心地の悪さと圧を覚える。

 すっと彼女らは興味無さそうなところへと考えておもちゃの棚に向かった。

 陰キャ仕草が板についてしまっている。

 傷は深かった。

「お」

 目に飛び込んできたものに思わず声が出た。

 いいじゃん、この組み立て式の棒人間。武器もついてるし……買うか?

 そんな風に男子心を刺激されていると普通に女子高生の一団もこちらにやって来た。なんで?

 彼女たちはスクイーズ玩具のところでわちゃわちゃと始める、声がデカいしテンションも高い。

 ははーん? さては日本の高校生もそんな大人でもないな?

 てか年下だったよ普通に。

 前に日本にいたころは高校生なんてすごく大人に思えたのになあ。

「あ、リクー終わったよ」

「なにかまだ見る?」

 三年の月日をしみじみ振り返っていると二人が合流してきた。

 その視線がオレの手元(対象年齢六歳以上)に向かう。

「買うの?」

 こう言われると後には引けない。

「……買うよ」

 オレの言葉に頷く二人の表情はやたらと優しく温かかった(主観)。

 なんだかひどく辱められた気がするな……。


 ちなこの時買った人形はのちに二人が来るたびに妙なポーズを取らされるようになり、いつの間にか二体になってその後も仲間は増えていった。

 なんかオレより楽しんでるのズルくない?

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